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#46 かもめ食堂 in ヘルシンキ🇫🇮

まだ20代だった1998年、修士論文のための調査で、オーストラリアの大学の学部の授業を30分ほど使わせてもらったことがあります。英語ネイティブの被験者が100人くらい必要という希望に、指導教官の先生が快く応えてくれたのです。調査用紙を集めると、特に感想は求めていなかったのですが、こんなコメントが書かれていました。

分かりやすいプレゼンと、面白い調査でした。
でも、笑顔があるともっと素敵です ^^

オーストラリア人に指摘されたこと

そこには笑顔のマークも添えられていました。25年後、同じことを感じました。



フィンランドは何でも高い!

昨日の投稿でも書きましたが、AI 関連の研究会に参加するため、今はフィンランドのヘルシンキに来ています。毎日の昼食は参加費に含まれているのですが、夕食は含まれないため、自分でどうにかすることになります。
 フィンランドの物価はドイツに比べてもさらに高く、早々に外食はあきらめて、スーパーで買ってきたお惣菜をホテルで温めて食べることにしました。長期滞在する人も多いようで、部屋に電子レンジがあるのが助かりました。

しかし3日もそれを続けていると、さすがに飽きてきました。残り日程を精力的にこなすためにも、少し充電ということで、周囲のレストランを探したところ、「そういえば昔から来たかった」レストランを思い出したのです。日本食レストランの「かもめ食堂」です。

水色の看板が目印〜通りに面した側はガラス張りなので中の様子がよく分かる

かもめ食堂

みなさんは映画『かもめ食堂』をご存知ですか?群ようこさん原作で2006年に公開された、フィンランド、ヘルシンキを舞台にした小林聡美さん主演の映画です。公開後17年が経っていますが、オーナー変更を経て、今も映画の世界そのままに、「Ravintola KAMOME〜かもめ食堂」として営業しています。

映画の紹介は上のサイトにお任せするとして、音楽業界の仕事で北欧にちょくちょく来てフィンランドに魅力を感じていた僕は、この映画がすっかり好きになってしまい、いつか「かもめ食堂」に行きたいと思っていました。
 そんな「かもめ食堂」が今は徒歩10分の距離にある!調べると、他のレストランよりずっと良心的な値段で日本食が食べられると知り、研究会プログラムの後に出かけました。レストランの紹介は、次のサイトが詳しいです。

大切に守られた空間

店に入ると、一応遠慮して(日本人に見えても中国や韓国の方であることも多いので)英語で「この席、座っていいですか?」と聞きます。でもすぐに「日本の方ですよね、お水どうぞ」と声をかけて頂きました。見回すと、その時はお店のスタッフもお客さんも全員日本人!映画『かもめ食堂』のポスターも貼られていて、この場所が大切にされてきたことが分かりました。

映画『かもめ食堂』のポスターに出演者のサイン(右上)
グッズもいろいろと売られています

ほとんどがこの店に思い入れがあって来たお客様と思われ、デザートとして出された名物のシナモンロールを丁寧に写真に撮って、持って来た容器に入れて大切に持ち帰った一人旅の女性、何か物思いにふけりながら、食べ終わった後も長い間席に座っていた男性一人客、その後入って来た新婚旅行?と思しきカップル。公開から17年も経っても、この場所は人をひきつけるのだなあと感動しました。でも、一つだけ「?」と思ったことがあります。


感じた一つの疑問

それは、なぜか上で紹介した日本人観光客の表情がさえない、もっと言うと、あまり「楽しそうでない」ことでした。あこがれの「かもめ食堂」に来て、映画の世界に入って、写真も撮って満足したはずなのに、なぜか街を歩いている現地の人に比べて、笑顔がないのです。なぜ?という疑問がふくらんでいきました。

そして、「自分はどうなのだろう」と思って、席の横にある鏡を見て、はっとしました。自分も同じ顔をしていたのです。こんなに楽しんでいるのに、ちっとも楽しそうに見えませんでした。25年前に「笑顔があるともっと素敵です ^^」と書かれた時から変わっていないんんだな、と思いました。ということは、無表情に見えたあの人もこの人も、内面では幸せいっぱいだったのかもしれないです。

誰のための笑顔?

内面で幸せなら、本当はそれでいいのだと思います。でも、特に日本人は「なぜ笑わないの?どうかしたの?」と海外の人に思われることが多いとも聞きます。音楽業界にいた時は、コンクールなどで、「なぜ日本人奏者は、楽しくなさそうな顔で演奏するの?楽しくないなら、やめればいいのに」とはっきり言われたこともあります。さらに、バスの運転手がニコニコして運転していると、営業所に「運転手が真面目に仕事をしていない!」という苦情が入ったという悲しいニュースも耳にしました。

口角を上げて微笑むと、いわゆる「幸せホルモン」が分泌されやすくなることが、ある程度科学的に分かっているようです。落ち込んでいる時に無理やり微笑む必要はないと思いますが、内面で幸せな時は遠慮なく微笑んでホルモンの分泌を助けて、同時に周囲にいる人にも楽しさを分けてあげる方がやっぱりいいのではないか、と改めて思いました。思えば、ヨーロッパへ来て何より心地いいのは、市役所でもスーパーでも、多くの人が笑顔で接してくれることです。


最後は笑顔で

帰り際、このまま帰ったら「さっきの日本人も楽しくなさそうだったね」と思われてはよくないと思い、お店の方二人とお話ししました。映画の中の小林聡美さんが飛び出して来たかと思うような一人の方は、「今週は雨が降ったので、キノコが楽しみなんですよ」と教えてくれました。映画では最後の方にキノコが登場して、ファンの間では謎のシーンなのですが、その謎が少し解けた気がしました。もう一人の方は、「かもめ食堂」での仕事を始めたばかりだと話してくれました。お二人とも、素敵な笑顔でした。

よせがきノート〜日本語と韓国語が多かったですが、英語もちらほら
中身も紹介したかったのですが、みなさん実名を残されているので……

他人の無表情さを無意識に批判してしまっていた自分も同じ顔で、それはおそらく25年間変わっておらず、でもそのことに気づくことができた、そんな「かもめ食堂」での宝物な時間でした。レストランなので、食べたものの写真を載せておきます。お肉も美味しかったですが、滋味あふれる野菜が最高でした。

その日のスペシャル、牛タンカレー
ヨーロッパへ来てはじめて食べた日本式カレーでした

ドイツでもカレーを作ってみようかな、と思います。トッピングはもちろんソーセージだな。

今日もお読みくださって、ありがとうございました🍄
(2023年8月30日)

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