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CIA Vol.5

料理を創るということ...

2年生AOSを卒業すると1年のワーキングビザ
4年生BPSを卒業すると2年のワーキングビザがもらえる

2013年、僕が卒業を迎えた時代は卒業生のうちレストランへ就職するものは60%ほどだった。

アメリカという国は国土だけじゃなく、考え方も広大で縛られてなく、自由な発想と面白さが特徴だ
セレブの専属シェフ
食の研究者(博士)
TVタレント
コンサルタント
第一次産業への取り組み etc...

他には、飲食に全く関係ないかのようなジャンルに乗り込む人も多い。

昨日、CIAを卒業した日本人の会へ参加させていただき、丁度、現役のCIAの学生がニューヨークから日本へ来ていて、何人かに話を聞いた。
1人はシェフになりたいと。
もう1人は、食の歴史を調べ、味のパラメーターなどを研究したいと...
かっこよすぎる

彼らのほとんどは入学前か入学時から、自分たちの目指すとこを明確にもちながら行動する人が多い

自由≠無秩序
発想=自由≒無限=発想
である事を育ってく過程で理解してるからだと思う。
バンコクやナポリみたいな、はちゃめちゃ交通事情は無秩序の秩序で、ある意味自由だけど...(笑) 

飲食だからといって飲食に囚われる必要性がないことを、既成概念を持ち合わせていない故の面白さ

 
2年生(卒業の年)になり
CIAに戻ると、インターン先で経験したことがあからさまに差が出て面白かった。
厳しい店で研鑽を積み帰ってきたもの、リゾート地でゴルフ焼けやサーフィン焼けで帰ってきたもの、インターン先を逃げ出したもの... 
同じ時期にスタートしたはずのクラスメート18人くらいだったはずが、妙に教室もキッチンも涼しいと思ったら半分ほどに減っていた

1年生の時の実技は、Fundamental(料理基礎)から始まり、フランス料理をメインとしたフォン(出汁)の取り方や包丁使いなどを主に学ぶ。
フランス料理特有の包丁の技術も今では使う人が少なくなったけど、結構魅力的なのもあったりする
例えば、シャトーやトルネ

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じゃがいもを和食の六方剥きに近いような、アメフトのボールみたいに剥く

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トルネはマッシュルームをこんな感じにする(結構慣れるまで難しい)

基礎授業が終わると、基礎の流れで朝食や魚、肉の授業がそれぞれあり、個人的に肉の授業は少人数のクラスなのもあり、1人一匹ずつ豚や鶏、羊、牛のどっかの部位と捌かせてくれてかなり楽しかった。

魚の授業は、日本人にとってはアメリカ式の魚の卸し方は面白くはあった。
キャビアのテイスティングなど、興味をそそる内容が所々あるお陰で退屈しなくていい

2年になってからは、各国の料理の授業から始まる。
多種多様な人種がいる国だけあって、アメリカ料理だけでも南部(クレオールなど)から中部、北部と様々で楽しい。
中南米は主にメキシコ料理、トルティーヤを作る石臼が学校にあり、自ら乾燥させたトウモロコシを挽き生地を作っていく。

アジアの授業では、少しだけ和食?もあった...
笑ってはいけなかったんだろうが、味噌汁作るのに醤油入れたりと明らかに知識不足...
現在は、辻調理師学校から先生が派遣され、ちゃんとした和食の授業が行われているとのこと

卒業前は、3つの校内レストラン(パティシエは4つ)
ボキューズ(フレンチ)
アメリカンバウンティー(カジュアル)
カトリーナ(イタリアン)
アップルパイベーカリー(パティシエのみ)
から選択して、実際の外からのお客様を相手にレストランと同じことをする。
前半はキッチン、後半はサービスをする。

僕は一番人気のボキューズ。
メニューもボキューズという名前だけあって、故ポール・ボキューズ氏のスペシャリテであるトリュフのパイ包みスープV.G.Eをやってたりした。
(V.G.Eとは、当時のフランス大統領の名前で、彼のためにエリゼ宮で披露された)
授業内で成績優秀な生徒は、自分の担当の仕込みとメニューの傍らで、オリジナルで一品創作する権利が与えられる。

僕だけ創作をさせてもらい、メニューに載せて提供させていただいた。
それが人生初のオリジナルの料理だった
それが当時の僕の精一杯だった...

確か、牛フィレにアンチョビとオレガノとキノコと黒オリーブのペルシャードを乗せてローストしたメインで、付け合わせはブラックトランペットとエシャロットチップスに赤タマネギのピクルス。
ジュドヴィアンド(肉の出汁)に大好きなマティーニの香りを移したソース。

まだ火入れの技術も何もかも未熟だったけど、クリエイションの楽しさを感じたのと同時に、自分の技術がイメージに追いついていないのを実感した日...

あれから7年ほど経ち、マティーニのソースと牛の組み合わせの料理を進化させ、アミューズ(お通し)として、自分がシェフを勤めた店でお客様に出させて頂いた。

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より脂身のあるサーロインを使い、ジュニパーベリー(ジンの原料)とベルモットで香りをつけた濃厚なソース。
オリーブを添え、自宅にあったオリーブの枝に刺して...

基礎がなければ、本当のクリエイションはできない。
形だけのフワフワとした芯の無い料理は創りたく無い。

創作する上での基礎とは、基本的な包丁や火入れの技術、食材の知識、そして礎となる料理の成り立ち、古典の理解。
それらを踏まえた上で創作をすると、1品にストーリー・哲学が備わり、「おいしさ」という核はブレない。

よくアレンジやコピーした品をオリジナルで創作のように言い張る人間も多いが、それらはただの二番煎じ(パクリ)であって、職人として生きてるのであれば恥じるべきだ。

料理を創る快感に目覚め、卒業式を1週間後に控え...
まさか卒業式2日前にハプニングが起き、それが結果的に最高の思い出の1つへと導いてくれるとは...


To be continued...


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