諏訪清二

2000年から防災教育に関わってきました。今は日本、世界に防災教育を広げる仕事にとりく…

諏訪清二

2000年から防災教育に関わってきました。今は日本、世界に防災教育を広げる仕事にとりくんでいます。元、高校教師、現、大学特任教授・非常勤講師・客員研究員。つまり、フリーターです。「高校生、災害と向き合う」「防災教育の不思議な力」「防災教育のテッパン」「夢みる防災教育」など。

最近の記事

被災地に入る?

「被災地に入る」という表現が気になる  仕事で「東京に行く」というけれど、「東京に入る」とは言わない。でも、被災地だと、例えば、「能登に入る」という人が多い。なぜ「行く」ではなく「入る」をわざわざ使うのだろう。  「山に入る」という表現がある。山菜採りであったり、登山であったり、何か特殊な目的を持って出掛けていくときに、「入る」と言う言葉が使われている。安全な日常がある場所から目的と決意を持ってちょっと場所に入って行くイメージだ。 安全な場所から被災地という非日常に入って

    • 災害ボランティアを思う

       災害ボランティアを思う災害ボランティアは自発的に困った方々を助けようとしている個人あるいは集団だ。それを行政がコントロールしようとするのはどうなのだろう。東日本大震災の時も道路状況や津波被害の特殊性を理由に、市民のボランディアは来ないようにという呼びかけが行われた。今回の能登半島地震でも、道路事情などを理由に、ボランティアの公式な受付はかなり遅くなった。コントロールによって秩序は生まれるかもしれないけど、結果的には、足らないところへの支援を行政が邪魔してしまっていることにな

      • 深夜の帰宅困難者・・・

         「厳冬期深夜帰宅困難者徒歩帰宅訓練」を行いました。と言っても災害発生や交通機関の途絶を前提とした訓練ではなく、ちょっと飲みすぎて最終電車で寝てしまい、5つ先の駅で目覚めて慌てたという、とても恥ずかしい理由です。駅を出ると当然のことながら、タクシーは見つかりませんでした。タクシーを呼ぶアプリは使っていないし、酔っ払っているからダウンロードしようという発想もないし、何より、こんな田舎の駅でこんな時間にタクシーをつかまえることは明らかに不可能です(そこまで冷静に考えていたわけでは

        • 体験の継承 30年問題をどう乗り越える!?

          阪神・淡路大震災から28年が過ぎて、30年限界説が囁かれ始めました。30年で被災体験が語り継がれなくなる、体験が風化していくというのです。あの体験が忘れられてしまうという危機感がじわっと広がっているようです。 私は教員生活の後半は主に防災を教えてきましたが、一番長いキャリアは英語教師です。私が英語教師だったことは今では誰も信じてはくれないのですが・・・。大学で中学校と高校の英語免許の取得を目指していた頃、外山慈比古という言語学者に出会い(本で、です)、時々、彼の本を読んで納

        被災地に入る?

          世界中のラジオで反戦歌を流そう Play anti-war songs on radio around the world

          世界中のラジオで反戦歌を流そう 2月24日、ロシアがウクライナに侵攻を開始した日。 私たちはこんな日を幾度となく経験してきました。 独裁者が起こす戦争。軍が起こす戦争。市民の誰一人も望まない戦争。 反対する市民はとらえられ、時には殺され、反戦運動は弾圧されてきました。 ウクライナだけではありません。世界にはまだたくさんの国と地域が武力による衝突の真っ只中にいます。 戦う双方が自らの正当性を主張し、世界はどちらに味方するかで割れていきます。最悪の終着点は世界大戦です。各地で続

          世界中のラジオで反戦歌を流そう Play anti-war songs on radio around the world

          防災教育の異種格闘技戦

           いきなり「???」となった方は多いでしょうね。  異種格闘技戦はアントニオ猪木が始めました。猪木―アリ戦は、お堅い朝日新聞の社会面に記事が載っていた覚えがあります。私が高校生の時です。当時は茶番との評価でした。それでも猪木は柔道、空手などと格闘技の枠を超えた戦いを続けていきます。それが今、様々な総合格闘技として花を開いているのです。  それと、防災がどう関係?まだ疑問に思われている方は多いでしょうね。実は、防災教育も他の領域との掛け合わせでどんどん面白くなってきているのです

          防災教育の異種格闘技戦

          図解でわかる 14歳からの自然災害と防災

           長く、記事を書いていませんでした。別の場所に連載記事を書いたり、イベントやプロジェクトの企画にかかわったり、イベントのまとめの文書に悪戦苦闘したり、本を作る仕事をしていたりして、本当にさぼってしまっていました。もちろんそんな理由以外に、良い内容を書こうとか、まとまった量を書こうといった、自分で自分に課してしまっていた「重荷」も原因だと思います。だから、もっと気楽に書こう、字数が少なくてもいいよね、と思うことにしました。気楽にね。  さて、記事タイトルにある「図解でわかる 1

          図解でわかる 14歳からの自然災害と防災

          コロナで「野戦病院」?

          大阪府知事がコロナ対応で1,000床単位の「野戦病院」を作るのだという。阪大病院に相談しているというから、本気だろう。100の病院に、例えば2割ずつコロナ対応のベッドをあけてくれと要請しても、医師と看護師の確保、他の病気への対応等、実現を阻む要素は多い。目の前の患者と真摯に向き合っている病院は、新たなコロナ対応までなかなか人員、設備を割けない。だから、既存の病院への依頼だけではなかなか病床を確保できない。 各病院に一定数の病床確保を依頼するより、100の病院のうち2割をコロ

          コロナで「野戦病院」?

          情報発信側の工夫と市民の意識改革

           でも、テレビのニュースは本当にわかりやすくなりました。アナウンサーも気象予報士も、もちろんスタッフみんなが「伝え方」を一生懸命勉強されていますね。「川の様子を見に行かないように」とか「過去の災害で、知り合いに避難の声掛けをしてもらったから避難して、助かった人がいます」とか、市民に届く表現を使おうと工夫しています。  でも、ニュースのレベル4や5の情報が避難スイッチになるとしたら遅すぎます。日頃からハザードマップで地域の危険を確認・理解しておき、もちろん、過去の土砂災害の場

          情報発信側の工夫と市民の意識改革

          気象情報の伝え方に疑問が

           お盆を迎えて、梅雨のような気圧配置になり(梅雨と秋雨は基本的には同じメカニズムでできている停滞前線だと、高校生の頃地学で学びました)、これまでに経験したことのない大雨が降り、広島市で大雨特別警報が出されています。テレビでは気象庁の記者会見が放送され、担当者が状況を細かく伝えています。「警戒レベル5」にあたる「緊急安全確保」の段階だから、今から避難所に行くことがかえって危険だ、その場で命を守る行動をとるように、例えば、土砂災害が予想される斜面と反対側の2階に避難するようにと伝

          気象情報の伝え方に疑問が

          学ぶから関心を持つ、防災

           とある大学の講義で、気象庁の-learningを取り上げました。「大雨の時にどう逃げる」という学習教材です。実は、このビデオ教材の製作に私自身が関わっていたので、学生に視聴してもらっていろいろと感想を聞いてみたいなと思ったわけです。  学生たちの感想文を読むと、かなりの学生たちが、自分の住んでいる地域のハザードマップをわざわざネットで調べて確認し、友だちや家族に伝えたいと書いていました(実践したかどうかは確認していません)。  感想を読みながら、20年近く前に読んだ論文

          学ぶから関心を持つ、防災

          地震の時は「4つの危ない」を避ける  ~大和言葉と漢語~

           文部科学省は、地震発生時には「落ちてこない・倒れてこない・移動してこない」場所が安全だと教えています¹。文部科学省という御上の言うことだから地方の教育委員会はこの3つの安全な場所という考え方をしっかりと検討することなしに、学校に伝えます。もちろん学校でもガイドラインに沿って3つの安全な場所を子どもたちに教えます。  でも、震災を体験した人ならもう一つの危険を知っています。割れて散乱したガラスや食器です。私は、文部科学省が指摘する3つではすべての危険をこどもたちに教えている

          地震の時は「4つの危ない」を避ける  ~大和言葉と漢語~

          未災地

          「未災地」という言葉が定着してきたようです。時々、防災関係者以外からも、いい表現だと言われることがあります。  この表現を思いついたのは、テレビで漢方薬のコマーシャルを見ていた時でした。病気でない人はみんな健康だというわけではなく、病気の一歩手前だという受け止め方が必要だという内容だったと思います。病気の一歩手前、「未病」という表現に強く惹かれました。  この東洋医学の発想からひらめいたのが、災害の一歩手前の地域、つまり「未災地」です。「被災地」と韻を踏んでいるのもいいな

          無限に広がる防災教育

           ある防災教育の研修会の打ち合わせをしていて、ふとひらめきました。  私はこれまで、いろんな場所で「狭義の防災教育」と「広義の防災教育」の存在を指摘してきました。「狭義の防災教育」は「ハザードの理解」「災害への備え」「災害時の正しい対応」を教えることです。私はこれを「防災教育のミニマムエッセンシャルズ」と呼んでいます。命や財産を守るために最低限必要な知識や技能を教える教育です。  「広義の防災教育」はそこにとどまらずに、災害体験の語り継ぎ、自然の恩恵、命、福祉、地域、産業、人

          無限に広がる防災教育

          「災間」の防災教育

           今日の午後、ラジオでしゃべる内容をメモしていたら、ふと文章にしたくなりました。普段は文章を書くという作業が苦手で、ノートパソコンを開いても、「コーヒーを淹れよう」とか「猫と遊ぼう」とか「植物に水をあげよう」とか、とにかく別の行動を考えて「書かなくてもいい」状況を生み出す癖があるのだけれど、いまはなぜか、書いてみたいなと思いました。こんなことはめったにありません。  3月中旬、岩手県の釜石市、宮城県の南三陸町と仙台市に行ってきました。神戸から釜石に移住した昔の教え子に会うの

          「災間」の防災教育

          地震発生直後の連絡、ちょっと考えましょうよ。

           東北で地震が続いています。とても心配になります。特に、東日本大震災以降、私に親しくしてくださった方々の安否は気になります。  でも、その日に連絡を取ったりはしませんでした。翌日、被害がなかった事実を確認して、メールしました。内容は、東日本大震災を体験した子どもたちのフラッシュバックや体験を持たない子どもたちも含めた子どもたちの恐怖、翌日の学校での対応が中心でした。私が元教師で、防災教育と心のケアに関わってきて、東日本の知り合いも学校関係者が多いからです。  揺れたニュー

          地震発生直後の連絡、ちょっと考えましょうよ。