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「人たらし」の極意 ~第二話~

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入社して1か月がたったころ、私は社長から飲みに誘われた。社長は「うちの会社どう思う? みんな大人しくない? 私はもっとみんなが主体性をもって仕事をしてほしいと思ってるんだけど、全然意見も言わないし、私が指示しないとまったく動かないんだよね。私は社員全員が経営者と同じ目線で仕事をしてほしいと思ってるの。何とかみんなの主体性を引き出すようにあなたからみんなに働きかけてくれない?」と数杯目のハイボールを飲みながら社長は語った。

私は「なるほど、社長と社員の間にはかなり大きな意識の違いがあるが、その違いに社長自身が気づいていないんだ」と思った。この間を取り持つのが自分の役割だと理解した。
そこでまずはスタッフの意見を聞こうと全員とコミュニケーションを取ることにした。すると案の定みんなはかなりストレスを貯めていることが分かった。聞けば以前社長の意見に反対した人がいたが、その人は社長から目をつけられて何をしても怒鳴られ、結局会社を辞めてしまった。そういう人をこれまでに何人か見てきたため、多くの社員は社長が怖くて口答えすることを止めてしまったのだと教えてくれた。

そのため会社には社長のいう事を素直に聞くフォロワータイプの人材しか残らず、自らリーダーシップを発揮できるタイプの人材がいなかったのだ。

それからまた1か月たち社長とMTGする機会があった。そこで私は社長に自分なりに気づいたことを伝えた。まずは自分がスタッフの聞き役に回り意見をまとめて社長に報告すること、そして社員の希望を少しずつ叶えていって会社への帰属意識を高めていくことを提案した。社長は「確かに、そうだね」と笑って答えたが、今思えば目だけが笑っていなかった。その意味をその時の私は理解することが出来なかった。

それから私はスタッフとのコミュニケーションをそれまで以上に取るようになった。自分のこれまでの経験を伝えて、仕事のやり方を教えたり、悩んでいることを解決できるようにアドバイスを行った。私は社員との関係性を深め、彼らも私を信頼してくれていることが伝わってきた。

「この会社が変わるかもしれない」

そんな期待を彼らがしていることが伝わってきて、私もこの会社の変革期に携われていることにやりがいを感じていた。

入社して3か月が経とうとしたときに社長に呼び出された。私は入社してから一つのプロジェクトを任されていて、その仕事の成果物を出した直後だった。社長は私が提出したレポートを指して「これ全然だめだね。いや~なんか期待外れだな」とこれまでとは全く違う態度で突然私の仕事をダメ出しした。

私も「すみません、初めての仕事だったので上手くできてないところはあると思います。言っていただければ修正します」と伝えると「いや、もういいよ。これは別の人にやってもらうから」と突然仕事を副社長に全部引き継ぐようにと言われた。

私はわけが分からず理由を聞いたが、社長は「いや、もういいって言ってんの。辞めろってことなの、それが分からないかな」と激しい口調で言われたので、私も感情的になり「ならいいです、辞めます」と言って、その場を後にした。

翌日荷物を取りに会社にいき、嫌々ながら最後社長に挨拶をすると、彼女は目も合わせずに「ああ、はい」とだけぶっきらぼうに返事をした。そしてエレベーターの前に向かうと副社長が追いかけてきた。そして副社長は「ごめんなさい、あなたが悪いのではないの。社長はあなたがスタッフと信頼関係を築いて、自分から社員が離れたことが気に入らなかったの。でもあなたの立場でそれをするのは当たり前だと思うし、会社のためにやってくれたことも分かってる。でも社長はそういう人なの」と言って謝罪をした。

こうして私は3か月で会社をクビになったのである。

第三話に続く

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