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KIZUNAWA

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記事一覧

【小説】KIZUNAWA①            全国高校駅伝長野県予選

【小説】KIZUNAWA①            全国高校駅伝長野県予選

 マネージャーを含めて八人の駅伝部、誰一人怪我をする事が許されない。そんな状況の中、彼らが選んだ戦術は、インターハイを捨て全国高等学校駅伝競走大会一本に勝負を賭けると言う事であった。
秋、長野県下において無名の上田北高等学校駅伝部は快挙を成し遂げる。全国大会出場の切符を勝ち取ったのだ。しかし、ゴール直後に彼らを襲ったのは、全国大会出場も危ぶまれる大悲劇であった。こんな状況の中、次々と駅伝部に襲い掛

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【小説】KIZUNAWA②          溢れ出た涙の理由

【小説】KIZUNAWA②          溢れ出た涙の理由

 楠太陽(くすのきたいよう)はスタジアムまでの送迎バスの中にいた。本来サッカー部の彼は駅伝部の応援スタッフとして最終中継所まで走って来た同級生の雅人を迎え入れ、襷を引き継いだ航平のジャージや私物を集めてゴールまで運ぶのが仕事だった。
雅人は、区間新記録をたたき出し、襷を繋ぎ終えた安堵感からか隣の席で静かな寝息を立てている。
太陽は雅人に自分のジャージを掛けると車窓から見えるスタジアムに目をやった

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【小説】KIZUNAWA③        誓いの葬列

【小説】KIZUNAWA③        誓いの葬列

誓いの葬列

 翌日の日曜日、太陽は練習に向かう途中、茉梨子の家に寄った。「心配かけてごめんね」茉梨子の母親は恐縮して言った。
「昨日から部屋に閉じ籠ってしまい、ご飯も食べないのよ」本当に心配している様子だ。
(今、家の前にいる)
太陽はM・ラインを送ったが既読にはならない。
(飯ぐらい食べないと駄目だぞ)
既読にはならない。
(また帰りに寄るから)
やはり既読にはならない。
太陽は茉梨子の母親

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【小説】KIZUNAWA④        繋げ俺たちの絆輪

【小説】KIZUNAWA④        繋げ俺たちの絆輪

 翌日の告別式は駅伝部とサッカー部、同級生は公休扱いで出席が許された。昌福寺住職の読経後、鎌田先輩の若い死に対して説教が述べられた。川島は今日も立っていられなかった。
 進行役の方が低くて静かな声でゆっくりと語り掛けた。
「最後のお別れです。どうか故人に持って行って頂きたい物がありましたら棺にお納め下さい。特にお手持ちのない方は、お配りいたしました生花を故人にお納め下さい」
航平の思い出の品が次々

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【小説】KIZUNAWA⑤        七番目のランナーを捜せ!

【小説】KIZUNAWA⑤        七番目のランナーを捜せ!

拡散された誹謗中傷

翌日からの駅伝部は練習よりメンバー集めに奔走していた。まずは運動部に所属していて、走る事に興味のありそうな生徒を中心に手分けして口説きまわった。しかし、残念な事に誰一人入部を希望する者はいなかった。スクールバスが到着するのを待って一般の生徒にチラシを配ろうとしたが、皆足早に教室に向かってしまうので、駅前でバスを待つ生徒に配ったほうが効率の良い方法だと思った茉梨子は翌日から駅

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【小説】KIZUNAWA⑥        七番目のランナー・太陽の決意       

【小説】KIZUNAWA⑥        七番目のランナー・太陽の決意       

七番目のランナー

太陽は、この日練習を休んだ。中三の時インフルエンザに掛かり休んで以来、久しぶりの事だった。誰もいない教室で一人、便箋に文字を綴っていた。

『この度一親上の都合でサッカー部を退部いたしたくお願い申し上げます』

自分に嘘を吐いて必死で綴った退部届、「良い! これで良いんだ」自分に言い聞かせて、便箋を封筒に詰め様とした時だった。
「相変わらず下手くそな文字だなー」
その声に

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【小説】KIZUNAWA⑦        七番目のランナー・僕では駄目ですか?

【小説】KIZUNAWA⑦        七番目のランナー・僕では駄目ですか?

 選手登録の最終日の朝、雅人は悪あがきと分かっていたが駅前に行ってみた。しかし、横川たちの姿はなかった。引田が申し訳なさそうに首を振った。雅人が諦めて学校に戻ると始業のベルが鳴っていた。達也と太陽が何かを話しながら昇降口に向かい、それを見届けた桜井が駐車場を出るところだった。
雅人は午前中の授業を、上の空で受けていた。昼食も取らず部室に向かった雅人は、皆が承認してくれたら正式にキャプテンに就任しよ

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【小説】KIZUNAWA⑧            大人たちの戦いが始まる

【小説】KIZUNAWA⑧            大人たちの戦いが始まる

 宮島はその足で校長室に向かっていた。ドアを四回ノックする。
「宮島です。お時間を頂けますか?」
「はい、お入りください」
上田北高等学校校長青山康助(あおやまこうすけ)の声だった。
「失礼いたします」
宮島が校長室に入ると校長は自席から立ち上がり、来客用のソファーに宮島を招き入れた。
「駅伝部の件ですね。最後のランナーは決まりましたか? それとも?」
「決まりました。今から高体連にエントリーをし

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【小説】KIZUNAWA⑨            テザー・二人を繋ぐ絆

【小説】KIZUNAWA⑨            テザー・二人を繋ぐ絆

 放課後、雅人は村田先生を訪ねていた。
「ご厚意を、無下にお断りする事になり申し訳ありませんでした」
雅人は礼儀を尽くした。
「無下ではありませんね。現に君はここにいるではありませんか」
「しかし、チャンスを頂いたのに」
「全国大会頑張りましょうね。陸上部はクリスマスを京都で過ごす事にしましたので、協力出来る事は何でもしますよ。サッカー部だけでは心許ないでしょう」
「ありがとうございます」
雅人は

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【小説】KIZUNAWA⑩         テザー・二人の合宿

【小説】KIZUNAWA⑩         テザー・二人の合宿

 太陽は横川たちの行動に注意しながら歩道をゆっくり歩いた。
「楠! お前サッカー部だろ。何でそんな女々しい事やってんだ?」
横川が達也と太陽を見つけて挑発して来たが太陽は無視をした。
「チッ!」
汚い音が聞こえて来た。達也が何かを言い掛けた。太陽はその仕草を敏感に感じ取ってさえぎる。
「達ちゃん行こう」
二人は横川を無視して駅に向かった。
「お前みたいな障がい者に何が出来る。笑い者になるだけだ! 

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