情報発信側の工夫と市民の意識改革

 でも、テレビのニュースは本当にわかりやすくなりました。アナウンサーも気象予報士も、もちろんスタッフみんなが「伝え方」を一生懸命勉強されていますね。「川の様子を見に行かないように」とか「過去の災害で、知り合いに避難の声掛けをしてもらったから避難して、助かった人がいます」とか、市民に届く表現を使おうと工夫しています。

 でも、ニュースのレベル4や5の情報が避難スイッチになるとしたら遅すぎます。日頃からハザードマップで地域の危険を確認・理解しておき、もちろん、過去の土砂災害の場所を確認し、洪水の歴史も知っておいたうえで、気象情報から判断して、避難が必要ならレベル3でさっさと避難する人を育てないと。そのためにはやはり防災教育です。学んでいない人に「さっさと逃げろ」と言っても無理があります。

 でも、何度も繰り返される「命の危険」とか「過去経験したことのない大雨」という表現はちょっとインフレーション気味で、これで何ともなかった人は、「やっぱり、『狼』だ」と思ってしまうかも知れません。それは避けたいですね。

 少年と狼の物語は、教育では「嘘をついてはいけない」という教訓として教えられてきました。でも、防災視点で考えると、別の教訓を持っています。もし、村人が嘘だと思っても助けに行っていたら、羊は狼に食べられることはありませんでした。避難情報を聞いて「まあ、大丈夫だろう」と思わずに「嘘でも逃げるぞ」と思ってください。この物語の教訓は「嘘だと思っても信じろ」ですね。もちろん空振りも多いでしょう。それでいいじゃないですか。野球をしてきた人にはわかると思います。「空振りOK、見逃し三振はいつまでも見逃し三振だけれど、バットを出していたらいつか当たる」とよく言われました。避難情報は外れてOKと受け止めましょう。


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