さら@ライター

ライターです。心理カウンセリングやコーチングの仕事もしています。「書く」よりも「聞く」…

さら@ライター

ライターです。心理カウンセリングやコーチングの仕事もしています。「書く」よりも「聞く」が多めです。 大阪市在住/ブックライター・公認心理師/上阪徹ブックライター塾11期/さとゆみBW道場(大阪)/ 記事執筆・構成/ 実用書 / 児童書 / 教育 / 心理支援 / 自己啓発 /

最近の記事

育てる

 ベランダで育てているプチトマト。今年3個目の実が熟れた。しわ一つなくピチッと張った赤が、日差しを跳ね返す。まばゆい。  ビー玉ほどの実を、そっとつまんだ。こんなに小さいのに、指先にずっしりとした重み。茎とヘタが強く手を結んでいて、離れない。思わず気持ちが揺らいでしまったけど、グッと指先の力を強めて、もぎとった。  収穫。うれしい。  実が熟すまで育てるのは、楽ではない。目をかけ、気にかけ、水もかけて、栄養はかかさず。時間も思いも、注がないと健やかには育ちにくい。  それは

    • 甘える

       日曜、15時すぎ。大阪メトロ淀屋橋駅の改札へ向かう、狭くて急な階段を、一人のママがよたよたと降りていた。厚みが2〜3cmほどのサンダル。ロング丈の、デニムのワンピース。やや前かがみになった背中。前腕にぐっと筋が浮かぶ。抱えているのは、幼子を乗せたベビーカー。エスカレーターもエレベーターもない階段を、そのママはベビーカーごと降りようとしていた。  ちょうどバラ園が見ごろで、中央公会堂ではビールイベント。雲一つない晴天の中之島公園は、大人も子どもも、たくさんの人。頭上に広がる

      • ヤルキスイッチ

         コーチングをしていると、しばしば 「自分のヤル気スイッチを見つけたいです!」 と、お題をいただくことがある。 「やらなきゃいけないのは、わかっている。でも、なかなか手を付けられずにいる。それをどうにかしたいんです。」  わかります。コーチのお役目を承ってはおりますが、斯く言う私も同じです。わかってはいるけど、やれずにいること、ありますよね……。  お話を伺っていると、どうも相談者さんの表情がさえない。口では「やりたい」とおっしゃるけれど、全身から「やりたくない〜〜〜」

        • なぞとき

           大阪メトロで、謎解きのイベントが開催されている。期間は今月末まで。息子氏のたっての希望で、昨日、家族で参加した。  率直な感想をいうと、「難しかった」。なのに、「すごく楽しかった」。謎解きは、一見矛盾するような感情を同時に抱く。それが、毎回、とても面白く感じる。  「わからない」ことは、ストレスだ。嫌な気持ちになってやる気をなくす。しかし、わからないなりにも、少しずつ「わかってくる」と、とたんに気持ちが軽くなって、楽しくなる。  「わからない」は不快だけど、「わかる」の

          本を出す

          「シャープさん」こと山本隆博さんと、「さとゆみさん」こと佐藤友美さんの対談イベントに、オンライン参加した。  我ながら、雑な言い方で苦笑してしまうが、もしこのイベントを視聴した感想を尋ねられたら 「サムライの会話、聞いているみたいだった」 と言いたい。  サムライの会話をリアルに聞いたことは、ないけど。  刀を使ったことのある人。日々刀を振ってきて、人を斬ったこともある。刀のずしりとした重みも、骨肉を断ちつつ刀が押し止められる感覚も、自分にもふりかかる血の色も、みんな経

          しっかり休む

           2週間ほど、ものすごい体調不良がつづいた。咳がおさまらない。息をするだけで、胸のあたりがムズムズして、反射的に咳き込む。まるで筋トレで追い込んだみたいに、腹筋がギュッと存在感を示し続ける。このまま咳だけでムキムキのシックスパックが完成するんじゃないかと思ったほどだ。  興味深いのは、不調の期間が、ちょうど土用の期間だったこと。「土用の丑の日」で夏の土用が知られているけれど、土用は年4回、春・夏・秋・冬それぞれにある。まさに春土用中に、不調が起きたのだ。  「風邪は、次の

          飴ちゃん

           大阪のオバチャン、いつも飴ちゃん持っている説。ある調査でも、半数を超えるオバチャンが飴ちゃんを持っている、という結果だったとか。実はわたしも、何度かオバチャンに飴ちゃんをもらったことがある。感動した。そして正直、困惑もした。  親切心からくださっていることは、十分すぎるほど伝わる。お気持ちはほんとうにありがたいのだ。けれど、当時は飴を舐める習慣がないどころか、飴が苦手だった。オバチャンの親切心はすごく嬉しかったけれど、食べられないものをいただくことに、ちょっと申し訳なさを

          いのち

           母は、誕生日の前日に亡くなった。  見たかった桜も、楽しみにしていた東京オリンピックも、目にすることなく彼岸へ行った。  がんに罹患していると聞いたのは、息子氏が生まれた日だった。実家のあった埼玉から、大阪の病院まで孫の顔を見に来てくれて。ひとしきり、よろこびを味わった後で、表情を変えて、話してくれた。実は、その数か月前に診断がついていて、通院していること。病院では余命を宣告されたこと。医師にさじを投げられたように感じて、絶望感でいっぱいだったこと。本当は娘(=わたし)に

          おねだり

           喉が少し、イガイガしていたようだ。外出先から戻ったダンナ氏が、顔をしかめて咳払いをしていた。風邪をひいてしまったら大変! いそいでうがいをするよう勧めた。  梅干しを漬けたときに出た梅酢。これを水で薄めて、ガラガラうがいをする。喉の奥にあった違和感が和らぐし、口の中に、ほのかに梅の香りが残る。さっぱりする。  ただ、今回はそれでもまだ違和感があった様子。喉をエヘンエヘン言わせていたので、「飴、なめなはれ」個包装になった生姜飴を2つ、ダンナ氏に手渡した。 「わぁっ!!!

          旅をする

           西へ向かう、朝の東海道新幹線。なかなかの混み具合らしい。大阪へ出張するライターの大先輩が、SNSで呟いておられた。コロナ禍で移動が制限され、新幹線も飛行機も乗客が減ったと報道された。けれど今は、だいぶ客足が戻ってきたようだとも聞く。  何年も移動が制限された分、以前のように旅を楽しみたいものだ。我が家の近所でも、外国からの旅行者を見かけない日はない。国内旅行を楽しんでいる日本の人も見かける。みな一様に、表情が明るい。「つかれたー」という顔をした子どもたちも、それでも、それ

          ひなんくんれん

           息子氏は、避難訓練が嫌いだ。ふだんは、ありがたいことに、学校で楽しく過ごしているようなのだが、避難訓練がある日は全身から「行きたくないオーラ」が滾る。  避難訓練が、どういう目的でやっていることなのか。もし、やらずにいて、万が一のことが起こったら、どんな事態になるかもなのか。避難訓練をやる意味とか意義とかは、アタマではわかっている。ただ、訓練時に鳴る警報音。あれがどうしても耐え難いらしい。  「けいほうおん」という音の並びを耳にするだけで、体が固くなる感覚は、わたしもよ

          だしのきいたお味噌汁

           ああ。思わず声が出る。お椀と箸を手に取り、まずは具を一口。それから汁を口に含む。もう既に、鼻に届いていた鰹の香りがさらに濃くなる。ごくりと飲み込んだら、昆布の香りがやわらかく追いかけてきた。花かつおと、真昆布と、赤味噌と。「味噌汁だけに!」とセルフでツッコミたくなるけれど、やっぱり言わずにはいられない。手前味噌ながら、うちの味噌汁、最高だ。  高校を卒業して、大学では寮に入っていたので、自炊歴は長い。けれども、おかずはそれなりにちゃんと作っていたものの、お味噌汁を作ること

          だしのきいたお味噌汁

          糖分補給

           セミナーを受けるときに、必ず持っていくものがある。糖分だ。セラピー系のセミナーだと、なぜかチョコレートが食べたくなる。コーチングやライティングのセミナーだと、はちみつ。水筒にお茶を入れ、多めのはちみつを加えて持参している。  それに加えて、最近の「推し」は、飴ちゃんだ。特に、生姜入りの飴。季節の変わり目で、風邪が流行りだした頃、電車に乗るとか人混みに出かけるとかするたびに、こまめに生姜飴を舐めるようにしていた。燃料が補給されるから、免疫さんたちも元気に働いてくれたのだろう

          たこやき

          「大阪では、一家に一台、たこやき器がある」  初めてそう聞いたのは、いつだったっけ。とても驚いて、大阪出身の人に真偽の程を尋ねまくった。たいてい「そんなことはない」との答え。ところが、「じゃあ、(あなたの)家に、たこやき器、ある?」と聞くと 「ある」  わたし調べでは、100%「ある」なのだ。まあ、これは、たまたま。実際は、そこまで多くはないだろう、とは思う。けれど、聞く人、聞く人「持っていない家もある(と思う)」と言いつつ、ことごとく「家にたこやき器、あるよ」なのが実に

          おてつだい

           昼下がり。陽の光がさす和室で、よく弟と「ごっこ遊び」をしていた。弟はヒーロー役。わたしもヒーロー側だ。きっと、兄弟で「見えない敵」と共闘していたのだろう。  あるときには、自転車をこいでいた。補助輪をガラガラいわせながら、左右の足に交互に力を入れ、ぐんぐんこぐ。うしろから「おねぇちゃ〜ん、まぁってぇぇぇ!!!」弟の声が追いかけてくる。私は、笑いながら爆走をつづけた。もちろん最後は一緒に家に帰ったけど。  幼い頃の記憶をたどると、ほとんど弟と遊んでいる。さすがにおむつを替え

          また始める

           習慣化の敵は、つづかないこと。  なにかを始めたくて、しかも習慣にしたいとき。そう思い立ったときには、実行するものだ。しかも、かなりの熱量で。しかし、熱は冷める。心の温度も、同じ。いつまでも、始めたときの熱量は維持されにくい。次第に、ぬるくなっていく。  しかもまた、そういうときほど「用事」が入る。仕事だったり、家族のことだったり、体調を崩したり。「それでもつづけるの?」と神様が本気度を試しているのか、と思うほど。で、それでもつづけているうちに、気づくとそれが当たり前にな