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まいにち易経_0610【交如威如】その孚、交如たり。威如たれば、吉なり。[14䷍火天大有:六五]

六五。厥孚交如威如。吉。 象曰。厥孚交如。信以發志也。威如之吉。易而无備也。

六五は、そのまことあって交如こうじょたり威如いじょたるときは、吉なり。 象に曰く、その孚あって交如たり、しん以てこころざしを発するなり。威如の吉なるは、やすくして備うるなければなり。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

火天大有の六五の爻は、「誠の心で他者と接し、威厳を持つこと」が重要だと教えています。これはリーダーシップにおいても非常に大切な要素です。リーダーは誠実であるべきですが、同時に威厳も持ち合わせていなければなりません。

リーダーには2つの資質が求められます。1つは「誠実さ」、もう1つは「威厳」です。これらを兼ね備えていなければ、人々から信頼され、よき導き手にはなれません。まず「誠実さ」についてですが、これは相手の立場に立って真摯に向き合うことです。自分の都合ばかり押し付けるのではなく、相手の気持ちを思いやり、心を開いて接することが大切なのです。

一方で、「威厳」も欠かせません。威厳とは権威や畏敬の念を持たせることですが、決して高圧的な態度を指すわけではありません。むしろ、自らの行動力と人格から自然と滲み出てくるものなのです。
これを易経の言葉で言い換えると、「交如」と「威如」です。
「交如」とは誠実な交わりを意味し、「威如」は自然な威厳のことです。

リーダーは誠実さから人々と心を通わせ、威厳によって方向性を示すのです。両者が上手く行き来すれば、組織は円滑に機能し、皆が喜んで従うことでしょう。
ただし、警戒しなければならないのは「威圧」です。これは権威から生まれる強権的で押し付けがましい態度を指します。威圧的な指導は、短期的には効果があるかもしれませんが、やがては部下の反発を招き、大きな摩擦を生むことになります。
真の威厳は、言動から滲み出る人格的な魅力なのですから、部下は心から従う存在となるはずです。ですから、リーダーは「威如」を体現し、「交如」によって部下と絆を深めていく必要があります。

現代の企業経営においても、このバランスが非常に重要です。例えば、大企業のCEOが社員に対して誠実であることは、社員の信頼を得るために不可欠です。社員が上司を信頼し、その指示に従うことができれば、会社全体の士気が高まります。
一方で、CEOが全ての決定を社員に委ねてしまっては、組織が混乱に陥る可能性があります。重要な局面では、リーダーが威厳を持ち、明確な指示を出すことが求められます。このように、誠実さと威厳のバランスを取ることが、組織の安定と発展に繋がるのです。

日本の歴史にも、誠実さと威厳を兼ね備えたリーダーが多く存在しました。例えば、徳川家康はその一人です。家康は戦国時代を終結させ、平和な江戸時代を築いたリーダーとして知られています。彼は誠実な人柄でありながら、必要な時には強い決断力を発揮し、多くの人々から敬愛されました。

家康は確かに武力を背景に権力を握りましたが、ただの力づくの支配ではありませんでした。豊臣秀吉の脅威から国民を守り、長年の戦乱に終止符を打ったことで、人々の信頼と敬意を勝ち得たのです。
さらに、彼は臣下を慈しみ、逆らう者にも機会を与え、賢者の言に耳を傾けるなど、広い心を持っていました。この姿勢が、家臘ら多くの良き家臣を生み出す源泉となりました。

家康は権力者ながら「誠」を体現し、その行動から「威」を発揮した、まさに「交如」と「威如」の権化だったと言えるでしょう。
このように、リーダーには「誠実さと威厳」が何より大切です。皆さんには将来、それを実践していただきたいと願っています。人々から信頼される存在となり、いつの時代も必要とされるリーダーとなれますように。


参考出典

私心がなく(孚)、人に警戒を与えず心から交わり(交如)、優しい中に威厳(威如)がある。リーダーの徳を表した言葉である。「交加」は「信もって志を発するなり」とあり、言いたいことを言い合える信頼関係。「威如」は「易りて備うるなければなり」とあり、猛威を奮うのではなく、その行いから自然ににじみ出る威厳である。
「交如威如」で思い起こす言葉に「和光同塵」(光を和らげ塵と同じくす)がある。

易経一日一言/竹村亞希子



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