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珈琲の大霊師

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シャベルの1次創作、珈琲の大霊師のまとめマガジン。 なろうにも投稿してますが、こちらでもまとめています。
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2018年12月の記事一覧

珈琲の大霊師059

珈琲の大霊師059

 ジョージ達が兵舎で会話している頃、リフレールは港から川を遡り、川上の地区で周囲を警戒しながら上陸を果たした。
 
 服は僅かに濡れていたが、サウロの作った水の膜のおかげで、薄く濡れた程度で済んでいる。ギリギリ、怪しまれずに済む程度だ。
 
 周囲には痛んだ家々が並んでいて、時々粗末な服を着た住民たちが歩いている。
 
(さすがジョージさん、判断が早い。とっさにリルケが宿っている鉢植えを私に渡して

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珈琲の大霊師058

珈琲の大霊師058

 ビヨン駐留から1ヶ月。砂煙を上げてビヨンにサラク軍が迫ってきた。その数6千。とても、いち傭兵団に差し向ける数ではなかった。
 
 だが、その時点でラカンは町の手前に塹壕を築き、周囲に伏兵を完全配置するだけの余裕があった。

 用意した武器だけで、2万の敵を相手にするだけの準備をしてきたのだ。
 
「思ったより少ねえな。他にもいると思うか?」

「この辺りの伏兵を置けそうなポイントには、すでにこち

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珈琲の大霊師057

珈琲の大霊師057

 話は2年前に遡る。

 ガルニエと、ラカンには恋人がいる。それも、同一人物だ。険悪な関係ではない。

 偶然、ガルニエとラカンが惚れた女が同じで、女もまた二人を愛してしまった。それだけの事だ。

 ガルニエとラカンも、死線を互いに生き抜いた仲。今更女一人を巡って争うものでもなく、夜は3人一緒が基本だった。

 女の名は、ミシェル=ローレン。

 『鋼の鎧』の看板娘。守備でも重要度の高い、『治療』

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珈琲の大霊師056

珈琲の大霊師056

「狭い所で申し訳ありません。ガルニエもすぐ来ますので、座ってお待ち下さい」

 と、さり気なく唯一の出口であるドアの前に立ちながらラカンは言った。

 ジョージが案内されたのは、兵舎の取調室ではなく、応接室のようだった。座り心地の良さそうなソファが二つ。テーブルを挟んで向かいに並べられている。

「そうかい。じゃあ、遠慮なく」

 警戒するそぶりも見せず、ジョージはどっかりとソファに体を投げた。思

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珈琲の大霊師055

――――――――――――――――――――
第13章
    王たる者の血筋

――――――――――――――――――――

 人は、本当に驚くと身動きできなくなるというが、今のジョージ達はまさにそれだった。
 
 部屋の前に大男が立っていたというモカナの証言から、スパイの気配を探っていたリフレールとジョージだったが、ついにその気配を感じる事はできなかった。
 
 そして今、傭兵団『鋼の鎧』が占拠する

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珈琲の大霊師054

珈琲の大霊師054

「でだ、ここから先の事を上手く運ぶ為にも、例の傭兵団について聞いておかなきゃならないわけでな。お前なら、色々知ってるだろ?」

 ジョージは、リフレールの向かい側のベッドに腰掛けて、話題を切り出した。
 
 真面目な話ともなれば、気分に任せているわけにもいかず、リフレールは深呼吸して感情を抑制した。

「傭兵団、『鋼の鎧』ですね。防衛においては他の追随を許さない、この大陸でも指折りの傭兵団です。リ

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珈琲の大霊師053

珈琲の大霊師053

 初の船旅。マルクには巨大な船が沢山あったが、乗ったことは無かった。モカナは大きな穂船に乗るのは、始めてだった。

「ふわぁ~。こんなに大きいのに、浮かんでる。どうして沈まないんだろう?」

 と、目を輝かせて甲板で大はしゃぎしている。それはもう一人の少女も同じようで、ジョージは無理矢理青い世界に引きずり込まれた。

「私、船乗るのはっじめてなんですよー!!ほら、下に置いて下さいよ。鉢、鉢!」

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珈琲の大霊師052

珈琲の大霊師052

 港町ヨットーは、大陸最大の湖「内海」に面した港町だ。山と湖に挟まれた、斜面に白壁の家が立ち並ぶ喧騒に満ちた町だった。

 馬車を降りた一行は、定期便の時間を調べる為に港へと向かった。

「わぁ、皆ボクみたいな肌の色!!」

 モカナが嬉しそうにジョージを見上げて言った。見ると、強い日差しのせいか、住人は一様に日に焼けていた。

 マルクでは肌の白い人が多かった為、なんだか珍しい物扱いされたモカナ

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珈琲の大霊師051

珈琲の大霊師051

 翌日、庭で三人で珈琲を飲んでいると、来客があると女将さんに伝えられた。
 
 出迎えに行くと、何やら箱を片手に白髪の紳士が宿の入り口から会釈してきた。
 
「いや、本当に姉に聞いた通りの皆さんでした。始めまして、現在シマ家を仕切っております、クエルの弟マリュと申します」

「えっ!?シマ家の!?」

 案内した女将の目が飛び出そうになっている。仕事の関係上、あまり接点が無かったのかもしれない。

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珈琲の大霊師050

珈琲の大霊師050

――――――――――――――――――――
第12章
    海を渡る珈琲

――――――――――――――――――――

 その日の夜、ジョージはリフレールに呼び出された。
 
 宿の庭に臨む丸テーブルで、リフレールは沈んだ顔をしていた。

(ここだと、モロにリルケの活動範囲なんだがなぁ)

 と、思いながらジョージはリフレールに声をかけた。

「よぉ、なんだか二人っきりってのは久し振りだな」

 

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珈琲の大霊師049

珈琲の大霊師049

 翌日、シマ家の家長がぶっ倒れた。
 
 翌々日、シマ家の家長が書斎に引きこもったらしかった。
 
 その間、ジョージ達は情報収集と観光をしていたが、クエルがリルケの遺体を捜し始めて三日目、旅の商団が宿を訪れた。
 
 そこで、リフレールはサラクの状況を聞いてみた。

「ああ・・・、砂漠の虎と言われたサラクも、もう駄目かもしれないよ。治安は悪くなる一方だ。国境の村では、柄の悪い傭兵共が好き勝手やっ

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珈琲の大霊師048

珈琲の大霊師048

 それから、連日リルケはクエルの様子を見に行った。その間、ジョージ達はケシ畑を燃やす準備を整えて、残りの時間をプワル村の観光に使っていた。
 
 一度止んだ雨はなかなか再び降ろうとせず、快晴が続いた。

 そして、三日後。
 
 風呂を出て、宿の庭で珈琲を楽しんでいたジョージの視界が、唐突に青い世界に呑まれた。
 
「リルケか?どうだった、クエルの様子は」

 どこへとなく声をかける。が、返事はす

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珈琲の大霊師047

 ジョージ達は、できるだけ多種類の花が咲いている場所を探した。
 
 そこに遺体を移して、より多くの花から精気を吸えるようにできるかもしれないという仮説の元の行動だ。

「多分、リルケが死んだ場所なんかは丁度そんな感じの場所だったんだろうけどなぁ。リルケ、覚えてるか?」

 瞬間、ジョージの視界が青い世界に切り替わる。段々と切り替えが上手くなっているように思えた。

「ごめんなさい。最初は何が起き

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珈琲の大霊師046

珈琲の大霊師046

「今までの花の精伝説をまとめると、いくつか共通している事がある。まず最大の共通点は、その全てが女ってことだ」

 モカナが淹れた珈琲を飲み、頭がスッキリしてきたなと感じながらジョージは語り始めた。

「次に、死んだと思われる時期から3年以上の月日が必要。まあ、多分だがきっかり3年が必要なんだろうと思うぜ。リルケが良い例だな。起きた当日に、自分の命日だったって言ってたからな。次に、男に取り憑き、精気

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