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旅をする

 西へ向かう、朝の東海道新幹線。なかなかの混み具合らしい。大阪へ出張するライターの大先輩が、SNSで呟いておられた。コロナ禍で移動が制限され、新幹線も飛行機も乗客が減ったと報道された。けれど今は、だいぶ客足が戻ってきたようだとも聞く。

 何年も移動が制限された分、以前のように旅を楽しみたいものだ。我が家の近所でも、外国からの旅行者を見かけない日はない。国内旅行を楽しんでいる日本の人も見かける。みな一様に、表情が明るい。「つかれたー」という顔をした子どもたちも、それでも、それなりに旅を楽しんでいるように見えるのは、どうしてなのだろう。

「運は、動いて上げる」という考え方があるそうだ。運を動かしたいときは、ふだん居るところから離れたところへ行ってみる。旅のように、物理的に移動をする。距離を動く。身体的に移動をすることで、運も動く、開いていく、ということらしい。

 たしかに、と頷いてしまった。わたし自身をふりかえっても、心当たりだらけだ。仕事も、人生も、充実感を覚えていたときは、たくさん出張をしていた。仕事の合間、時間があるときには街へ出かけたなあ。観光スポットへ行くこともあったけど、その地でくらす人たちの日常が垣間見える場所を通りすがるのが好きだった。長い移動は疲れる。なのに、活力が増す。旅があることで、逆に自分が落ち着くように感じていた。

 しかし、コロナ禍である。しかも、化学物質過敏症になってしまった。「ステイホーム」なんて横文字で言うとよさげに聞こえるけど、選択肢が「ステイ」1択なのは辛い。旅に出られないだけでなく、家を出られない。移動がはばかられる。いろんな意味で。自分にとって、それがどれだけ人生の質にかかわることなのか、痛いほどにわかった。

 もちろん、オンラインの良さもある。コロナ以前からSkypeを使ってオンラインコーチングを提供していた。だから、オンラインの便利さは知っていた。けれど、コロナ禍にあっても、オンラインで「会える」素晴らしさよ! オンラインの利点を再認識した。とはいえ、である。

 一つ所に腰を据えて、じっくりと取り組む良さは、もちろんある。それと同時に、普段自分がいるところから離れたところへ行く良さも大切にしたい。離れたところに行くからこそ、視野も、人としての幅も、広げて行けると思うから。今週末、日帰りだけれど旅に出る。きっとまた何かが動き出すのだろう。