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見えない心

 人間の心はよく氷山に例えられる。我々が普段学校や会社で他人に接していて見えている部分は、氷山でいうと海面上に出ているほんの一部分である。そして、本当は海面下に、その何倍もの目に見えない部分が存在する。だから、本当にその人を理解しようと思うなら、「目に見えない部分を見ようとする努力」が必要になる。

 最近の日本の社会を見渡してみると、どうも海面上に出た氷山の一角のみを見て、その人全体を評価しようとしたり、理解してしまったかのような錯覚をしている人が増えているように思われる。高校や大学の入学試験、会社や公務員の採用試験、ペーパーテストで点数に表れるのは、その人間のほんの一部分のみである。しかし、ペーパーテストによって確実に人間の価値や人生の選択まで決められてしまっているのが現実である。

 まず人生のスタートである学校の中でさえ、教師が子どもを評価する時には、どうしても見える部分の評価に偏ってしまう。その結果、勉強のできる生活態度のよい子が優等生で、成績が悪く問題行動を起こす子が劣等生という構図ができ上がる。しかし、その歪みがいじめによる自殺や、不登校児の増加に表れていることを忘れてはならない。

 目に見えない人の心の奥を覗くためには、それなりの勉強とテクニックが必要である。まず、心を覗こうとする人、つまりカウンセラーはバランスの取れた人格を持っていなければならない。そして、カウンセラーは常に相手の立場に立って物を考える必要がある。言いたい事を極力我慢して相手の話しに耳を傾ける。その話しの中から、相手は何につまずいて悩んでいるのかを見抜き、適切なアドバイスを与える。しかし、決して相手に見返りを求めてはいけない。言葉で言うと簡単だが、実行することはとても難しい。

★学校にスクールカウンセラーが置かれるようになって久しい。先日、カウンセラーをしている方が「カウンセラーなど、『人の心』に興味を持つ人間は、どこか屈折している人が多いですよ」という話をしていた。

 確かに、私が知っているカウンセラーやそれを目指す学生には、元気はつらつタイプは少なく、内向的オタク系が多い。オタク系カウンセラーは、子どもの心に寄り添うことはできるかもしれないが、自身以上の明るい人間、前向きな考え方を教えることは難しいのではと思う。

 教師もカウンセラーも、今の自分に満足することなく、海中の氷山に目を向け、常に高みを目指す心構えが必要である。

学校教育には矛盾がいっぱい!