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まいにち易経

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当マガジン『 #まいにち易経 』は、難解な易経の内容をわかりやすく解説。現代の混迷を生き抜くための叡智と指針を与える必読マガジン。 竹村亞希子先生【「易経」一日一言】と本田濟先生… もっと読む
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記事一覧

まいにち易経_0617【咸臨】咸じて臨む。貞にして吉なりとは、志正を行うなり。[19䷒地澤臨:初九]

咸臨貞吉。志行正也。 咸じて臨む。貞吉なるは、志し正を行うなり。 部下の信頼を得て、自分の道をしっかり歩むことで、運を味方につける。志を正しく持ち、人としての道を真っ直ぐに進んでいるからこそ、成功を手にするのだ。 ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る 「咸臨」とは、上に立つ者と下にいる者が心で感じ合い、一致協力して事に臨むことを意味します。これにはリーダーとそのチームが心を一つにして、共に目標に向かって進む姿

まいにち易経_0616【土台を築く】上はもって下を厚くし宅を安んず。[23䷖山地剥:象伝]

上以厚下安宅。 上以て下を厚くし宅を安んず。 リーダーは自分を節約し、部下にはしっかりと報いて、自分の地位を安定させるべきである。リーダーが成功するためには、自己節制を心がけ、部下に対しては厚遇することが重要だ。部下が安心して働ける環境を提供することで、リーダー自身の立場も揺るぎないものとなる。 ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る 『山地剝(さんちはく)』という卦についてお話しします。これは非常に重要な教訓

まいにち易経_0615【釣瓶を壊す】汔んど至らんとして、またいまだ井に繘せず、その瓶を羸るは、凶なり。[48䷯水風井:卦辞]

汔至。亦未繘井。羸其瓶。凶。 汔んど至らんとして、亦たいまだ井に繘せず、その瓶を羸る。凶なり。 井戸の水を汲もうとして釣瓶が水に届かなかったり、また釣瓶自体も準備していなかったり、あるいは釣瓶が壊れていたりしたら、せっかくの井戸も活用することができない。管理者失格! ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る 『水風井』の卦辞は、井戸とその管理を通じて、組織運営やリーダーシップの重要性を説いています。 まず、井戸

まいにち易経_0614【夬るべきを夬る】頄に壮んなり。凶あり。君子は夬るべきを夬る。[43䷪澤天夬:九三]

九三。壯于頄。有凶。君子夬夬。獨行遇雨。若濡有慍。无咎。 象曰。君子夬夬。終无咎也。 九三は、頄に壮んなり。凶あり。君子は夬夬。独り行きて雨に遇う。濡るるが若く慍らるることあり。咎なし。 象に曰く、君子は夬夬、終に咎なきなり。 剛毅に過ぎる九三は、攻撃敵な面相が頬骨の辺りに現れている。そのような顔付きで小人を排除しようとすれば、必ず失敗に終わる。君子に相応しい度量で決然として小人を排除するべきである。たとえ九三が断固たる決意で独り上六を討伐する覚悟で接近しても、他の君子(

まいにち易経_0613【小人は国を乱す】大君命あり。国を開き家を承けしむ。小人は用うるなかれ。[07䷆地水師:上六]

上六。大君有命。開國承家。小人勿用。 象曰。大君有命。以正功也。小人勿用。必亂邦也。 上六は、大君命あり。国を開き家を承く。小人は用うるなかれ。 象に曰く、大君命あり、以て功を正しくするなり。小人用うるなかれとは、必ず邦を乱ればなり。 上六は戦の終局における対処法を説く。威厳あるトップが、部下に対し論功行賞を命じる。大きな功績を上げた部下の中から、自己犠牲精神を持つ人物を諸侯に封じ、重役として重用する。たとえ大きな功績を上げたとしても、私利私欲に動かされる人ような小人を諸

まいにち易経_0612【韜晦】衆に莅み、晦を用いてしかも明なり。[36䷣地火明夷:象伝]

象曰。明入地中明夷。君子以莅衆。用晦而明。 象に曰く、明地中に入るは明夷なり。君子以て衆に莅むに、晦きを用てして而も明らかなり。 火地晋では、明がまだ地中に入らない時、君子は明るく道を進む。しかし今や、その明が地中に隠れたので、これは明夷の時である。この時、君子が道を歩もうとするならば、世間に対しては暗昧を装い、慎み深く愚を守る一方で、内心では日々明徳を新たに研鑽することが求められる。 ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに

まいにち易経_0611【機微を観る】先王もって方を省み、民を観て教えを設く。[20䷓風地観:象伝]

象曰。風行地上觀。先王以省方觀民設教。 象に曰く、風地上を行くは観なり。先王以て方を省、民を観、教えを設く。 観の卦は、風が地の上にある。風が地上を吹くとき、あまねく万物にゆきわたる。昔の聖王は、この卦に法とって、四方を巡視し、民の風俗を観察し、それぞれに適した政教を設ける。 ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る まず『観』とは何か。その象徴的な意味は、風が地上を広く吹き渡る様子を示しています。風は目に見えず

まいにち易経_0610【交如威如】その孚、交如たり。威如たれば、吉なり。[14䷍火天大有:六五]

六五。厥孚交如威如。吉。 象曰。厥孚交如。信以發志也。威如之吉。易而无備也。 六五は、その孚あって交如たり威如たるときは、吉なり。 象に曰く、その孚あって交如たり、信以て志しを発するなり。威如の吉なるは、易くして備うるなければなり。 ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る 火天大有の六五の爻は、「誠の心で他者と接し、威厳を持つこと」が重要だと教えています。これはリーダーシップにおいても非常に大切な要素です。リーダ

まいにち易経_0609【一朝一夕の故にあらず】臣にしてその君を弑し、子にしてその父を弑するは、一朝一夕の故にあらず。[坤為地:文言伝]

臣弑其君、子弑其父、非一朝一夕之故。 臣にしてその君を弑し、子にしてその父を弑するは、一朝一夕の故にあらず。 ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る 易経六十四卦『坤為地』の文言伝のなかに、 「臣下が君主を殺し、子供が親を殺すようなことは、ある日突然に起こるのではない。その要因は長い年月をかけてゆっくり育ち、ある時、大きな禍となって現れる」という内容の一節があります。 これは一見するととても恐ろしい話に聞こえる

まいにち易経_0608【危機意識】安くして危うきを忘れず、存して亡ぶるを忘れず、治まりて乱るるを忘れず。[繋辞下伝:第五章]

是故君子安而不忘危。存而不忘亡。治而不忘亂。 是の故に、君子は安くして危うきを忘れず。存して亡ぶるを忘れず、治まりて乱るるを忘れず。 孔子はこう語っている。「常に現状に対する危機感を持つ者は、その地位を安定して保つことができる。常に滅亡の可能性を自覚している者は、その存続を維持することができる。常に乱れることを懸念している者は、安定した状態を長く保つことができる。だからこそ、君子は安定しているときでも常に危機感を持ち、存続しているときでも滅亡のリスクを考え、治まっていると

まいにち易経_0607【危うき者】危うき者は、その位に安んずる者なり。亡ぶる者は、その存を保つ者なり。乱るる者は、その治を有つ者なり。[繋辞下伝:第五章]

子曰。危者。安其位者也。亡者。保其存者也。亂者。有其治者也。 子曰く、危うき者は、其の位に安んずる者なり。亡ぶる者は、其の存を保つ者なり。乱るる者は、其の治を有つ者なり。 孔子はこう述べている。「常に現状に危機感を抱く者は、その地位を安定して保てる。常に滅亡の可能性を考え自戒する者は、その存続を維持できる。常に乱れることを心配する者は、その安定した状態を長く保てる。だからこそ、君子は安定しているときも危機感を持ち、存続しているときも滅亡を念頭に置き、治まっているときも乱れ

まいにち易経_0606【深い洞察力と理解力】仰いでもって天文を観、俯してもって地理を察す、この故に幽明の故を知る。[繋辞上伝:第四章a]

易與天地準。故能彌綸天地之道。 仰以觀於天文。俯以察於地理。是故知幽明之故。 原始反終。故知死生之説。精氣爲物。遊魂爲變。是故知鬼神之情状。 易は天地と準う。故に能く天地の道を弥綸す。 仰いで以て天文を観、俯して以て地理を察す。 是の故《ゆえ》に幽明の故《こと》を知る。 始めを原《たず》ね終りに反《かえ》る。 故に死生の説を知る。精気は物を為し、游魂は変を為す。 是の故に鬼神の情状を知る。 『準』は符合、『弥』は糊で封をする意味、『綸』は太い糸から条理の意味になる。『幽』

まいにち易経_0605【心の鏡を磨く】自ら明徳を昭らかにす。[35䷢火地晋:象伝]

象曰。明出地上晉。君子以自昭明徳。 象に曰く、明地上に出ずるは晋なり。君子以て自ら明徳を昭かにす。 太陽が自ら地平線を越えて昇るように、私たちもまた、自らの明徳を明らかにすることが求められています。「自ら」という言葉には、心を明るく保つ責任が自分にあり、他者に頼るべきではないという意味が込められています。 明徳は私欲によって容易に曇ってしまいます。だからこそ、心の鏡が曇らないように日々意識して磨くことが必要なのです。心を磨くことは、まるで日々の太陽のように、自らの力で輝き

まいにち易経_0604【すべてのものはここから生まれる】至れるかな坤元、万物資りて生ず。[02䷁坤為地:彖伝]

至哉坤元、萬物資生。 至れるかな坤元、万物資りて生ず。 ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る 企業は太陽のような「陽」の気です。発展と成長、新しい事業の開拓など、活力に満ちた営みを生み出します。しかし、その太陽の光がまっすぐに射すのでは植物は育ちません。大地の「陰」が優しく受け止め、栄養を与えてはじめて、芽を出し、成長を遂げられるのです。 太陽のような役割とともに、陰の働きも心得なければなりません。従業員や部