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飴ちゃん

大阪のオバチャンは、いつも飴ちゃんを持っていて
なにかあると、飴ちゃんをくれる

 大阪のオバチャン、いつも飴ちゃん持っている説。ある調査でも、半数を超えるオバチャンが飴ちゃんを持っている、という結果だったとか。実はわたしも、何度かオバチャンに飴ちゃんをもらったことがある。感動した。そして正直、困惑もした。

 親切心からくださっていることは、十分すぎるほど伝わる。お気持ちはほんとうにありがたいのだ。けれど、当時は飴を舐める習慣がないどころか、飴が苦手だった。オバチャンの親切心はすごく嬉しかったけれど、食べられないものをいただくことに、ちょっと申し訳なさを感じた。

 もっと困ったのが、息子氏にもらったときだ。なにがキッカケだったかは忘れてしまったが、息子氏に、と飴ちゃんを差し出された。食物アレルギーがあり、アトピーを発症したこともあって、今思えば、息子氏の食事にはけっこう神経質になっていた。添加物にも気を遣っていたので、カラフルな色のついた飴ちゃんを息子氏に食べさせることに、強い抵抗を覚えた。お気持ちはうれしいし、ありがたい。けど……ごめんなさい。いただけないです。そうお伝えするのが心苦しかったな。

 そもそも、どうして「オオサカのオバチャン」は「飴ちゃんを常備」なのだろう? 一説によると、自分のためだけでなく、コミュニケーションのために持ち歩いている、とか。さすがにコロナ禍を経て、少なくなっているかもだけれど、そういう親切心? 誰かのために用意しておく、という気持ちが素敵だと思う。できれば、ニーズの有無を聞いてくれると、ありがたいのだけれど。

 現在では、飴ちゃんをいつも持ち歩くようになった、わたし。晴れて「オオサカのオバチャン」の仲間入りできた、ってことか? めでたい。……めでたいのか? たぶん、めでたいのだろう。それで良い、はず。

 息子氏用の甘いやつと、わたしやダンナ氏用の辛いやつの2種類を常備。目下のお気に入りは「うどんや風一夜薬本舗」の「しょうが飴」。とにかく辛い。しょうがの辛味が、圧倒的な存在感で口の中に広がる。けれど、それが心地よいのだ。内側から元気が呼び起こされる感じになる。

 もし咳をしている人がいて、しょうがが大丈夫なら、
「あめちゃん、たべます?」
って、差し上げたい。推しの味を近くの人と分かち合って、役にも立てたら。オバチャンの気持ちがちょっとわかった気がした。