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最近の記事

2023年に出た音楽のなかで、気に入って聞いたもの

光陰矢の如し。恒例となりつつあるディスクガイドである。今年のおれの音楽的教養の発展はそんなにない。モードの制約は中々きびしい。米と魚ばかり食っている人間が、簡単に小麦と肉には切り替えられない。なに、ごたくはいいからさっさと聞かせろって? 熱心だなおまえは。上から順番にいこう。 オブ・ザ・イヤー的な観点においては発表が暮れに迫ってくるほど不利である。時間がなくて見つけてもらえないし、来年の今頃には忘れられている。しかし一年間ぶっつづけで聞いた明確なベスト・バンドが今年はいる。

    • 2022年に発表された音楽のうち、とくに気に入って聞いたもの

      中東やインドなんかの音楽も掘っていきたいものだ、などとグローバルなことを昨年末にふいた覚えがあるが、終わってみると西洋のギターロックに回帰した。これにはわけがある! 仕事だ。 おれの音楽的な洗礼はゼロ年代のロックンロール・リバイバルだったので、自信をもって語ることができるのもしぜん、そこから派生したものになる。仕事むけの音感のキャリブレーションのためにも、エレクトリック・ギターを含む音楽をとくに選んで聞いたのだ。はい、言い訳です、すみません。 十五年以上もポピュラー・ミュ

      • 歌詞英訳練習帳

        22/11/08 The Beths / Expert In A Dying Field - ザ・ベス / 終わりゆく分野の専門家 Can we erase our history? / わたしたちの歴史を消してもいい? Is it as easy as this? / けっこう簡単みたいだよ? Plausible deniability / 「もっともらしい否認」だね I swear I've never heard of it / もちろんこんな言葉知らなかったよ

        • 九割五分までできた仕事を、最後の精米にかけるための気持ちの整理

          https://twitter.com/rollstone/status/1580560729660194816 そういうわけで、気持ちを整理していきたい。わたしは何を怖れているのか? 行った仕事が回復不可能なほど面白くない、という事態が、明らかになることだ。 これは根源的な怖れであり、期待がそれを引きおこす。それが本当に面白くない場合、やっているうちにわかるので、自分に腹を立てながら捨てればよい。しかし九割五分まで持っていくことができる仕事は、やっているうちは面白いと思

        2023年に出た音楽のなかで、気に入って聞いたもの

          創作 - バビロニアの籤

           わたしの国では、幸福はくじ引きで分配される。そう聞くと外国の人々は、労働の対価がくじの番号札で配られるディストピアを想像する。東欧と砂漠のあいだの小国の出身であるわたしは、はじめのうち、この話を聞いた人々の驚きを、うまく理解できなかった。わたしの出身はバビロニア。風が旅を終え、渓谷の夜空に星々がまどろむ東の国だ。  資本主義社会でも、神意を占う未開の民族のくじ引きでも、おなじ話だ。くじ引きには、責任の放棄という快楽がある。わたしの祖国はこの快楽を社会制度に取り入れた。資本主

          創作 - バビロニアの籤

          Sallyって誰だよ? / ポップ・ソングスの歌詞中で、代名詞的な使われ方をする人名について

           ポピュラーミュージック史上もっとも有名なSallyは、Oasisの"Don't Look Back In Anger"に登場するSallyってことで、皆が手打ちにするだろう。Sally can wait、というくだりである。かつてうんざりするほど聞いたし、もう二度と聞かなくていいが、誰かがカラオケで歌い出すと合唱せざるを得ない。  十年前、恩師が戯れにこの曲の歌詞を印刷したものをみんなに配り、なあこのSallyって誰やと思う? みたいな話で一コマを手早く攻略していたが、そ

          Sallyって誰だよ? / ポップ・ソングスの歌詞中で、代名詞的な使われ方をする人名について

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          訳詞 - Fontaines D.C. / I Love You - フォンテインズDC / 愛してる

          I love you, I love you, I told you I do It's all I've ever felt, I've never felt so well And if you don't know it, I wrote you this tune To be here loving you when I'm in the tomb I've eddied the heart now, from Dublin to Paris And if there was sunshine, it was never on me So close, the rain, so pronounced is the pain 愛してる、愛してる、そう言っただろ それが感じたことのすべて、最高だった きみにわかるように、この曲を書いたんだ 墓の下で眠るときもここできみを愛し続けられるように おれの心はダブリンからパリに流れ着いた そこで太陽がのぼっても、おれは照らされなかった 近くに、雨、痛みだけがはっきりして Well, I love you, imagine a world without you It's only ever you, I only think of you And if it's a blessing, I want it for you If I must have a future, I want to with you Systеm in our hearts, you only had it before You only opеn the window, never open up the door And I love you, I love you, told you I do ああ、愛してる、きみのいない世界だなんて きみだけだ、きみのことだけ考えてる これが祝福なら、きみのためにある もしも未来があるなら、きみと一緒にいたい 心の仕組みを、きみはかつて一度だけ 窓を開いて見せてくれたけど、ドアは開けなかった きみを愛してる、愛してる、そう言っただろ Selling genocide and half-cut pride, I understand I had to be there from the start, I had to be the fucking man It was a clamber of the life, I sucked the ring off every hand Had 'em plying me with drink, even met with their demands When the cherries lined up, I kept the spoilings for myself 'Til I had thirty ways of dying looking at me from the shelf Cloud-parting smile I had, a real good child I was But this island's run by sharks with children's bones stuck in their jaws Now the morning's filled with cokeys tryna talk you through it all Is their mammy Fine Gael and is their daddy Fianna Fáil? And they say they love the land, but they don't feel it go to waste Hold a mirror to the youth and they will only see their face Makes flowers read like broadsheets, every young man wants to die Say it to the man who profits, and the bastard walks by And the bastard walks by, and the bastard walks by Say it to him fifty times and still the bastard won't cry Would I lie? 大量虐殺とべろべろの誇りを売りつける、わかるよ そこで生まれたんだ、生きるしかなかった 這いつくばって生き延びた、あらゆる手から指輪を盗んだ 兄ちゃん飲めやの声にも応えて、彼らの杯を飲み干した さくらんぼが並ぶころには、おれは腐ったのをとっといた 三十通りの死に方が棚からおれを見つめたときまでな おれが笑うと太陽が顔を出した、おれは幼い頃とってもいい子だった しかしこの島は子供たちの骨があごに詰まった鮫どもに動かされてる いまじゃ朝はコカイン中毒どもの話し声でいっぱいだ やつらの母ちゃんはフィナ・ゲール(※統一アイルランド党)で、父ちゃんはフィアナ・フォイル(※共和党)か? 奴らはこの国土を愛してるとは言うが、それが腐っていくのを感じない 若い衆に鏡をむけたところで映るのは奴ら自身の顔だけだ 花々を選挙広告のように読み込んで、若者はみんな死にたがってる 金をもらってるあいつと、お供の雑種に言ってやれよ お供の雑種に、お供の雑種に 五十回言ったってこの雑種は泣いたりしねえよ 嘘だと思うか? I love you, I love you, I told you I do It's all I've ever felt, I've never felt so well And if you don't know it, I wrote you this tune To be here loving you when I'm in the tomb System in our hearts, you only had it before Echo, echo, echo, the lights, they go The lights, they go, the lights, they go Echo, echo 愛してる、愛してる、そう言っただろ それが感じたことのすべて、最高だった きみにわかるように、この曲を書いたんだ 墓の下で眠るときもここできみを愛し続けられるように 心の仕組みを、きみはかつて一度だけ 木霊、木霊、木霊、光、消える 光、消える、光、消える 木霊、木霊 Selling genocide and half-cut pride, I understand I had to be there from the start, I had to be the fucking man It was a clamber of the life, I sucked the ring off every hand Had 'em plying me with drink, even met with their demands And I loved you like a penny loves the pocket of a priest And I'll love you 'til the grass around my gravestone is deceased And I'm heading for the cokeys, I will tell them 'bout it all About the gall of Fine Gael and the fail of Fianna Fáil And now the flowers read like broadsheets, every young man wants to die Say it to the man who profits, and the bastard walks by And the bastard walks by, and the bastard walks by Say it to him fifty times and still the bastard won't cry Would I lie? 大量虐殺とべろべろの誇りを売りつける、わかるよ そこで生まれたんだ、そこで生きるしかなかった 這いつくばって生き延びた、あらゆる手から指輪を盗んだ 兄ちゃん飲めやの声にも応えて、彼らの杯を飲み干した 喜捨の小銭がぼんさんのポケットを愛するみたいにきみを愛した おれの墓石のまわりの草が根絶やしになるまできみを愛するよ おれはコカイン中毒どものところへ行って、ぜんぶ言ってやる フィナ・ゲールのずうずうしさ(Gall)とフィアナ・フォイルの失敗(Fail)を言ってやる 花々を選挙広告のように読み込んで、若者はみんな死にたがってる 金をもらってるあいつと、お供の雑種に言ってやれよ お供の雑種に、お供の雑種に 五十回言ったってこの雑種は泣いたりしねえよ 嘘だと思うか?

          訳詞 - Fontaines D.C. / I Love You - フォンテインズDC / 愛してる

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          スタニスワフ・レム『地球の平和』感想

          (ヘッダー画像は国書刊行会ウェブサイトより。表紙カッコイイ!) 軍拡競争にほとほと疲れ果てた先進国は、すべての地球上の軍備を撤廃し、そのかわり自己を再プログラムする軍事AIを月に送り込んだ。軍事的均衡を維持するため、いかなる国家も月面で行われている軍事活動の内容を知ってはならないという取り決めのもと、超国家的な月面監視機関、ルナ・エージェンシーが設立された。 人類絶滅に繋がりかねない問題がこれでやっと解決され、地球はつかの間の平和を楽しんだ。しかし、すぐに新たな問題が現れ

          スタニスワフ・レム『地球の平和』感想

          ゲームとことば #1 『最果てのイマ』――「あなたの方が優れているわ、忍/私が全てを捧げるにふさわしい」

           七人の少年少女がいる。彼らはどこかの家の庭先で、BBQパーティーとお茶会を同時に行っている。焼き肉のタレが鉄板に落ちて、極悪な蒸気がヴェノアの香りをかき消すが、折しもいい風が吹いてくれる。  彼らはごくふつうの友人たちに見えるし、会話文におかしなところもない。この冒頭のシーンは、『お茶会-0』という掌編としてまとめられている。  つぎの掌編は、『最初の日』である。七名のうち五名は、おなじデザインの学生服を身につけている。眼鏡をかけたひとりはほかの学校のもの、もうひとりは

          ゲームとことば #1 『最果てのイマ』――「あなたの方が優れているわ、忍/私が全てを捧げるにふさわしい」

          『和香様の座する世界』雑感

           祖父が現世を去ったために天涯孤独の身となった主人公は、唯一の親類であり、いまは海外に居住する叔母が所有していた廃社に、寝所をもとめて転がりこむ。そこにあったのは、荒れ果てた本殿、人気の無い住宅兼社務所、打ち棄てられた井戸であった。これでは浮浪者とかわりないと、我が身の不幸を嘆きつつ境内で呆然としていた彼は、突如として謎の時空に取り込まれる。  そこは水の滴る地下洞窟なのだが、伏見稲荷のごとき千本鳥居が林立している。あまりに非現実的なことで、本能的な危機感を抱きながらも、彼

          『和香様の座する世界』雑感

          2021年に出た音楽のうち、気に入って聞いたもの

          black midiが新譜を出した。レコード自体はおれにとって非常に聞きづらいのだが、シアトルのラジオ局がもう10年くらいはやっているLive on KEXPという番組(Youtubeの映像を番組って言わないような気もするけど……)に出演していて、そのときのライブパフォーマンスがすごい。映像だと誰が何をやっているか視覚的に助けになり、理解が進むのもあるだろうが、いや、それにしたってすごい。 デビュー当時はドラマーの技術と独創性が曲を引っ張っていくようなバンドだったが、デビュ

          2021年に出た音楽のうち、気に入って聞いたもの

          格ゲー用語 日本語英語対訳表

          ※すべての用語はゲームに対する筆者の理解が深まった際に更新される。 ※英語話者にとってとくに理解が容易な逐語的単語(例:空投げ/Air throw)などについては、基本的に省いた。 22/10/06追記 - Oki, Tech Throw, Meatyについて改訂。 ---------------------------------------------------------------------------------- 格ゲー勢 / FGC (Fightin

          格ゲー用語 日本語英語対訳表

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          IDLES / WAR - アイドルズ / 戦争

          Wa-ching / ワ・チーン! That's the sound of the sword goin' in / 剣が鎧を貫く音だ Clack-clack, clack-a-clang clang / カッ! カッ! カカカッ・カッ! That's the sound of the gun goin' bang-bang / 小銃がバンバンと撃たれる音だ Tukka-tuk, tuk, tuk, tuk-tukka / ツカ・ツッ、ツッ、ツッ、ツカッ! That's the sound of the drone button pusher / 無人攻撃機のボタンを押す音だ Shh, shh, shh / シューッ、シューッ、シューッ That's the sound of the children tooker / これは児童誘拐犯の音だ Ahh (Ahh), ahh (Ahh) / あーっ! (ああっ!) Ahhh (Ahh), ahh (Ahh) / あーっ! (ああっ!) This means war, anti-war / これは戦争 War / 戦争の音だ! This means war, anti-war / これは戦争 Anti-war / 反戦の音だ! Send Sally to the sandbox, baby / サリーを砂場で遊ばせておけ Send Johnny into open fire / そのあいだにジョニーを前線へ Send Sally to the sandbox, baby / サリーを砂場で遊ばせておけ We're gunnin' for the stone-faced liars / おれたちは鉄仮面の嘘に誑かされてる Send Johnny to the sandbox, baby / ジョニーを砂場で遊ばせておけ Send Sally into open fire / そのあいだにサリーを前線へ Send Johnny to the sandbox, baby / そのあいだにジョニーを砂場へ We're dyin' for the stone-faced liars / おれたちは鉄仮面の嘘に忠誠を誓った And we're all going straight to hell / おれたちみんな地獄行き

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          Fontaines D.C. / No - フォンテンズDC / いいや!

          Give us all you got / おまえの持てるすべてを見せてくれ You're in love and then you're not / 愛したと思ったとたんに愛が終わった You can lock yourself away / おまえ自身を部屋に閉じ込めて Just appreciate the grey / 灰色を喜ぶことだってできるんだぜ You have hurt and you have lost / おまえは傷つけ、失った You're acquainted with the cost / そうすることのコストもわかっていた The one that comes with feeling deep / 支払いには感情が必要で You're still paying in your sleep / おまえはいまだに眠りのなかで悔やんでいる Yeah / うむ Now you're rolling in the dirt / 泥沼のなかで這いつくばって Playing up to what you're worth / 自分の価値を証明しようとしてるんだな And we know what freedom brings / 自由がなにをもたらすか、おれたちはわかってる The awful songs it makes you sing / 歌わずにいられなくなるひどい曲をもたらすのさ Don't you play around with blame / 炎上したっていいじゃないか It does nothing for the pain / おれたちの痛みとは関係がないよ And please don't lock yourself away / 頼むから部屋に閉じこもらないでくれ Just appreciate the grey /ただ、この灰色を喜んでくれ Yeah / うむ Even though you don't know / たといわからなくとも Even though you don't / わからなくとも You feel, you feel / 感じるだろう When you go down to that place / おまえがあの場所に行くとき It makes a monster of your face / おまえのうちの怪物の面が現れてくる It makes you twisted and unkind / 気難しくて不機嫌な怪物の面が And all the right words hard to find / そしてぴったりした言葉を見つけるのが難しくなるんだ There's no living to a life / そこに生活(ライフ)なんてものはないよ Where all your fears are running rife / おまえの怖れが実る(ライフ)ような場所にはね And you're mugged by your belief/ そしておまえはおまえの信じていること(ビリーフ)でいっぱいで That you owe it all to grief / その信じていることは、深い悲しみ(グリーフ)なわけだ? No / いいや! Even when you don't know / おまえがわからないときですら Even when you don't / わからないときですら You feel, you feel / おまえは感じる、おまえは感じている Even though you don't know / おまえがわからないときですら Even though you don't / わからないときですら You feel, you feel / おまえは感じる、おまえは感じている……

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          オリンピック開会式の感想

          「フィクションはメロディーであり、ジャーナリズムはその上にニューが付こうが、オールドが付こうがノイズなのである。」――カート・ヴォネガット 私のだいたいの感想はこの引用のもじりである。「文化はメロディーであり、金はノイズである」とでも言おうか。私は過去にアスリートだったので、もともとオリンピック――つまり、世界大会――を開催すること自体には賛成である。アスリートの生きている意味は、自分より強い人間と戦うこと、あるいは自分が世界で最強であると証明することにほかならない。その機

          オリンピック開会式の感想

          J.L.ボルヘス「シェイクスピアの記憶」 拙訳

           ペンギンブックス版のボルヘス全著作集(Andrew Hurleyにより英訳されたもの)を、ここ数年ぱらぱらと読んでいるのだが、巻末に収められた短篇 Shakespeare's Memory を日本語で読んだ覚えがどうもない。そこで調べてみると、やはり未訳であるとのことだった。遺作(なのかどうかはわからないけど)が未訳となっている理由については、鯨井久志さんの記事「失われた短編を求めて――ボルヘス唯一の未訳短編「シェイクスピアの記憶」について」に詳しい。ここで書かれているとお

          J.L.ボルヘス「シェイクスピアの記憶」 拙訳