【保存版】抽象度を上げることと、曖昧にすることは別モノ|正しい抽象度の上げ方
いつも記事を読んでいただきありがとうございます。
今回は「正しい抽象度の上げ方」について解説します。
コーチングの大事な要素に「抽象度」という言葉があります。
特にゴール設定において大事な概念なのですが、この抽象度は分かるようで、しっかり理解しようとすると難しいため、間違った抽象度の上げ方をしている人が結構います。
今回は「正しい抽象度の上げ方」について詳しく解説します。
抽象度を上げるとはどういうことか?
コーチングでは「ゴール設定」をする際には
「現状の外側に、より抽象度の高いゴールを設定する」
ことを推奨しています。
ここで「現状の外側」「抽象度」という言葉が入っているため、最初のうちはこの言葉の感覚をつかむことが難しく感じるかもしれません。
「現状の外側」についてはこちらの記事を参照ください。
「抽象度」とは「Levels of abstraction」という、元々は分析哲学やコンピューターサイエンスの分野で使われていた言葉になります。
抽象度を上げるとは、その対象の物事を今見ているものよりも一つ二つ上に抽象化した状態を考えるということになります。
例えば抽象度を上げる例として、あなたが飼っている猫のタマを考えてみます。
飼い猫のタマ→猫→哺乳類→脊椎動物→動物→生物
のようにタマという限定された一匹の猫から、抽象度が上がっていくと、より多くの動物を含んだ概念に変わっていきます。
ここで抽象度に関して大事なことを2つお伝えします。
①抽象度が上がると網羅する対象の範囲が広がっていく
②抽象度が上がると情報量はだんだん少なくなっていく
①は一匹の猫である「タマ」という対象から、「哺乳類」あたりまで行くだけで、おそらく数千億の動物を対象にしていることになります。
つまり皆さんが「抽象度を上げたゴール」を設定するということは、網羅する対象範囲がどんどん大きくなっていくということになります。
またもう一つの要素である「情報量が少なくなっていく」とはどういうことでしょうか?
「タマ」の時には、タマを定義するためには「タマとは私の家で飼っている猫で、三毛で、オスで、タマのお母さんのハナから産まれて・・・」というタマの情報にプラスして猫の情報が必要になります。
一方で「哺乳類」まで抽象度が上がると、そういった「タマ」や「猫」の具体的な要素はそぎ落とされて「背骨がある動物の中で、卵で生まれてこなくて、お母さんのお腹の中である程度の大きさまで育ってから産まれてくる動物」のように定義することができます。
もちろん「タマ」を定義する際には「哺乳類」の情報も含まれていますので、抽象度が下がれば下がるほど情報量は多くなり、抽象度が上がれば上がるほど、情報量は少なくなっていくというわけです。
抽象度を上げることと曖昧にすることは違う
ここでコーチングのゴール設定に話しを戻します。
つまり、抽象度を上げたゴールを設定するとは
①対象範囲をより広く
②情報量はより少なく
していく必要があります。
仮に、抽象度を全く考慮せずにゴールを考えた時には
「私が好きな英語を使った仕事に就けて、趣味の海外旅行に毎年いけるようになりたい」
という内容だったとします。
これは個人的なことが多く含まれるゴール設定なので、抽象度でいうとそれほど高いわけではありません。
(誤解がないように補足ですが、ゴール設定はあくまで「個人的なもの」なので、どんなゴールを設定いただいてもかまいません。あくまで抽象度の説明のために高い低いと表現しています)
ではこのゴール設定の抽象度を上げてみましょう。
あるクライアントさんは下記のように考えてきてくれました。
「私とかかわるすべての人がやりがいのある仕事に就くことができ、自分がやりたいことが出来るようにしてあげたい」
いかがでしょうか?
先ほどの抽象度の定義でいうと「私とかかわるすべての人」となっているので「対象範囲を広げる」ことができていて、「英語」や「海外旅行」などの具体的な言葉がそぎ落とされているので「情報量は少なく」なっています。
一見良さそうな気もしますが、しかしここで大きな問題が新たに発生しています。それは
「やりがい」
「やりたいこと」
という新しい言葉を使っているということです。
他にも抽象度を上げるとよく出てくる言葉に「幸せ」とか「ワクワク」とか「イキイキ」という言葉もあります。
一見抽象度が上がっているので良さそうに思うかもしれませんが、こういった言葉の何が問題かというと「その言葉を定義していないで使っている」という点です。
先ほどのタマの例を思い出していただきたいのですが、抽象度が上がっていっても「哺乳類」や「脊椎動物」にはちゃんと定義がありました。
しかし「やりがい」「やりたいこと」「幸せ」「イキイキ」「ワクワク」には、日本語なので社会通念的な言葉の意味は備わっていますが、その人がどんな定義で使っているのかは曖昧なままです。
つまり抽象度を上げるというのは、抽象度が上がった状態を自分の中でしっかり定義(構造化)できなければ、ただ曖昧にしただけということになってしまうのです。
これはゴール設定できたようで、実は曖昧にしただけなので、ゴールとしては不確かな状態にしてしまったことになります。つまりゴールとしての効力が弱いということになります。
【注】
本来「抽象度」が高い思考ができるということは、より物事の本質が見えてくるということで、その物事に対する理解が今以上に進むということになります。そのため他の誰よりもその物事に対して見えている世界が広く、深くなるため「とても強い興味」が生まれます。その力が本質的なゴール達成に向かわせる原動力(推進力|衝動)になっているのです。
研究者が新しい事実を発見できるのも、優秀な経営者がイノベーションを起こせるのも、スポーツ選手が金メダルを取れるのも、すべて高い抽象思考ができているからになります。
言葉の定義(構図)を考える
では正しく抽象度を上げるためにはどうしたらいいのでしょうか?
まず「対象範囲を広げる」というところは、情報量を正しく減らすことが出来れば、自然と対象範囲は広がりますので、いったん置いておきます。
では具体的に情報量を減らす方法をお伝えしていきます。
とは言え、難しく考える必要はありません。
「ゴールは個人的なものである」と先ほどもお伝えした通り、誰かに話して誰かから認めてもらわなければいけないものではありません。
自分が納得感ある状態になっていることが一番大事なので、自分の中だけで定義をすることが出来れば問題ありません。
初期のゴール設定と抽象度を上げたゴール設定を比較してみましょう。
■初期のゴール設定
私が好きな英語を使った仕事に就けて、趣味の海外旅行に毎年いけるようになりたい
■抽象度を上げたゴール設定
私とかかわるすべての人がやりがいのある仕事に就くことができ、自分がやりたいことが出来るようにしてあげたい
初期の文章からは「好き」という言葉と「趣味」という言葉がキーワードになりそうです。
つまり後半の文章にある「やりがい」には「好き」であることが含まれているということです。
さらにここからは少し想像で付け加えますが、おそらく「好き」なら何でもいいわけではないはずです。
例えばですが、自分が「好き」な英語を使った仕事で、それが誰かの役に立つことが出来て初めてその仕事が「やりがい」に繋がるのではないでしょうか。
つまりこの方の「やりがいのある仕事」とは「自分が大好きなことで、誰かが喜んでくれる仕事」と定義することが出来そうです。
また「趣味」ですが、初期の文章では「海外旅行を毎年いけるよになりたい」とありますので後半の文章にある「やりたいことが出来るように」は「自分が心からやりたいと思っていることを、継続的にできるようにお金と時間を使える状態」と定義することが出来そうです。
そうすると、抽象度を上げたゴールは以下のように書き換えることが出来ます。
私とかかわるすべての人が「自分が大好きなことで、誰かが喜んでくれる」仕事に就くことができ、自分が「心からやりたいと思っていることを継続的にできるようにお金や時間が使える状態」にしてあげたい。
いかがでしょうか?
言葉としては長くなってはいますが「英語」や「海外旅行」のような具体的な部分がそぎ落とされ、情報量としては少なくなっています。
そして情報量が少なくなった結果、より多くの人を対象にすることが出来るようになりました。
さらに欲を言えば、もう一つくらい抽象度を上げてもいいかもしれません。
先ほど出来上がったゴール設定は「仕事」と「趣味」という領域になっているので、もう少し具体的なところをそぎ落とせそうです。
要素としては「自分が大好きなこと」「誰かを喜ばせること」「時間とお金に制約がないこと」が抽出できそうなので以下のようにゴール設定を変えることが出来るかもしれません。
私とかかわるすべての人が、時間やお金に制約を受けずに、自分が大好きなことをして誰かを喜ばせることが出来たり、人生のゴールを達成できるようにしてあげたい。
「人生のゴールを達成できる」と少し飛躍させたところもありますが、「趣味」以外にも人生には「家族」や「健康」などのゴールもありますので、それも網羅できるように抽象度を上げた文章にしてみました。
これであれば、自分の中で納得感のある抽象度を上げたゴール設定になったのではないかと思います。
まとめ
いかがでしょうか?
今回は「正しい抽象度の上げ方」について解説しました。
自分のゴールを設定するときに、おそらく抽象度を上げようとすると、多くの人が「曖昧」な表現を知らず知らず使ってしまいます。
本当に「正しく抽象度を上げたゴール」を設定すると、対象範囲も広がるし、具体性もそぎ落とされていくので、ゴールを達成した状態の具体的な輪郭は見えなくなっていきます。
しかしそれは全くかまいません。
むしろ輪郭がはっきりしたゴールは「現状の内側」のゴールの可能性が高いので、その場合はさらに「現状の外側」にゴールを設定しなおさなければなりません。
しかし、ゴール設定で使っている言葉の定義が自分でもよくわからないまま使用している場合は、これは抽象度を上げたのではなく、単に曖昧な言葉を使って対象をぼやかしているだけなので、抽象度を上げたことにはなりません。
その場合は「ゴール設定」の力が弱くなるため、達成するためのエネルギーが生まれてきません。
自分が使っている言葉の定義を定めることで、より「ゴール設定」の力を利用することが出来ますので、ぜひ皆さんのゴールを正しく抽象度を高めた状態で設定していただければと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。もし今回の記事が参考になったと思っていただけましたら「スキ」「フォロー」いただけるととても励みになります!!
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