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敵はゾンビ!主人公もゾンビ!ゾンビだらけのエンタメポリスアクション映画「ゾンビコップ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(681日目)
「ゾンビコップ」(1988)
マーク•ゴールドブラット監督
◆あらすじ
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ロサンゼルス市警察のロジャー刑事は、相棒のダグ刑事と強盗事件の捜査を担当するが、犯人たちが何をされてもなかなか死なないことに驚愕する。犯人の遺体に付着していた薬品からダンテ製薬という会社の関与を疑った2人は、捜査に向かうが…。(u-watch.jpより引用)
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いやぁ、これは良かったですね!ツッコミどころは多々ありますが、ただただ普通に面白かったです!
『一度死んで蘇った刑事が死者を蘇生する悪の組織に立ち向かう』というエンターテイメント一点突破のシンプルなストーリーで、当然ですが伏線なんてものはこれっぽっちもありません笑
なんですけども、如何にも80年代らしい派手にも程がある銃撃戦や爆発シーンは見応えたっぷりですし、いわゆるポリスアクションに“ゾンビ”という要素を加えたB級な内容ながら、これぞ映画!これぞエンタメ!と呼ぶに相応しい良作の娯楽映画に仕上がっています。
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(cinematoday.jpより引用)
監督を務めたマーク•ゴールドブラット氏は70年代後半から数々の作品で主に編集を担当しており、「ターミネーター2」(’91)では第64回アカデミー賞編集賞にノミネートされるほどの凄腕編集マンです。
監督としては今作含め3作品を手掛けており、次作の「パニッシャー」(’89)では、まだMARVELシリーズ(MCU版)が生まれ前にマーベル•コミックのキャラクター•パニッシャーを主役にしております。ちなみにこの作品でパニッシャーを演じたのは人間核弾頭の愛称でお馴染みのドルフ•ラングレン氏です。
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(ドルフ•ラングレンWikipediaより引用)
また、SFXやVFX等の特殊撮影を担当したのは特殊メイク界のレジェンドであるロブ•ボッティン氏やリック•ベイカー氏の元で修行を積んだ実力派のスティーブ•ジョンソン氏ですので、映画好きの皆様も納得できる映像に仕上がっております。
現在U-NEXTにて配信中ですが、私はまた例によって浜田山のTSUTAYAを利用させていただきました。いつもお世話になっております。
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◇ある日、武装した二人組の強盗が宝石店を襲撃。ロジャー刑事とダグ刑事はさっそく現場に急行し、他の警察官と共に壮絶な銃撃戦を繰り広げる。しかし、強盗たちはいくら撃たれようが一向に倒れる気配がない。ロジャーとダグによる手荒なやり方でようやく仕留めるも、車を廃車にしたことで上司からは大目玉をくらい、首を免れるためにこの事件を追わなければならなくなった。検死の結果、驚くことに強盗たちは以前検死した死体であることが判明。そして、死体から検出された薬品と同じものを大量購入していたダンテ製薬会社へと2人は調査に向かうのだった。
といった感じで始まります。
まずは兎にも角にも派手にも程がある銃撃シーンや爆発、そして車で強盗犯に突っ込む豪快なカーアクション等など開始数分で我々視聴者の心を鷲掴みにしてきます。個人的にはこの時点でこの作品が面白いことを確信しました。
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(m.crank-in.netより引用)
以降は少しペースを抑え、ロジャーやダグ、検死官のレベッカなど主要人物のキャラや関係性を見せつつも、一切の無駄なく『強盗たちは過去に一度死んでいる人間である』という衝撃的な事実を提示し、さらにその死体から検出されたスルファチアゾールを大量購入していたダンテ製薬会社へとロジャーたちが調査に向かうという自然な流れで展開していきます。
しかもこの冒頭で極々自然に一連の事件の犯人をさらっと登場させておりますが、誰も気に止めないと思います。この辺りの演出も非常に巧みです。
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(cinematoday.jpより引用)
◇ダンテ製薬会社へと向かったロジャーたちは広報担当のランディに会社を案内される。表向きは特に何の問題もなさそうだが、何かきな臭さを感じたダグはこっそり立ち入り禁止の研究室に入り込む。そこでダグは謎の装置の上で寝かされていた巨大な怪物に襲われる。駆けつけたロジャーと共に苦戦の末に撃退するも、運悪く殺処分用のガス室に閉じ込められたロジャーが死亡してしまう。しかし、先ほどの謎の装置が死者を蘇生する装置だと気づいたレベッカはロジャーを蘇生する。体を保てるのは12時間だと告げられたロジャーはダグと共に事件の鍵を握る広報のランディ宅へと向かう。
という中盤に差し掛かります。
まずはもう『主人公が中盤に差し掛かる前に死亡する』という衝撃的な展開がめちゃくちゃ面白かったですね。しかもそこから「これは死者を蘇生できる装置だ!」という強引過ぎる設定でロジャーを復活させてしまうんだからそりゃあB級ですよね笑
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一応、復活した人間に関しては『体が保てるのは12時間程度で、その後は全ての細胞がドロドロに溶ける』というこれまた強引な設定があり、ロジャーもロジャーでそれを当たり前のように受け入れてます。
「何の根拠があっての12時間なんだよ!」とか「そもそも何で死者が蘇るんだよ!」などとは誰もツッコまないのがある意味平和で良いですよね。
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(m.crank-in.netより引用)
この辺りまでで、冒頭の強盗たちもこの装置で蘇生していたことや、スルファチアゾールが死体の防腐剤として用いられていたこと、そして『死体を持ち出している誰かがいる』ということが明らかになります。
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こういう感じで、『何かイベントをクリアしたら次のステージへのヒントが手に入る』みたいな分かりやすい構成が心地よかったです。
◇ランディ宅を訪れたロジャーたちはそこで二人組の武装ゾンビの襲撃を受ける。どうにかして撃退した2人はさらなる手がかりを求め、チャイナストリートや遺体安置所を訪れるが、途中で別行動を取った結果、ダグが何者かによって亡き者にされてしまう。さらにはランディも実は一度蘇生された身であり、タイムリミットを迎えた彼女はロジャーの目の前で惨たらしく溶けて消滅してしまう。ロジャーは手に入れた暗号を解読した結果、一連の事件の犯人が遺体安置所のマクナブ博士であることを突き止め、追い詰めるも彼の手下によって取り押さえらてしまう。レベッカまでも殺害されたことを知った彼の怒りは頂点に達し、脱出した彼は最後の戦いへと挑むのだった。
といった感じでクライマックスへと繋がっていきます。
死に対する恐怖に怯え、そして向き合い、刑事としての職を真っ当することを決意するロジャーの心情がしっかりと描かれていてとても良かったです。
彼を思いやりながらも熱い言葉で奮い立たせてくれたダグ。心から心配してくれたレベッカ。そして全ての真相を明かしてくれたランディ。彼らのおかげで己の運命を受け入れることが出来たにも関わらず、そんな彼らが自分よりも先に逝ってしまった悲しみ、そして喪失感。それはロジャーが己の命尽きるその時まで戦い続けることを決心するのに余りある事実でした。
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救急車内で拘束されていたロジャーが強引に救急車を運転して衝突させ、大爆発を引き起こして脱出して敵のアジトへと乗り込んで行くのがべらぼうにかっこよかったです。
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チャイナストリートの精肉店にて、装置の力で蘇生された北京ダックや七面鳥、豚の丸焼き、首無しの牛とロジャーたちが戦うシーンも相当シュールで個人的には一番お気に入りのシーンでした。
ちなみに、物語の鍵を握るアーサー•P•ローダーミルク役のヴィンセント•プライス氏は三大怪奇スターの一人として、ピーター•カッシング氏、クリストファー•リー氏らと共に第二次世界大戦後のホラー映画黄金期を牽引したレジェンド中のレジェンドです。ティム•バートン監督もプライス氏の大ファンで、同監督の「シザーハンズ」(’90)が彼の遺作となりました。
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(ヴィンセント•プライスWikipediaより引用)
今作とは関係ありませんが、リー氏とカッシング氏が大活躍する映画はこちら↓
◇マクナブ博士は大金持ちの老経営者たちを相手に自身が作り出した蘇生装置を披露し、彼らが死亡した際に蘇らせることで高額の謝礼をせしめようと企んでいた。しかしそこへ怒りのロジャーが襲撃。マシンガンをぶっ放し、誰彼構わず葬り去る。しかし、マクナブ博士は蘇生させたダグを戦闘マシーンとしてロジャーに差し向けるもダグはロジャーの呼びかけによって記憶を取り戻し、2人でマクナブを追い詰める。マクナブは自ら命を断つも、そんな簡単には死なせやしないとばかりに2人はマクナブを蘇生し、凄惨な死を与える。全てを終えた2人は装置を破壊し、笑いながらその場を立ち去るのだった。
という爽快な終わりを迎えます。絵に描いたような大団円ですね。
『ダグは死んでから時間が経っているため自我が無い』というマクナブの説明があるものの、ロジャーの呼びかけですぐに自我を取り戻すというご都合主義展開もありつつ、2人でマクナブを追い詰め、そんな簡単には死なせんぞとあえて蘇らせてもう一度葬るという痛快な倒し方は素晴らしかったです。おそらくはあと数時間で彼らは死にゆくわけですが、そんな悲しい運命を受け入れた2人の漢のラストの表情や会話が堪りませんでした。
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“生きているうちに何をするのか”を今一度考えさせられる素晴らしい映画でした。これは他の方にも見ていただいて是非とも感想をお伺いしたいです。オススメです!
☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。
渋谷裕輝 公式HP↓