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色彩小説

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読んでいただいているうちに、自然と今必要だったりオススメの色がわかる、ちょっと不思議なお話です📚
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記事一覧

色彩小説:番外編〜パラレルな世界

色彩小説:番外編〜パラレルな世界

「なんで夢を見るか知ってる?」
ナツキはあきらかに教科書の入っていない軽そうなカバンを楽しそうに振り回している。
「おい!そこの女子!!あっ、女子じゃなかったか……」
「あんたねぇ!!」
「そんなだからモテねぇんだよっ」
「痛っ!!何すんの?!」

リョウタとナツキはいつもこんな感じだった。
仲が良いだろうけれど、ナツキはリョウタをちょっとめんどくさく思っているように感じていた。
「女の子って男の

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色彩小説:8月はメロンソーダ(仮) 第7話

色彩小説:8月はメロンソーダ(仮) 第7話

 3分で着く喫茶店まで僕は走った。

 目の前の喫茶店は穏やかな光が内側に灯っていた。

良かった、やってる。

***

「すみません、遅い時間に……」

「大丈夫ですよ。先ほどまでお客様がいらしたので、ぴったりです」

「良かった!!あの……読みました!!はやくマスターに会わなければと思いまして」

マスターは「座ってください。美味しいチーズケーキはいかがですか?」

「お願いします」

僕は

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色彩小説:8月はメロンソーダ(仮)第6話

色彩小説:8月はメロンソーダ(仮)第6話

 リョウタにはもう少ししてから話そう。

そう思いながら、それ以降リョウタに連絡をすることも、リョウタから連絡がくることもなかった。

少し寂しくもあったが、これだけ大きく物事が動くということは、そういうことなのかもしれないと感じた。

そして、会わなくなったからと言ってリョウタが繋げてくれた縁にはただただ感謝するばかりだ。

***

 
 家に帰ると大事に閉まっておいた白い封筒を取り出した。

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色彩小説:8月はメロンソーダ(仮)第五話

色彩小説:8月はメロンソーダ(仮)第五話

 あれから1週間。
 また出張がなくなり、午後に時間が出来た。

そして、あの日と同じ。
そのまま帰ってもいいとのこと。

これはあの場所に行けというメッセージなんだなと思いながら、お気に入りの駅弁を手に電車に乗った。

 マスターから受け取った白い封筒はまだ開けていない。
そして、リョウタからもあれから連絡がきていない。

 特に日常には大きな動きはなかった。
ただ、マスターとの出会いだけは普通

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色彩小説:8月はメロンソーダ(仮)第四話

色彩小説:8月はメロンソーダ(仮)第四話

 アールグレイの心地いい香りがする。

 僕が飲みたいと思ったものは、マスターは全部わかっているんだと改めて思った。
初めて聞くような不思議な話や心が読める人を目の前にしてもなぜか安心感があった。

 マスターはどうぞと美しい金色と水色のティーカップで香りの良い紅茶を出してくれた。

「お代はいりませんからね」

「それは……」

「話を聞いてくださっているあなたへのお礼です。あなたとリョウタさん

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色彩小説:8月はメロンソーダ(仮)第三話

色彩小説:8月はメロンソーダ(仮)第三話

 マスターの顔が一瞬、違う人に見えた。

なんでだ?

マスターは何かを察したように「ナッツ好き?」とカウンターに透明な小さなガラスの器を置いた。
そこにはクルミやカシューナッツが入っていて、僕の好きなナッツだった。

***

 「今日あなたが来ることは決まっていたんだけどね。相手のことがあるでしょ?
でも、わたしの中では70%くらいの確率であなたが来てくれると思っていたんです。遠慮せずに食べて

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色彩小説:8月はメロンソーダ(仮)第二話

色彩小説:8月はメロンソーダ(仮)第二話

 お店に入ると4組のお客さんが美味しそうなグラタンやケーキ、パスタを食べていた。

「空いてる席にどうぞ」

僕は不思議と導かれるようにカウンターに座った。

「パ……」 

「パスタは何味がいいのかな?だいたいのものは作れるよ」

「あ……じゃあ、明太子……いや、ミートソースで」

「明太子あるよ」

「それじゃあ、明太子でお願いします」 

「かしこまりました。少々お待ちください。大盛りで作り

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色彩小説:8月はメロンソーダ(仮)第一話

色彩小説:8月はメロンソーダ(仮)第一話

 「いらっしゃい」

 落ち着いた声のマスター。
 ログハウスのような喫茶店の中は、よく見かける常連のお客さんでいっぱいだった。

マスターが手招きして、カウンターの一番端の席に案内された。
予約席と書かれた手書きの白い紙が置かれている。

「予約席ですけどいいんですか?」
「お客様の席ですよ」

マスターは器用にウィンクをして、手作りのケーキを目の前のお客さんにお出ししていた。
「えっ?うそ!!

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