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とことこショート

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5分で読めるショートストーリー
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#介護に生産性を求めないで

カフェ・ソスペーゾ【後編】

カフェ・ソスペーゾ【後編】

ソフィアはアンドレアの話を静かに聞いていた。どこまで続くとも分からぬ戦争に心を痛めていた。辛く悲しい体験をしてきた人が目の前にいる…ソフィアは神妙な面持ちで聞き入った。

終戦後、アンドレアは無事に帰還した。心待ちにしていたマーラを強く抱きしめ、子供達と一緒に再会の喜びを分かち合った。戦場では味わえない人の温もりがそこにはあった。
長く苦しい時代が終わったのだ。
これからは希望を持って生活ができる

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カフェ・ソスペーゾ【中編】

カフェ・ソスペーゾ【中編】

イタリアの片田舎にあるカフェ・スペラーレ(希望)
店主マティがソスペーゾ(助け合い精神)で一人の女性を雇った。
その女性の名はソフィア。
ソフィアはマティに恩返しをしようと一生懸命働き、彼女本来の明るさを取り戻しつつあった。
ソフィアが店先で掃除をしていれば、彼女見たさに近所の野郎どもが集まってくる。
つかさず、「おはようございます」と笑顔いっぱいで挨拶すると、途端に彼らは蜂の巣を突いたかのように

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あの日のショートケーキ

あの日のショートケーキ

苺がのったショートケーキを仏壇にお供えして、手を合わせる。
父が亡くなって1年以上が経った。
今日は私の誕生日。笑った父の写真を見ながらあの日の誕生日を思い出していた・・・

父は一人娘の私を可愛がってくれた。なかなか子供ができなかったため、私がお腹にできた時はたいそう二人で喜んだそうだ。その時、父は47歳。
満1歳の誕生日から毎年、苺のショートケーキでお祝いをしてくれた。

「いいかい? ローソ

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『お母さん、どうしちゃったの?』~キッチンドランカーになったわけ~

『お母さん、どうしちゃったの?』~キッチンドランカーになったわけ~

なっちゃんのお父さんとお母さんは、同い年で学生の頃からお付き合いしていた。
そして、二人とも同じ年に大学を卒業した。

お父さんは、成績優秀で上場企業の会社に入社。
お母さんは、大手の広告代理店に勤めたが2年後、結婚を機に寿退社した。

順風満帆な新婚生活。
お母さんは、とっても幸せな気分でお父さんに食事を作ってあげたり、
スポーツジムに行っては、身体を鍛えプロポーションを維持する。
洋服もハイブ

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必ず、想いは通じる

必ず、想いは通じる

その頃、茜は離婚をした。
『この世はみんな打算でできている。自分さえ良ければそれでいいのか?』と
絶望に苛まれていた。

仕事を探さなければ生きていけない。
子どもを残して死んではいけない。
そんなプレッシャーの中、ハローワークの職業支援を目にし、勉強しながらお給料がもらえるシステムを知った。
”ヘルパー2級講座” 
茜に迷っている暇などなかった。3ヶ月間介護のことを学び、就職に繋げていくというも

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認知症の大変さを知る

認知症の大変さを知る

私は40歳を過ぎてから介護ヘルパー2級の資格を取ってデイサービスで働いている。
人生100年時代…すごい世の中になったものだと不安にも似たようなものを抱えていた。
医学の進歩により、治らない不治の病だったものが早期発見で治ってしまうことも手伝って、人々も健康に意識を向けるようになったからだ。

私は少し、仕事に対するモチベーションが下がっていた。
お年寄りというのは、頭が正常な人でも同じ話を何回も

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