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まいにち易経_0703【厚徳載物】地勢は坤なり。君子以て厚徳もて物を載す。[02坤為地:大象伝]

象曰。地勢坤。君子以厚徳戴物。

象に曰く、地勢は坤なり。君子以って厚徳もて物を戴す。


大地がすべての生き物を育み繁栄させるように、君子は常に高い人徳を持ち、その徳をもって自らの義務を全うする。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

地勢坤。君子以厚徳戴物。

これは、「地の勢いは坤である。君子はこれにならって、厚い徳をもって物を戴く」という意味です。ちょっと難しいですよね。でも、心配いりません。これから、みなさんにもわかりやすく説明していきますから。

まず、「地勢」というのは、地球の姿勢や態度のようなものだと考えてください。地球は、私たちの目には平らに見えますが、実際にはとても分厚い層になっています。地球の中心まで約6,400キロもあるんですよ。これって、東京からニューヨークまでの距離とほぼ同じなんです。驚きですよね。

そして、この分厚い地球は、私たち人間をはじめ、動物や植物、建物など、ありとあらゆるものを受け入れ、支えています。重いものも軽いものも、大きいものも小さいものも、すべてを平等に受け入れているんです。

ここで、皆さんに質問です。地球が突然、「もう重いものは支えきれない!」とか「小さすぎて目障りだから、このウイルスは追い出そう」なんて言い出したら、どうなると思いますか?そうですね、大混乱になってしまいますよね。

でも、地球はそんなことは一切言いません。黙々と、すべてのものを受け入れ、支え続けているんです。これこそが、地球の「厚徳(こうとく)」、つまり「分厚い徳」なんです。

さて、ここで「君子」という言葉が出てきます。この「君子」というのは、昔の中国で理想的な人物のことを指す言葉でした。今でいえば、リーダーやお手本となるような人のことです。つまり、皆さんのことですね。

易経は、この地球の姿勢を見習って、私たち人間も「厚徳」の心を持つべきだと教えているんです。

では、人間にとっての「厚徳」とは何でしょうか?それは、地球のように、様々なものを受け入れる大きな心、そして、それらを支える強さのことです。

例えば、会社でリーダーになったとします。チームには様々な個性を持った人がいるでしょう。仕事の得意な人もいれば、苦手な人もいる。性格も十人十色です。そんな時、「この人は使えない」とか「あの人は性格が合わない」なんて言って排除してしまったら、どうなるでしょうか?

そうではなく、それぞれの個性や能力を理解し、受け入れ、適材適所で活かしていく。そして、チーム全体をしっかりと支えていく。これこそが、リーダーに求められる「厚徳」の心なんです。

私自身、大企業の経営者として長年働いてきましたが、この「厚徳」の心の大切さを、身をもって経験してきました。

ある時、新入社員の中に、どうしても仕事に馴染めない若者がいました。他の幹部からは「使えない」と烙印を押されていたんです。でも、私はその若者と何度も話をする中で、彼が実は繊細な感性の持ち主で、顧客の微妙なニーズを察知する能力に長けていることに気づきました。

そこで、彼を営業部門から商品開発部門に異動させたんです。すると、どうでしょう。彼の能力が開花し、次々と斬新なアイデアを出してくれるようになったんです。結果、会社の売り上げは大幅に伸び、彼自身も生き生きと仕事をするようになりました。

これこそが、「厚徳」の心で人を活かすということなんです。一人一人の良さを見出し、それを伸ばしていく。そうすることで、組織全体が強くなっていくんです。

また、「厚徳」には「度量が大きい」という意味もあります。これは、失敗や間違いに対しても寛容であるということです。

皆さんも、仕事をしていく中で、必ず失敗することがあるでしょう。そんな時、周りの人がどう接してくれるかで、その後の成長が大きく変わってきます。

厳しく叱責されれば、萎縮してしまい、次のチャレンジが怖くなってしまう。でも、失敗を受け入れつつ、そこから学ぶべきことを一緒に考えてくれる上司がいたら、どうでしょう?きっと、また頑張ろうという気持ちになれますよね。

これも「厚徳」の心の表れなんです。失敗を恐れずにチャレンジする部下を育てる。そんなリーダーこそ、組織を大きく成長させることができるんです。

さて、最後に「戴物」という言葉について触れておきましょう。「戴」は「頂く」という字で、尊重する、大切に扱うという意味があります。つまり、様々なものを受け入れるだけでなく、それらを大切に扱い、育んでいくということなんです。

地球は、単に物を載せているだけではありません。そこに降り注ぐ太陽の光や雨を受け止め、植物を育て、動物たちの生命を育んでいるんです。同じように、リーダーは部下たちを単に抱えているだけではなく、彼らの成長を促し、能力を開花させていく責任があるんです。

皆さんは、将来のリーダーとして大きな期待を背負っています。でも、プレッシャーを感じる必要はありません。むしろ、自分の中にある「厚徳」の心を育てていってほしいんです。

人それぞれの個性を尊重し、受け入れる大きな心。失敗を恐れずチャレンジすることを応援する寛容さ。そして、周りの人々の成長を喜び、サポートする温かさ。

これらを身につけていけば、必ず素晴らしいリーダーになれると、私は確信しています。

易経の教えは、何千年も前のものです。でも、その wisdom(知恵)は、現代にも十分通用するものなんです。皆さんも、日々の生活の中で、この「厚徳」の心を意識してみてください。きっと、新しい発見があるはずです。

最後に、私の座右の銘を皆さんにお伝えして、今日の話を終わりたいと思います。

「一人の百歩より百人の一歩」

リーダーは、一人で頑張るのではなく、多くの人と共に歩んでいくものです。そして、その歩みを支えるのが「厚徳」の心なのです。

皆さんの前途に、大いなる発展がありますように。ご清聴ありがとうございました。


参考出典

地は、形あるものすべてを限りなく載せている。大地の形勢、態勢は限りなく層が厚い。また、徳の厚み(厚徳こうとく)とは、受容の大きさ、深さ、そして度量の大きさをいうものである。万物を育む大地に習い、層の厚い、度量の大きい人間であれ、ということである。

易経一日一言/竹村亞希子

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