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蟻を見つめていた頃

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20年前に書いたエッセイ。一部加筆修正。 ★は2017年以降、新たに書き下ろしたエッセイ。
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2017年11月の記事一覧

★学校は、なぜ、ブラック職場なのか

★学校は、なぜ、ブラック職場なのか

 最近、教師の仕事がブラックであることが連日報道されている。先日の新聞には教師の労働時間に上限規制を設けるべきという中教審の意見が掲載されていた。

 教師の給料にあらかじめ残業代が支払われていることは余り知られていない。1971年に「公立学校教育職員の給与等に関する特別措置法」が制定され、一律、給与の4%が支給されることになった。田中角栄内閣の頃ではないか。4%の根拠は、40年以上も前の残業時間

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★同調圧力からの脱出

★同調圧力からの脱出

 日本人は、行動を起こす前に、まず周りの人の顔色を伺う。他にも同意見で同じ行動をする人がいると安心して一歩を踏み出す。そうでないと、たとえ自分がやりたいことであっても行動を起こすことを躊躇する。

 これが、いわゆる同調圧力である。「赤信号みんなで渡れば怖くない」という交通標語のパロディにもそれが現れている。

 安全を担保すると言うスタンスから考えれば、同調圧力も悪いことばかりではない。自分だけ

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精神的成長のレベル(スコトーマ)

精神的成長のレベル(スコトーマ)

 人間は誰しも一年に一つずつ歳をとる。子どもから成人になりやがては老いを迎える。社会的には年齢を重ねるごとに責任が重くなる反面、様々な権利も取得できる仕組みになっている。しかし、精神的な成長は必ずしも肉体的成長には比例しない。年齢的には成人でも精神的には大人になりきれないこともある。そんな人が最近増えてはいないだろうか。

 精神的成長のレベル(以降心のレベル)は、目に見えにくい。ペーパーテストを

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★哲学フィルター

★哲学フィルター

 人はそれぞれ、個人の哲学を持って生きている。哲学とは、自身の、善悪、好き嫌い、行動するしないの判断基準である。あるいは、「こだわり」と言っても良い。

 日々様々に身の回りの起こる出来事、他人から聞く話を、私たちは、この「個人哲学フィルター」にかけて自動的に分類している。

 政治の出来事、時事問題、他人からの相談事、平凡な日常に起こる出来事。経験のあることなら、おおむね、悩むことがなく即座に判

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見えない心

見えない心

 人間の心はよく氷山に例えられる。我々が普段学校や会社で他人に接していて見えている部分は、氷山でいうと海面上に出ているほんの一部分である。そして、本当は海面下に、その何倍もの目に見えない部分が存在する。だから、本当にその人を理解しようと思うなら、「目に見えない部分を見ようとする努力」が必要になる。

 最近の日本の社会を見渡してみると、どうも海面上に出た氷山の一角のみを見て、その人全体を評価しよう

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自分を見つめる勇気

自分を見つめる勇気

 「あなたはどんな人ですか?」と質問されたら即座に答えが浮かぶだろうか。自分の長所と短所をきちんと説明できるだろうか。他人のこととなるとスラスラしゃべれるのに、自分のこととなるとそう簡単にはいかないものである。

 誰しも自分にはあまり自信がない。されどその自信のなさを他人には悟られたくないという矛盾した思いをもっている。その思いは年を取るにつれ強くなる。30、40と年を重ねるとともに、周囲の期待

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教師の力量

教師の力量

 子どもの能力を評価するのが難しいように、教師の力量もなかなか量りにくいものである。ある一部の子どもにとってよい先生がクラスの子ども全員にとってよいかどうかは分からない。

 比喩的な言い方になるが、私は、教師の力量は、その先生が心の中に持っている「引き出しの数」で決まると思う。その「心の引き出しの数」は、教師が仕事に必要な指導のための手段、方法を幾つ持っているかで決まる。様々なタイプの子どもに対

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マインドコントロール

マインドコントロール

 (今から約20年前)オウム真理教事件から「マインドコントロール」なる言葉が一躍脚光を浴びるようになった。人の善悪の判断さえも狂わせ殺人をも肯定させてしまう恐ろしい行為のように思える。しかし、マインドコントロールは宗教団体のような特殊な人達だけが使うものではない。実は私達の身の回りでごく自然に行われているのである。

 私達は毎日をいつも自信に溢れて生活しているわけではない。仕事、子育て、病気、様

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★「変人」のススメ ~電子出版あとがき~

★「変人」のススメ ~電子出版あとがき~

 私は、ここ、noteに掲載したエッセイをKindleから電子書籍として出版しようと考えている。以下はその際のあとがきとして書いた文章である。

 1995年。29歳の私は盲学校の教師をしていた。しかし、普通の平凡な教師ではなく、少々、変わった環境の中にいた。

 当時の盲学校には管理職よりも幅をきかせていた主のような先輩教師Mがたた。M教諭には全盲の視覚障害があった。当時、オウム真理教なる新興宗

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豊かさの追求によって失ったもの

豊かさの追求によって失ったもの

 戦後50年(現在は70年)、空襲の爆撃で何にもなくなった焼け跡から、日本は目を見張るばかりの復興を遂げた。昭和30年代後半から40年代にかけての高度経済成長を経て、日本はアジア諸国随一の経済大国、世界的にも豊かな国の代名詞になった。物質的には確かに豊かになった日本。しかし、そこに暮らす人々の心は、逆に貧しくなってはいないだろうか。

 『病院で死ぬということ』の著者で、ホスピスの医師である山崎章

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本当の民主主義

本当の民主主義

 (1996年)4月28日、テレビ朝日「がん戦争13」を見た。今回のテーマは、最近しばしば耳にするようになった、「インフォームドコンセント」であった。日本語にすると「説明と同意」である。ゲストの永六輔氏の言葉が印象的だった。「『インフォームドコンセント』が日本語になって、おじいちゃん、おばあちゃんにも分かるようにならないと日本には定着しないでしょう。かつてボランティアがそうであったように。」

 

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心の余裕3

心の余裕3

 東京を車で走っていると、周りの車の乱暴な運転に肝を冷やすことが度々ある。我先に一台でも前に出ようとする車。路肩と車の僅かな隙間をすり抜けていく原付オートバイ。「狭い日本そんなに急いでどこへいく。」一昔前の交通安全標語が頭をよぎる。

 私は昨年の夏カナダを旅した。バンクーバーからカルガリーまでの往復、約3500㎞。ほぼ日本を縦断する距離をレンタカーで走った。カナダのドライバーのマナーはとても良か

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人間性を育む教育

人間性を育む教育

 私自身もまだまだ若輩者(当時は29歳)で、偉そうに言える立場ではないのだが、最近、社会人になりたての若者達と接していると、その考え方の幼稚さに驚くことがある。

 子どもの数の減少により、昨今の教員採用の厳しさには目を見張るものがある。その難関をくぐり抜けてきた若者、特に、大学卒業と同時に採用になる方々は、飛び抜けて優秀なはずである。確かに、知識は豊富で秀才には間違いない。しかし、話をしていて感

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「想像力」を育む教育

「想像力」を育む教育

 「人が生きていく上で最も大切なことを一つ挙げなさい。」と質問されたら何と答えるだろうか。私は迷わず「想像力」を挙げる。今日の日本、いや世界を見渡してみると、想像力の欠如による悲劇があちこちで起こっている。戦争、テロ、殺人、暴力、いじめ。相手の気持ちを想像できたらとてもできることではない。国会のセンセイたちや霞ヶ関の官僚の方々。国民の気持ちを想像できたら、とてもあんなことを言ったりやったりできるは

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