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「ワーヅ(キル/ピーポー)閻浮提爆多摩"呪禁存思"リミックス」上演用台本
岩井さん「これからやるのは、一度作った/数年前に/一人用の演劇を、五人前に引き伸ばして膨らませて」
安川さん「みんな17歳だった」
岩井さん「その五人前の作品を、たった二人でやる という……」
安川さん「私たちは」
岩井さん「という、二人で。」
安川さん「たったの、特別なことはなくて」
岩井さん「ということをやりますよ〜」
岩井さん「──今ここに何人いる?今ここに何人いるように見えますか?今こ
UVERworld「SHAM ROCK」を聴きながら書いた一幕劇、ジャムトースト
梓 幹雄の彼女
幹雄 梓の彼氏
朝、1Kのアパートのキッチンテーブルで幹雄が朝食にジャムの塗られたトーストを食べている。
梓は冷蔵庫を閉めてからテーブルにつく。
梓「幹雄ってほんと、ありがとうの一言が言えないよね」
幹雄「言えるよ」
梓「じゃあ私が言ってもらってないだけか」
幹雄「憶えてないだけだろ」
梓「はあ」
幹雄「ショックだわ。感謝してるのに。それを伝えてるのに、憶えてないって何。」
梓
ねぇあなたどんなふうに生きてなにをみたの殺人事件(2)
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私がことのあらましを伝える間、倉知は私の淹れたお茶を何杯かおかわりしながら「うん」だとか「ふん」だとかを繰り返すばかりであったが、「以上だ」と話が現時点に着陸したところで一度眉毛を大きく動かし、言った。
「──それで俺はなんでこんなところに?」
意外な返答に面食らってしまった私は、「だから」と置いてもう一度同じ話を始めようとしたが、倉知がそれを遮った。
「ああ、いい、いい。話がわか
ねぇあなたどんなふうに生きてなにをみたの殺人事件(1)
結局、彼女に向けて三國さんと呼ぶことはなかった。
それでも私が彼女のことを頭に浮かべるときにはいつも、「三國さん」と想っている。
私は彼女のことを何も知らない。
井の頭公園の大きな池に一艘のボートが浮かんでいる。私はそこで三國さんの横顔を眺めていて、三国さんは池の水面を眺めている。現在とはただそういう今である。彼女の背景には赤や黄色がまだらに色づいていて、波の揺らぎに合わせてそれらはのたりの
橋本環奈ちゃん、失恋する!
もういくつのお別れがあったことでしょう。わたしは1、2、3、4と「9」までの数字を覚えた時に、とにかく何でもいいから数えたくって、それで──それでというわけでもないんですけど、自分の身近で死人が出たらその都度指折りしようと心に決めました。
そうは言っても思いついた勢いそのまま「一、二!」と数えた幼稚園の園長先生と近所で「全滅のオジキ」と呼ばれていた昼日中でもお構いなしにわたしたちが遊んでいる公
思い出は未来の残骸なんだよ
それで僕たちは手を繋いでATMを目指した。
引き出すお札の枚数を入力する画面で僕は一度振り返って、彼女のつらを見た。彼女──のちにマイ・スウィート・ピアノと僕に名乗ることになる、はガラス戸を開けて酒を何本か選んで小脇に抱えていた。ストロングゼロだった。そういった理由から、僕は「5」と入力して、そのあとやっぱり「3」と打ち直した。
機械から慶應の校長の顔が三枚、押し上げられて出てきた。「ディ
キクチホナミVS JUDY AND MARY
1998年師走の話。
排気口(劇団の名前)の菊地穂波さんから連絡が来た。手紙で。
「ゴテンバサノバザール、参加者増えていますか?よかったら、12月26日にツイキャスやるんですがそこでゴテンバサノバザールの告知しますよ。」
【ゴテンバサノバザール】というのは私が23年後つまり2021年の5月にその第二回の参加者を募ることになる朗読配信企画である。
私が手紙を受け取ったその日のうちに、「’98
片目が花になった女の子
ある朝起きたらなんか視界が狭くて、よくよく注意してみると右目が見えなかった。私は普段からあんまりテンションの高いほうではないというかこないだお昼休みに私の右斜め前の席のコンドーさんが食堂に行ってる間、コンドーさんは親が共働きだからいつも教室でお弁当食べるんじゃなくて食堂でひとりで食べてるんだけど、ひとりで食べてるのはコンドーさんが友達がいないっていうかいじめられてるからなんだけど、そのコンドーさん
もっとみる排気口ワークショップ、前/後
排気口(劇団の名前)のワークショップに呼んで貰ったので行った。楽しかった。主催した菊地穂波──以下、人称代名詞を「Dear(ディア)」と表すことにしますが──におかれましては三十分尺の新作を毎月一本計三本も書き下ろす作業は、胃の内容物を全て出し尽くしたのに吐瀉し続けた果てにあふれた涙をおよびじゃねえと叩かれた末にようやく血を吐くような作業だったらしい。直筆で書かれたDearの台本はインクの代わり
もっとみる渚にまつわるA面B面
A面 二次郎は11歳であった。
11歳であったが、周りの人間はみんな二次郎のことを21歳くらいだと思っていたし、実際彼は21歳くらいの風貌をしていた。
二次郎は思っていた。僕は知っている。
この世界に大人なんてものはなくすべて社会という大きな鍋に生まれた瞬間からぶち込まれて高温でグツグツ煮込まれただけの子供でしかないということ。そもそも大人/子供という境目は誰も決められないのにいつのまにか体の