記事一覧
台風の予感がするころに
台風の予感がするころ、滝や水辺を訪れることが多かった。
水を知りたかったのだろう。
日本列島が雨雲に覆われて、滲み霞む光景を想像した。
流れ落ちる水に、乾いた土にはねる水に、畏敬の念を感じた。
人は水だと思った。
水の記憶を呼び覚ます旅に出たい。
モノラル・ひとつの/桜の梢から水滴がゆっくりと落ちていく
桜の梢から水滴がゆっくりと落ちていく
別れを惜しむように地上へと向かう
降る雨とまざり地面に沁み込む
花びらが風に吹かれ地に落ちる
左右にゆれながら舞うように
花びらは老いた桜の根元をおおう
梢から蕾が生まれる
蕾は花を咲かせる
この木の中にすべてがある
形を変え、色を変えながら
一つのものから分かれ
また一つのものに帰っていく
いつの日にか、私もまた
モノラル・ひとつの/ゆっくりと重なるものを数える
作成した小冊子の紹介をしています。
見開きを一枚の写真・一つの詩で綴りました。
ゆっくりと重なるものを数える
初雪
漉かれた和紙
読まれずにおかれた本
隠された思い
言葉
傷
散る花びら
思いでの時間
二つの影
後悔
モノラル・ひとつの/初冬の光が美しく木々を包み込む
作成した小冊子の紹介をしています。
見開きを一枚の写真・一つの詩で綴りました。
初冬の光が美しく木々を包み込む。
梢が光に溶けて空に消える。
刻々と変化する朝の光と、
木々や草花を通して、
瞬間、瞬間に出会っていく。
モノラル・ひとつの/冬の訪れを告げる雨が降っている
作成した小冊子の紹介をしています。
見開きを一枚の写真・一つの詩で綴りました。
冬の訪れを告げる雨が降っている
逡巡しながらも季節は進む
変わらないものは何もない
大きな流れの中で、無限に変化する世界を、
言葉で説明することは出来ない
言葉を発した一瞬に世界は硬直する
言葉ではなく、五感を超えて世界と出会いたい
モノラル・ひとつの/私が、楽しんでいたとき
作成した小冊子の紹介をしています。
見開きを一枚の写真・一つの詩で綴りました。
私が、楽しんでいたとき、
私は、楽しめなかった。
私を、楽しめるようになって、
私は、楽しい。
モノラル・ひとつの/初雪の降る日
作成した小冊子の紹介をしています。
見開きを一枚の写真・一つの詩で綴りました。
初雪の降る日
部屋の外に明るさの気配がする
輝く朝露
枝にさす光
ルーフに響く水音
風に流れる雪
雪を踏みしめる感覚
白い息
待ち望んだ日
蓮との再会
炎天下の昼日、強い光に洗われて蓮の花が咲いていた。
時折強い風が吹き、雲を呼んだ。
葉がざわめき、花がしなやかに傾ぐ。
花の美しさと出会ったと思った。
とても幸せな時間。
このまま蓮畑に突っ伏して永遠の眠りに落ちたいと思った。
モノラル・ひとつの/昨夜からの雪が降り続いている
作成した小冊子の紹介をしています。
見開きを一枚の写真・一つの詩で綴りました。
昨夜からの雪が降り続いている
積もることはなく降っては溶けていく
一片の雪
ふわふわと舞い、結晶となり、静かに消えていく
私は雪のように静かに消えていくことができるだろうか
覚めない夢を見たい
夢から覚めずにゆっくりと消えていきたい
モノラル・ひとつの/鈍色の空に冬の梢が滲む
作成した小冊子の紹介をしています。
見開きを一枚の写真・一つの詩で綴りました。
鈍色の空に冬の梢が滲む
鉄道のきしむ音、水の濁り
旅に出たいと思った
寒さの果てしない町へ
今年着ることのなかったコートを想う
背を丸めて歩きたい
襟を立て、白い息を吐きながら
キラキラと光る氷の道を行こう
細道の先に海の気配を感じたら
駆け出す前に大きなため息をつこう
忘れ去ることができない心を
永遠に凍てさせ
モノローグ・ひとつの / モノラル
作成した小冊子の紹介をしています。
見開きを一枚の写真・一つの詩で綴りました。
モノラル
一つの
一つの音
一つの色
一本のレール
一人の時
モノローグ
モノローグの紡ぐ言葉のように
写真を紡いでみたい
行間から言葉が溶けだすように
ため息と薄明の希望を
見えているものは見せてくれているものでもある。
日々のためいきが覆い隠される薄暮に、草花のすれ合う音が聞こえる。
闇に溶けていく最後の光で写しとめる。
長田 弘が、「みえてはいるが誰れもみていないものをみえるようにするのが、詩だ」という。
クレーは、「芸術は見えるものを再現するのではなくて、見えるようにするのである」と語る。
私からの意志だけでは決して得ることのできない光景がある。
見えているものは見せてくれているものでもある。
モノラル・ひとつの プロローグ
毎年梅雨の時期に大和郡山のとほんさんでイラスタレーターの青豆さんと二人展を開催しています。今年で5回目になります。
その展示に向けて小冊子を作成しています。今回は昨年の少し苦しい状態から、心身が上向きになって来た時の写真が多く、少しすっきりとした感じに仕上がっています。
ページごとに紹介していきますので、よければご覧ください。
モノラル・ひとつの プロローグ