珈琲の大霊師047
ジョージ達は、できるだけ多種類の花が咲いている場所を探した。
そこに遺体を移して、より多くの花から精気を吸えるようにできるかもしれないという仮説の元の行動だ。
「多分、リルケが死んだ場所なんかは丁度そんな感じの場所だったんだろうけどなぁ。リルケ、覚えてるか?」
瞬間、ジョージの視界が青い世界に切り替わる。段々と切り替えが上手くなっているように思えた。
「ごめんなさい。最初は何が起きたか良く分からなくて、覚えてないです」
「まあ、だろうな」
予想していた答えだった。頭を切り替えて、丁寧に探す。小さな、どこにでも生えてそうな花は特に重要だ。それのあるなしで、行動範囲は格段に違うだろうからだ。
その場所を見つけた頃には、日が暮れ始めていた。その場所は、村を見下ろす小高い丘の上にある管理人のいなくなった花畑だった。どこから持ってきたのかと思う程、多種多様な花が所狭しと咲いていた。それは窮屈な程で、とても自然とは思えなかった。
見つけたのは、モカナだった。小高い丘が見えたので、なんとなく登ってみたかったというのが理由だった。
そこには、何故か小さな壊れたじょうろや、スコップが草に紛れて落ちていた。
「きっと、自分の畑が持てない子供のですね」
と、モカナがそれを拾ってジョージに見せる。小さいモカナの手と比べても、そのスコップは取っ手が小さかった。
「・・・・・・それ、もしかしたらクエルさんのかも」
と、急に世界が切り替わりリルケが呟いたのが聞こえた。
「ん?どうしてそう思う?」
「あの、大きなお屋敷、シマ家のお屋敷ですから」
と、リルケは近くにあった大きな洋館を指差した。他に建物はこの付近には無いらしい。地主だけあって、貸し出していない私有地も相当あるということだろう。
「なるほど・・・な。あいつは、本当に花が好きだったんだな」
恐らくは、小さな頃自分の畑を持てなかった頃に、ここに色んな所から種を貰ってきては好き勝手に植えていたのだろう。
「弟さんのもありますよ」
と、モカナがドロシーの口を借りて青い世界で喋った。
「多分、年齢的に考えて弟さんって今の当主様だと思います」
「・・・・・・そうか。良く見つけたもんだな、こんな場所を。ここなら、村も見渡せるし家族とも近い。偉いぞモカナ」
ぽんぽんと頭を撫でるジョージに、嬉しそうに目を細めるモカナ。
「・・・・・・私、なんか最近役に立ってない気がします」
そして、リルケが加わった事で自分が入り込めない世界を展開されて、仲間はずれにされているリフレールが滅多に言わない愚痴を呟くのだった。
「・・・・・・そうだったの。話は分かったわ。私なんかの為にそこまでして下さって、有難うございます」
話を聞いたクエルは、そう言って綺麗にお辞儀した。
遺体を埋めて、クエルの元に戻った頃には完全に日が落ちていた。空には、薄雲に隠れた月がぼんやりと光っていた。
夜になり、月の光の下だからか、クエルは正気を取り戻しているようだった。
「まあ、乗りかかった船ってやつだ。もし、上手くいったら、ここは焼いちまった方が良いと思うがな」
ここが残っている限り、また犯罪者が村に出入りする事になるからだ。
「そう・・・・・・ですか。いえ、そうですね。ここは、もう跡形も無く灰になってしまった方がいいんだと思います」
クエルが一瞬寂しげな顔をしたのを、ジョージは見過ごさなかった。ちなみに、青い世界に入っているジョージには見えないが、唯一全く話が分からないリフレールは大分前からそんな顔をしているのだが。
「まあ、20年以上もいたんだ。色々あっただろうが、思い出の場所でもあるだろうな」
見透かされて、クエルは沈黙の後、俯いた。
「でも、クエル、新しい門出だもん。過去にケリをつけて、さっぱりと行こうよ!」
対照的にリルケは明るい。クエルごと畑を焼く事を覚悟していたリルケだ。クエルが消えなくて済むかもしれないと舞い上がっている。
「うん。そうだね!」
リルケの勢いに押されて、クエルは一歩を踏み出した。
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