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ミカエルからの愛の詩(フランス恋物語75)

un jour de congé

9月21日。

昨夜プロヴァンス旅行から帰ってきて、私は泥のように眠った。

パリに戻ってきてみたら、昨日ニームでファビアンとデートしたのが夢のようだ。


今日は一日オフなので、久しぶりにうちでのんびり過ごそうと決めていた。

たまっていたメールもチェックしなきゃ。

そう思って、パソコンを開きメールを見ると、ある懐かしい人物からメールが届いていた。

それは、7月の終わりに1度だけデートしたミカエルからだった。

Michaël

ミカエルは、私が中学生の時に一目惚れしたエドワード・ファーロングをそのまま20代にしたような、美しい容姿の持ち主だった。

私たちは、”国際恋愛専用出会い系サイト”で知り合ってお互い気に入り、デートの約束をした。


実際会ったミカエルはまさに理想そのものの美しさで、私は彼に気に入られていることも半信半疑でいた。

初めてのデートで私たちはキスする関係になったが、それっきりで終わった。

彼とのキスは夢のようで、この上ないくらい幸福感に満ちたものだったのだが・・・。


ミカエルは22歳の大学生で、パリから電車で1時間の町に住んでいる。

遠距離恋愛はイヤだし「将来結婚を考えられる人」という基準から外れてしまうため、アラサーの私は8月初めに会ったニコラ(38歳・不動産業のセレブ・実は変態)と交際することに決めた(そのニコラとも1ケ月もしないうちに別れてしまったが)

ミカエルに「他の人と付き合うことになりました。私のことは忘れてください。」とチャットで伝えると、「わかったよ。お幸せに。」と言いながら、最後には「今まで通りレイコと連絡は取り続けたい。」という言葉を残していった。

その後1ケ月以上音信不通だったのだが・・・昨夜久しぶりにメールを送ってきたようだ。

「あんなに美しいミカエルのことだから、すぐに新しい彼女ができると思っていたのに・・・。今頃何の用だろう?」

そう思いながらメールを開くと、その内容に私は驚いた。

Lettre d'amour

ミカエルからのメールは、未だに私を想い続けていることを表明したラブレターだった。

レイコ、久しぶり。
元気にしてる?
まだその彼氏とは続いているの?
君と会えなくて寂しいよ。

「なんで、他の男を選んだ私なんかを・・・。」

信じられない気持ちでいっぱいだったが、彼の好意は素直に嬉しかった。

もし、私が彼と同じくらいの年齢で近くに住んでいれば、喜んで付き合っていただろう。

条件を度外視すれば、私だってミカエルのことは大好きだし、それどころか、私にはもったいないくらいの、理想そのものの人なのだから・・・。


メールの最後には、彼が私のために作ったという、愛の詩が添えられていた。

男性に詩を書いてもらうことは人生で初めての経験で、ミカエルがそこまでしてくれることに私は感激してしまった。

Tu es tel un tsunami, tu es arrivée si vite et d'une puissance que je n'ai pu succombé à ton océan de douceur.
Ton regard fixé sur moi, me fait ressentir une douleur dans mon cœur...
Une douleur agréable car c'est la flamme de mon cœur qui se rallume, brûlant ma tristesse en milles cendres, laissant place à un nouvel amour.
Être prêt de toi me rassure, je retrouve enfin le sourire lorsque je te parle mais la tristesse revient lorsque tu t'en vas.
Te voir me fait voir le soleil en pleine nuit, tu rayonnes ma vie de milles feux, que devant toi je suis éblouie de tendresse.
Sentir tes mains sur moi, me frissonne de passion pour toi, cette sensation me donne envie de te prendre dans mes bras et ne plus te lâcher.
Lorsque que mes lèvres touche les tiennes, cela m'ouvre une porte vers le paradis, semé d'obstacles surmontable à nous deux.
Cependant cette porte va se refermer sur moi...t'éloignant tellement loin, que je m'enfermerai dans une solitude d'un nouvel amour perdu.

私は久しぶりにフランス語と真剣に向き合い、その翻訳を試みた。

君はまるで津波のように早く押し寄せて来るから、僕はその優しい海に屈してしまうに違いない。
君にじっと見つめられると、僕の心は痛みを感じる・・・。
僕の心が再燃するのは、心地よい痛みだ。
千の灰の中で僕の悲しみを燃やし、新しい愛のための余地を残してくれる。
君が近くにいれば僕は安心する、君と話すと僕はやっと笑顔を取り戻せるけれど、君が去るとまた悲しみが戻ってくる。
君を見れば、真夜中でも太陽を見ているようだ、君への情熱は僕を震わせる、君を前にすると、僕はその優しさが眩しい。
君の手を感じると、君への情熱が僕を震わせる、君を抱きしめて、決して放したくない。
僕の唇が君に触れると、僕たち二人で乗り越えられるだろう、障害だらけの天国への扉が開く。
だけど、その扉は閉じられる。
君がそれほどまでに遠くにいってしまったら、僕は新たな失恋の孤独に閉じ込もるだろう。

「素敵なフランス人男性に、フランス語で熱烈に愛を語られる。」

フランスに住んで、こんな女冥利に尽きることがあるだろうか・・・。


私はミカエルに返事を書いた。

お久しぶりです。
私は元気にしています。
素敵な詩をありがとう。
ミカエルに詩を書いてもらって、とても嬉しいです。
前に話していた彼氏とは別れ、今は一人です。
10月末、日本に帰国することになりました。
9/24~26にストラスブールとナンシー旅行に行ってきます。

すると、すぐにミカエルから返事が来た。

僕の住んでいるChateau Thierry(シャトー・ティエリ)は、ナンシーからパリの帰り道にあるから、おいでよ。
どうしてもレイコに会いたいんだ。

その言葉に、私はキュンとした。

私だって、ミカエルに会いたい!!

またミカエルにキスしてもらいたい・・・。

ストラスブール・ナンシー旅行はミヅキちゃんと行く予定だが、帰りに別行動する分には問題ないだろう。

わかった。
じゃ、9/26の帰りにシャトーティエリに寄ります。
到着時間はまた連絡します。

「ミカエルと会える」という約束に、私は胸の高鳴りが抑えられなかった。

chez Mizuki

翌日の9月22日、私はミヅキちゃんちにいた。

2日後に控えたストラスブール&ナンシー旅行の最終的な打ち合わせと準備のためだった。

初めにプロヴァンス旅行の報告と、ミカエルからメールが来たことを話した。

そして、ナンシーからの帰り道はミカエルの住むシャトー・ティエリに寄るため、別行動になることを了承してもらった。

肉食系女子・ミヅキちゃんは、興味津々に言った。

「レイコちゃん、ニームではファビアンに好かれて、今度はミカエルに熱烈なラブレターをもらっちゃって、本当にモテモテだね!!

ミカエルに会ったら、どうせいっぱいキスするんでしょ?

もしかしたら、それ以上もあるかもしれないけど。(笑)

いいな~、1週間以内に二人の男とキスするなんてズルイ!!」

そっか・・・。

ファビアンとのニームデートが9月20日で、ミカエルと会うのが9月26日だから、確かに1週間経たないことになるんだな。

フランスに来て以来キスのハードルが著しく下がっている私は、さほど罪悪感を覚えることもなかった。

彼らがいるのがニームとシャトー・ティエリという全くの別の場所、というのもあるかもしれないが。

それでも、私はミヅキちゃんの方が羨ましく思う。

「ミヅキちゃんは、マルクという彼氏と2ケ月以上ラブラブで続いてるんだから、そっちの方が羨ましいよ。」

「まぁそうなんだけどね。

あ、そのマルクなんだけど、もうすぐうちに来るけどいいよね?

久しぶりに挨拶してあげて。」

マルクとは、7月のJAPAN EXPO in Parisでナンパされて会った時以来だ。

あ、ネイティブのフランス人いえば・・・。

「そうだ、ミヅキちゃん。

私の翻訳が正しいかどうか確認してほしくて、ミカエルの詩をプリントアウトして持って来たの。

マルクにも是非読んでもらいたいんだけど、いいかな?」

ミヅキちゃんの目が輝いた。

「え、詩を見せてくれるの?

すごく楽しみ!!

私そこまでフランス語得意じゃないけど、一緒に見る。

ネイティブが見たらどんな感じなのか、マルクの感想も聞きたいよね。」

私たちは、マルクがやってくるまでに旅の準備をし、ラブレターの翻訳確認をすることにした。

ミヅキちゃんは「私も偉そうに言える立場じゃないけど、その翻訳で多分合ってるんじゃない?」と言った。

l'impression de Marc

1時間後ぐらいに、マルクがやってきた。

私とマルクは「Ça fait longtemps !」(お久しぶり)と言ってビズをした。

早速ミカエルのラブレターを見てもらい、感想を聞いた。

「すごいね!!

こんな長文の詩を書いてくるなんて、レイコがすごく愛されてるのがわかる。」

私はミカエルとのいきさつを簡単に話し、マルクに聞いてみた。

「これって、冗談じゃなくて本気だと思う?

私は彼の愛を信じていいのかしら?」

「僕はミカエルじゃないからわからないけど」と前置きをしてから、マルクは言った。

「フランス人の僕でも、ここまでの詩を書くのは大変だなって思うよ。

彼の想いは真剣そのものだと思う。

レイコも彼のことが好きなの?」

私は思っていることを正直に答えた。

「ミカエルのことは大好きよ。

私の初恋の人そっくりで、理想そのものなの。

ただ、彼はパリの人じゃないし、私は10月末に帰国するから、正式な恋人になることはないと思うけど。

でも、9月26日旅行の帰りに彼の住んでいる町に寄るつもり。」

マルクは笑顔で言った。

「それはいいね。

短い時間でも、愛を育んでおいで。」

・・・ミカエルのラブレターがフランス人のお墨付きをもらえて、私はやっとミカエルの愛を信じられるようになった。

旅行前夜

早いもので、旅行前日となった。

私は往復の電車の切符を買い、ミカエルに待ち合わせの時間を伝えた。

前回のプロヴァンス一人旅と違い、今回はミヅキちゃんと一緒だから安心して楽しく旅行できるのが嬉しい。

しかも、帰りにミカエルにも会える・・・

ミカエルと再会したら、私たちの間で何か変化があるのだろうか・・・。


それは、当日にならないと誰にもわからないことだった。


ーフランス恋物語76に続くー

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