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#102 海外のラーメン屋さんモヤモヤ

海外の人に日本食を紹介する時、どんな料理を食べてもらうだろうか。時代によって差異があるように思う。僕が海外営業の仕事を始めた2010年前後は、やはり、「寿司・天ぷら・しゃぶしゃぶ」だった。
 しかし今は違う。多くの外国人が一番興味のある日本食、それはラーメンだ。昔は Chinese noodle などと言っていたが、今はほぼ世界中で Ramen で通じるようだ。



モヤモヤはどこから?

今日は具体的に、フィンランドとドイツで行った日本食あるいはラーメン屋さんを紹介するので、お店に迷惑がかからないよう、最初にことわっておく。料理はどちらの店も素晴らしい。今日「モヤモヤ」として取り上げたいのは、お客さんの方で、食文化の違いからくるモヤモヤだ。

このことに最初に気づいたのは、フィンランドのヘルシンキにある「かもめ食堂」に行った時のことだ。先の投稿「#46 かもめ食堂 in ヘルシンキ」で詳しく書いたので、ぜひ読んでいただきたい。

「かもめ食堂」でのモヤモヤ

この店では、映画にも登場した「トナカイのおにぎり」や焼き鮭定食、とんかつ定食といったメニューが人気だが、実はラーメンもある。僕が一人で食事をしていた時、ヨーロッパ人男性4人組(全員同じシンポジウムに来ていた知り合いだ)が入ってきて、3人はカレーに鶏の唐揚げ、1人は味噌ラーメンを注文した。いい選択だったと思う。そこで、

はい、miso ramen ですね〜

とラーメンが最初に出てきたのだが、この後何が起きるか、想像がつくだろうか?味噌ラーメンを頼んだ彼は、残りの3人のカレーが出てくるまで15分ほど食べずに待ち、全員の料理が揃ってから意気揚々と食べ始めた。ラーメンはすでにのびきっていて、スープもぬるくなっていたに違いない。

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「Ramen Jun Red」でのモヤモヤ

次は、ドイツのフランクフルトにあるラーメン店「Ramen Jun Red」。大変な人気店で、行ったのは平日のランチだったが、予約でほとんど埋まっていて、入店するまでに15分ほど待った。

やっとカウンターが一席空いたので通されると、隣はドイツ人と思われる女性二人組で、「味噌唐揚げラーメン」を注文していた。僕は「味噌デラックスラーメン」を頼んだ(下写真)。ちなみに値段は18ユーロ、日本円だと約2,800円だ。スープもチャーシューも味玉も、日本で食べる味と同じだった。

日本酒や焼酎などもいろいろある
「味噌デラックスラーメン」〜 チャーシュー、味玉、コーン、バター入り

やはり、「かもめ食堂」と同じことが起きていた。「Jun Red」はラーメン店なので、お隣二人の「味噌唐揚げラーメン」はちゃんと同時に出している。片方を待っている間にもう片方の麺がのびることはない。しかし、二人にとってラーメンは「日本食の一種」で、会話を楽しみながら食事する対象だ。お寿司を食べる時と何ら変わりはない。

つまり、ひたすら話して盛り上がりながら、時々麺を箸で上げ、レンゲに乗せて食べている。後から行った僕が帰る頃にも半分も食べておらず、麺がのびきっているのは見ただけで分かる。ああ残念……日本のうるさいラーメン屋の主人なら、「黙ってうまいうちに食べろ!」と怒鳴りそうだ。

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あつあつのものは食べない

大まかに言って、ヨーロッパには「あつあつのものを食べる」という習慣はない。ドイツは特にそうで、一般家庭では朝食と夕食は冷たいもの(ハムやチーズとパンなど)で済ませる人が多い。街中のパン屋ではチーズやハム、ローストビーフなどをはさんだサンドイッチが多く売られているが、温めてもらうという感覚もサービスもない。自然と、「ラーメンが出てきたら、熱いうちに食べる」という理解も感覚もない。これは食文化の違いなので、仕方がない。

ヨーロッパで麺類に関して、「コシ」や「歯ごたえ」といった要素を理解しているのは、イタリア人だけと思っていい。上で「かもめ食堂」で味噌ラーメンを注文した彼は実はオーストリアのウイーン出身で、ある日イタリア人とパスタのアルデンテについて熱い議論をしていた。
 イタリア人が、「絶妙なアルデンテの状態で食べるパスタこそパスタだ」と主張するのに対して、彼は「あんなのは調理が未完了のパスタだ!」と一蹴し、「パスタなんて、鍋に入れて茹でている間にシャワーを浴びて、上がってきてから食べればいい」と言って周囲を呆れさせた。麺類に対するこだわりがないのだろう。

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文化の違いは尊重するが、紹介はしたい

僕が欧米人を日本式のラーメン屋に連れて行くなら、強制はしないが「日本の食文化」を同時に紹介したい。それは、ラーメンは料理人が一番美味しい麺の茹で具合を見計らって出しているので、出てきたらおしゃべりをやめて黙々と食べるという文化だ。食べ終わったら長居せずに出る、という文化を「江戸っ子気質」などと結びつけて説明しても楽しそうだ。
 会話を楽しみながらゆっくり食べる欧米文化も尊重するが、料理そのものをベストな状態で楽しむ日本の食文化も、誇りを持って紹介したい。

今日もお読みくださって、ありがとうございました🍜
(2023年12月17日)

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