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まいにち易経_0706【自分の道を守る】立ちて方を易えず。[32䷟雷風恒:象伝]

象曰。雷風恆。君子以立不易方。

象に曰く、雷風らいふうあるは恒なり。君子以て立つにほうえず。


恒卦の卦象は、下に風、上に雷があり、風と雷が交互に作用し続ける形を示しているため、永続的なことを象徴していまる。賢人たるリーダーはこの卦を手本にし、自分の志を確立し、変わらない正しい道を守る。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

『雷風恒』の「恒」は「常に」とか「変わらない」という意味を持っています。でも、ここで言う「変わらない」というのは、単に固定されて動かないということではありません。むしろ、ある一定の方向性や理念を持ち続けるという意味です。

さて、『雷風恒』の教えの核心は「一定の理を貫き、極まりなく変化成長していく」ということです。これは、一見矛盾しているように聞こえるかもしれません。でも、実はこれこそが人生や組織の発展における重要な秘訣です。

《立ちて方を易えず》とは、一度決めた方針をぶれずに貫くということです。でも、これは頑固になれという意味ではありません。むしろ、自分の核となる価値観や目標をしっかりと持ち、それを軸にして柔軟に対応していくことを意味しています。

私の経験から言えば、ビジネスの世界でも同じことが言えます。成功している企業を見ると、創業時の理念や目的をしっかりと守りながら、時代の変化に合わせて柔軟に事業を展開しています。

例えば、トヨタ自動車を考えてみましょう。トヨタの基本理念は「より良いクルマづくりを通じて社会に貢献する」というものです。この理念は創業以来変わっていません。でも、その一方で、トヨタは時代とともに変化してきました。ガソリン車から、ハイブリッド車、電気自動車、さらには自動運転技術の開発まで、常に新しい技術に挑戦し続けています。これこそが、『雷風恒』の教えを体現していると言えるでしょう。

人生においても同じです。皆さんはこれから長い人生を歩んでいくことになります。その中で、様々な困難や誘惑に直面するでしょう。そんな時こそ、自分の軸をしっかりと持つことが大切です。「自分は何のために生きているのか」「何を大切にしたいのか」といった根本的な問いに対する答えを持っていれば、どんな状況でも迷わずに進むことができるはずです。

ここで、禅の教えを少し紹介したいと思います。
唐代の禅匠南泉普願なんせんふがんの「平常心是道へいじょうしんぜどう」という言葉があります。心を静めてよく考えるとか、心の定まったことを意味します。
禅僧が坐禅修行に厳しい時をすごすのも、心の定まりが一層純粋であることを求めるのであって、特別なさとりの境地を求めるものではありません。つまり、特別なことをする必要はなく、日々の生活の中で自分の心を整えていくことが大切だということです。これは『雷風恒』の教えとも通じるものがあります。

日々の小さな努力の積み重ねが、やがて大きな変化や成長につながるのです。例えば、毎日10分だけ新しい言語の勉強をするとしましょう。1日10分は大したことないように感じるかもしれません。でも、それを1年続ければ3650分、つまり60時間以上の学習時間になります。これだけあれば、基礎的な会話くらいはできるようになるでしょう。

また、『雷風恒』の教えは、人間関係にも適用できます。良好な人間関係を築くためには、一時的な感情や利害に左右されず、相手を尊重し続けることが大切です。例えば、職場での人間関係を考えてみましょう。同僚との関係が良好なときは簡単です。でも、意見の対立があったり、競争関係になったりしたときこそ、相手を一人の人間として尊重し続ける姿勢が試されるのです。

これは簡単なことではありません。でも、そういった難しい状況でこそ、自分の価値観や理念が試されるのです。そして、そういった経験を通じて、私たちは人間的に成長していくのです。


参考出典

「方」は理・道をいう。雷風恒の卦は一定の理を貫き、極まりなく変化成長していくことを説いている。
「立ちて方を易えず」とは、一旦志を立てたならば、しっかりと自分を確立して、グラついたりしない。何があっても自分の道を守りぬくこと。
人は飽きると変化を求めるが、本来は毎日同じことの繰り返しの中で変化し、成長を遂げるものである。

易経一日一言/竹村亞希子

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