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小説家(自称)デビュー作            人生モラトリアム『奏』       ~prologue~

『ポイピーイ、ポイピーイ』
おはよう…
イソヒヨドリの歌声で目覚める朝。
ぼくはこの街が大好きだ。

比較的ここ最近再開発された街ではあるが
生活する上で何一つ困らない環境が整っていて
都心からも約30分とアクセスも抜群なのだ。
この街に住んでもう10年以上の月日が経ってしまった。
はじめの頃は『この街の良さ』を全く気が付かなかった。
奇麗に整備された街並みにも
季節ごとに咲き誇る花々にも
毎日朝を告げてくれる小鳥たちの歌声にも
この街の住人たちのやさしさにも…
今ではね、この街でずっと過ごしたいんだ。
大切な人と、大好きな街で、大切な作品たちとともに。

『この街の良さ』に気づくことが出来たきっかけは、きっと『病気』だ。
今は、そうやって前向きに考えることが出来ている。
今、こうして生き続けることが出来ていることは、奇跡に近いとさえ思っている。
もし…ぼくが大切な人たちに出会うことが出来ていなければ
大切な作品たちと出会うことが出来ていなければ…
おそらく6年前の今頃には、死を選んでいたと思っている。
きっと今頃、どこか遠くの別の世界で…
誰もいない、暗くて、静かで、自分や他人、体や心や魂の境界線もなく、
今や過去や未来といった時間の概念さえもない世界…
天国でも地獄でも、そのどちらでもない、そんな世界をさまよっていたのだろうな。

そう、この物語は、自分自身の経験を基にしたノンフィクションであり
自分だけの完全オリジナルな物語である。
過去作『人生モラトリアム』から1年以上経ってしまった。
人生モラトリアム『奏』を執筆したくなった理由はたくさんあるのだが
一つ目は、病気やケガが続き『書くこと』が出来なくなってしまってから
時間が経過し、やっと『書くこと』が出来るようになったため。
ここまで来るのに、本当に、大変だったな…

二つ目は、完全に自分のため。
ただの自己満足。
果てしない承認欲求を満たすため。
自分が確かに生きていたという『証』を残したいという目標達成のため。

三つ目は、過去の自分を肯定してあげるため。
決して病気になったりケガをして働けなくなって
今まで積み上げてきたモノ全てを失って
大切な人たちに迷惑をかけ続けてしまって
そんな自分が存在していること自体に罪を感じ
いつもいつだって
『消えてしまいたい』
『いなくなってしまいたい』
『朝、目が覚めたら、全く別の人間になっていて、全く別の世界を生きたい』
そんなことを心の底から本気で思い続けていた
こんな自分を、真正面から受け入れてあげるため。
そして病気が治らず苦しみが続いていたとしても
他人から見たらかわいそうで不幸で…
でも決して今自分は『不幸なんかではない』ということを証明するため。

そして最後の四つ目は、自分のように重度のうつ病(不安症、強迫症、パニック障害、不眠障害)や、難治性の腰椎椎間板ヘルニアを患ってしまい
一生付き合っていかなければならない方々に対して
何かの力になれたら、微力ながらも自分の経験がお役に立てたら、
生きることに対して数ミリでも希望を感じていただけたのなら…
そう思い、考えながら、執筆をしています。

たとえ誰にも読まれずに終わったとしても…
誰の心にも刺さらなかったとしても…
ぼくはぼくのため
そしてまだ見ぬ誰かのために書き続けたいと思っています。
いつか、この作品が一冊の本になることを夢見て…
今日からまた少しずつ執筆を続けていきます。

今年の桜も見事に堂々と咲き誇り、儚く散っていった。
その後、町中に色とりどりのつつじが咲き誇り
今はキンシバイが存在感を増している。
諸行無常…
そんな自然豊かな景色がぼくは大好きだ。

キンシバイの花言葉は『悲しみをとめる』『きらめき』『太陽の輝き』
過去を悔み苦しむ時間はもう終わった。
目の前にはまぶしいきらめきと太陽の輝きが
もうすぐ来るであろう夏を感じさせてくれている。

今日も素晴らしい1日になりますように…


さとっしー





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