地震の時は「4つの危ない」を避ける  ~大和言葉と漢語~

 文部科学省は、地震発生時には「落ちてこない・倒れてこない・移動してこない」場所が安全だと教えています¹。文部科学省という御上の言うことだから地方の教育委員会はこの3つの安全な場所という考え方をしっかりと検討することなしに、学校に伝えます。もちろん学校でもガイドラインに沿って3つの安全な場所を子どもたちに教えます。

 でも、震災を体験した人ならもう一つの危険を知っています。割れて散乱したガラスや食器です。私は、文部科学省が指摘する3つではすべての危険をこどもたちに教えていることにならないと考えています。防災の講演会や授業では、私は、この3つの安全な場所(裏返せば三つの危険な場所です)に加えてもう一つ、割れるものへの注意を促しています。「落ちてくるから危ない・倒れてくるから危ない・移動してくるから危ない・割れるから危ない」です。

 先日、小学校1年生の地震防災の授業を見学する機会がありました。私はこの学校に4年間継続的に寄せていただき、授業研究会に参加したり学習会の講師をしたりしてきました。今年で5年目に入っています。担当の先生は防災教育をいっしょに実践してきたベテランです。こどもたちとやり取りしながら(対話的な授業です)、何とか「4つの危ない」を引き出そうと苦心されていました。そして、「おちる」「たおれる」「われる」までは引き出せたのですが、こどもたちの口からはどうしても「いどうする」が出てきませんでした。

 その時ふと気づきました。「落ちる」「倒れる」「割れる」は全部大和言葉です。一方、「移動する」だけは漢語です。これを大和言葉に変えましょう。「動く」です。小さな子どもたちに教えるには、こどもたちに馴染みのあるやさしい日本語が必要なのです。

 地震時の危険個所を発見する授業・ワークショップでは、これからは「落ちてくるから危ない・倒れてくるから危ない・動くから危ない・割れるから危ない」を使っていこうと決めました。

¹ 学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き 文部科学省 平成24年3月

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