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まいにち易経_0702【自彊不息】天行は健なり。君子もって自彊して息まず。[01䷀乾為天:象伝]

象曰、天行健。君子以自彊不息。

象に曰く、天行てんこうけんなり。君子もって自強してまず。


天地の営みは、すべてのものに光を届け続ける太陽のように、絶え間なく健やかに働き続けている。君子を目指す者は、万物に光を注ぎ続ける太陽の姿を模範とすべきである。太陽のように強く健やかであるために、自らを絶えず養い、一日たりともその努力を怠ってはならない。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

天は、決して休むことなく働き続けています。太陽は毎日昇り、沈みます。月は満ち欠けを繰り返します。星々は夜空を彩り続けます。これらの動きは、一瞬たりとも止まることがありません。

さて、この天の姿に倣って、私たち人間も「自彊じきょうしてまず」、つまり自分自身を強くし、努力を怠らないことが大切だと易経は教えています。

「自彊」という言葉、聞きなれないかもしれませんね。これは「自分で自分を強くする」という意味です。つまり、他人に頼るのではなく、自分の力で自分を高めていくということです。

ここで、私の経験をお話しさせていただきます。私が若い頃、ある大先輩から「君、自分の人生は自分で切り開くものだよ」と言われたことがあります。当時の私は、まだ会社に入ったばかりで、周りの人に助けてもらうことが多かったんです。でも、その言葉をきっかけに、自分で考え、自分で行動することの大切さに気づきました。

確かに、人生の中では多くの人の助けを借りることもあるでしょう。でも、それはあくまでもきっかけに過ぎません。最終的に自分を成長させ、目標を達成するのは自分自身なのです。

植物の成長を例に考えてみましょう。種を蒔いて水をやり、肥料を与えることはできます。でも、実際に芽を出し、成長するのは植物自身です。私たちにできるのは、その成長を助ける環境を整えることだけです。人間の成長も同じです。周りの人々は、皆さんの成長を助ける環境を提供してくれるかもしれません。でも、実際に成長するのは皆さん自身なのです。

さて、自分を高めていく上で大切なのが、継続することです。易経では「物事は継続して癖付けをしていくことによって成り立つ」と教えています。

例えば、皆さんの中にピアノを習っている人はいますか?ピアノの練習は、毎日コツコツと続けることが大切です。1日や2日練習しただけでは、上手くなりませんよね。でも、毎日少しずつでも練習を続けていけば、いつの間にか素晴らしい演奏ができるようになります。

これは、ビジネスの世界でも同じです。私が経営者だった頃、毎日欠かさず行っていたことがあります。それは、その日の出来事を振り返り、反省点や改善点を書き出すことでした。最初の頃は、なかなか良いアイデアが浮かばず、つまらない内容ばかり書いていました。でも、毎日続けていくうちに、だんだんと鋭い洞察ができるようになっていきました。この習慣が、後々の経営判断に大きく役立ったのです。

ここで、もう一つ興味深い例をお話ししましょう。皆さんは「複利」という言葉を聞いたことがありますか?これは、利息が元本に加わって、その合計額に対してさらに利息がつく仕組みのことです。例えば、10万円を年利5%で預けた場合、1年後には10万5000円になります。さらにその10万5000円に対して5%の利息がつくので、2年後には11万250円になります。これを長期間続けると、驚くほど大きな金額になるんです。

人間の成長も、この複利と同じようなものだと私は考えています。毎日少しずつでも成長を続けていけば、それが積み重なって大きな力になります。1日1%の成長を1年間続けると、1.01の365乗、つまり約37.8倍の成長になるんです。これは驚くべき数字ですよね。

もちろん、人間の成長を数字で表すのは難しいですし、毎日1%ずつ成長し続けるのは現実的ではありません。でも、この例が示すように、小さな努力の積み重ねが、やがて大きな結果につながるのです。

ただし、ここで注意しなければならないのは、ただ漫然と続けるだけでは意味がないということです。常に自分を見つめ直し、改善点を探り、より良い方向に向かって努力を続けることが大切です。これこそが、「自彊して息まず」の本当の意味なのです。

皆さんの中には、「でも、毎日頑張り続けるのは大変そう」と思う人もいるかもしれません。確かに、それは簡単なことではありません。時には挫折を味わうこともあるでしょう。でも、そんな時こそ、天を見上げてみてください。

空は、時に雨や雪、嵐に見舞われることがあります。でも、そんな荒天の後には必ず晴れの日が来ます。皆さんの人生も同じです。困難な時期があっても、それを乗り越えれば必ず晴れの日が来るのです。

そして、天は一人ではありません。太陽や月、無数の星々が互いに影響し合いながら、宇宙全体のバランスを保っています。皆さんも一人で頑張る必要はありません。周りの人々と協力し、助け合いながら成長していけばいいのです。ただし、最終的に自分を成長させるのは自分自身だということを、忘れないでください。

さて、ここまでのお話をまとめてみましょう。

  1. 天の働きは止まることがありません。私たちも、天に倣って絶え間なく努力を続けることが大切です。

  2. 自分を成長させるのは、他ならぬ自分自身です。他人の助けは大切ですが、それはあくまできっかけに過ぎません。

  3. 継続は力なり。小さな努力でも、それを積み重ねることで大きな成果につながります。

  4. ただ漫然と続けるのではなく、常に自己改善を心がけることが重要です。

  5. 困難な時期があっても、それを乗り越える強さを持つことが大切です。

  6. 一人で頑張るのではなく、周りの人々と協力しながら成長していくことも大切です。

これらの教えは、皆さんが将来リーダーとして活躍する上で、非常に重要なものになると思います。リーダーは、自分自身を高めると同時に、周りの人々も高めていく役割があります。そのためには、まず自分自身が絶え間なく成長し続ける姿勢を持つことが大切なのです。

まずは、自分にできる小さなことから始めてみてください。例えば、毎日10分だけ新しいことを学ぶ時間を作るとか、今よりも少しだけ早く起きるとか。そういった小さな変化から始めて、少しずつ自分を高めていってください。

皆さんの中から、未来を変えるような素晴らしいリーダーが生まれることを、心から期待しています。頑張ってください。そして、自分を信じてください。ありがとうございました。


参考出典

天の働きは健やかで一日も止まない。それに倣って「自彊じきょうしてまず」、自ら強く励み、努めて止まないことが大切である。
自分を活かすのは何といっても自分自身であり、他の誰かが助けてくれたとしても、それはきっかけにしかならない。ゆえに、まずは自分で自分を立てることから始めなくてはならない。継続して癖付けをしていくことによって、物事は成り立っていくのである。

易経一日一言/竹村亞希子

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