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勝つのに不思議の勝ちはない。夏の甲子園。32年ぶり出場の大社が、選抜準Ⅴの報徳学園に快勝。初回の積極策で波に乗る。「試合巧者」とも思える戦いぶり

勝つのに不思議の勝ちはない。そう思わせる試合だった。32年ぶりに夏の甲子園へ帰ってきた大社(島根)が強豪を下して初戦を突破した。相手は選抜準優勝の地元報徳学園(兵庫)。初回から積極策で2点を奪い、波に乗った。報徳の「弱点」ともいえる初回を意識していたならば、大社は相当な「試合巧者」といえる。

11日に行われた全国選手権5日目の第3試合。大社は初回からエンジン全開だった。先頭打者がヒットを打つ、二塁を狙ってアウトとなったが、チームを活気づかせるのに十分な一打だった。

次打者の藤江龍之介選手が内野安打で出塁すると、二盗を決めた。足でプレッシャーをかけていく。3番打者が四球で一、二塁となった。

ここで4番打者がセカンドゴロ。「4-6-3」の併殺コースに見えたが、相手のショートがボールをこぼし二塁のアウトだけしか取れなかった。

2死一、三塁。ここで5番の下条心之介選手がレフト前へタイムリー。1点を先制。しかも左翼手から三塁への返球が乱れた。三塁にいた走者が積極的にホームを突き、さらに1点を加えて、この回、計2得点。アドバンテージを手にして勢いに乗った。

報徳の「弱点」は初回にある。選抜で敗れた決勝では、エースの今朝丸裕喜投手は初回に2失点を喫している。今夏の兵庫大会初戦でも初回に1失点。立ち上がりに不安がある。

大社が報徳の「弱点」を意識して、電光石火の積極策に打って出たのだとしたら、相当な「試合巧者」といえるだろう。

報徳の守備陣にふわふわした印象が漂っただけに、いっそう大社の積極策が輝いて見えた。

投げては大社のエース左腕、馬庭優太投手が絶妙なピッチングを見せた。四隅を突き、相手に的を絞らせない。この試合奪った三振は4つだが、打たせて取る投球が光った。

相手の主軸3人をノーヒットに抑えて、終盤は3人から4つのフライアウトを取った。この試合、内野ゴロエラーが2つ、内野安打が1つ。叩きつけるバッティングをされたら、出塁を許し、ピンチを広げかねなかった。それだけにフライアウトを量産した投球は見事だ。

七回に1点を追加した大社。完全にリズムをつかんでいた。終盤の相手の反撃を1点に食い止めて、3-1で初戦を突破した。大社にとって、夏の甲子園63年ぶりとなる白星を挙げた。強豪相手だけに喜びも格別だろう。

両チームは5月に練習試合を行い、1-1で引き分けている。県立校の大社にとっては選抜準Ⅴ校と互角の試合をできたことは自信になったはずだ。

初回に足を絡めた積極策で先制。先発左腕の打たせて取るピッチング。チャレンジャーが愚直に九回まで戦い続けた姿勢が勝利という形となった。

負けた報徳学園だが、夏の甲子園は6年ぶりの出場。この時は第100回の記念大会で兵庫から2校出場できた。1校だけの兵庫代表として夏の聖地に出場したのは2010年以来14年ぶりだった。

強豪が集う兵庫大会を制するのは難しい。それをクリアして甲子園に戻ってきたのは立派だった。今夏優勝候補に挙げられながらの初戦敗退はつらいだろうが、夏の甲子園帰還をたたえたい。

それ以上に、大社の戦いぶりが見事だったのだ。「試合巧者」大社にあっぱれ!次戦も楽しみだ。

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