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太陽の縁rjm of the sun
2023年9月18日 10:56
僕には、おじいちゃんもおばあちゃんもいなかった。だから、学校の友達が、たまにおじいちゃんやおばあちゃんに会いに行った話を聞くと、少し羨ましかった。僕が物心つく前に、ずっと昔に亡くなってしまったらしい。「おじいちゃんとおばあちゃんが欲しいのかい?」僕が古いアルバムを広げていると、アルバムの間から枯れ葉の体をした虫が、ひょっこりと顔を出した。丸い顔に可愛い黒目がこちらをにっこりと見て
2023年9月15日 21:01
私は、この小さな街で一番大事に作られた。沢山の願いが詰まった温かな身体に生まれた私は、誰に教わるでもなく、人の願いを聞き届ける魔法が使えた。それは、人の願い事を直接叶えてあげられない代わりに、叶えるために手助けができるものだった。例えば、失せ物を探している者には、それを思い出すきっかけを与えた。豊作を望む者には、作物の芽に大きく実るよう語りかけた。平和を望む者には、空に穏やかな天気が続く
2023年8月25日 21:47
草の分け目から、翠色に光る何かがこちらを覗いてくる。クローバーの雑草が頭に生えている。モサモサとした生き物だ。まん丸の大きな翠色の目が二つ、こちらを興味津々に見つめている。僕は大きな虫網を片手に、ぼーっと立ってその生き物を見つめていた。ヤドリギに似ているその生き物は、ヤドリギには無い目が付いていた。口がありそうなところは、髭の様に草が生えている。大きな木々がまっすぐ伸びた雑木林で、僕
2023年6月9日 21:05
まんまるの大きな月が空に浮かぶ頃、僕は屋根の上で真っ直ぐに立っていた。まるで一直線の黒鉄の棒のように、そして家を守る兵隊のように、真っ直ぐに立って空を見上げていた。昨日は大きな台風が近づいていて、荒れた空だったのが一転し、今日は穏やかな夜だった。「こんばんは!今日は風が穏やかですね」隣の石造りの屋根の上から、その人は僕に向かって挨拶をした。僕は、顔だけを向けて返事をした。正確には、体を
2023年5月29日 21:54
いつもの帰り道だけど、いつもと違う帰り道でした。もうすぐで夏休みなのです。男の子はルンルン気分で黒いランドセルを背中に背負い青い手提げ袋を片手に歩いています。明日は、校庭にある自分の朝顔の鉢を持って帰ります。男の子の朝顔は、毎日お水をあげて大切に育てているので、誰よりも早く花が咲きそうでした。多分、赤色の朝顔です。家に持って帰ったらきっと近いうちに花が咲きます。大切に育てた朝顔をお母さんに見
2023年5月20日 23:25
小さな、とっても小さな女の子が砂場で遊んでいます。空からは雨がしとしとと降っていました。女の子は雨の中、指先で砂場に絵を描いています。でも、せっかくの絵が雨水でに流されてしまいました。それでも女の子は繰り返し絵を描いていました。女の子は楽しくて仕方ありません。指でなぞったところが、雨水が流れていきます。じわじわじわ…。水が流れるとその絵は、違う絵に見えました。今度は立ち上がっ
2023年5月19日 22:05
いつも空を見上げては、今日こそは今日こそはと何かをブツブツと呟いています。何を呟いているのかさっぱり分からない、小さな男の子がいました。「雨が降らないかなぁ。雨が降らないかなぁ」と楽しみにしていました。ある日、晴れ渡る空から一滴の雨がぽつりと降ってきました。太陽も出ているピカピカな天気で、どこをどう見ても雨が降る感じではありません。男の子が不思議そうにしていると「あ!お天気雨だ!」と皆
2023年5月18日 22:17
その日は、5月なのに真夏の様な気温でした。夕暮れ時の太陽が、木々の葉の隙間から、こちらに顔を覗かせています。私は仕事帰りだったので、パソコンを入れた重たいリュックを背負って、駅まで続く一本道を歩いていました。今日は、どうしてこんなに暑いの?太陽は、今日そんなに暑くしたかったの?私は少し暑さにうんざりして、太陽に向かってそう独り言を言いました。もちろん、太陽はお話なんてしないので、
2023年5月17日 18:02
ここは、焼きたてのパンを売っている美味しいパン屋さん「ベーカリーアーク」。当店自慢の素材は雲の綿。パンの生地に混ぜたら、あら不思議。ふわふわでぽかぽかでもこもこしたパンになりました。お客さんは朝から長蛇の列です。開店を今か今かと首を長くして待っています。ふまふまとお客さんは待っています。ピーピロピロピロピーと回転のベルが鳴り響くと、パッと目を見開き店の戸口に駆け寄ります。あっというまに店
2023年5月16日 21:56
今日も僕は、ランドセルに夢を詰めて学校へ行く。国語、算数、理科、社会。体育に図工に家庭科に。知らないものはお気に入りの鉛筆に託して、先生の書く文字や絵を真似してノートに夢を広げる。授業中に僕は頭の中で夢を膨らませる。学校は知らない夢をいくつも見せてくれる。友だちが一人できた。僕の隣の可愛い子。友だちは僕の話を不思議そうに聞いて笑った。笑われた僕は少し腹立たしく感じたが、君が笑うの
2023年5月15日 21:29
この屋敷は本当に大きくて広かった。玄関を入ったら螺旋階段があって、2階にいくつも大きな扉があった。私は遠い親戚だったから、本当にたまにしか行くことがなかったけれど、初めて見た時には息を呑むほどだったことを今でも覚えている。ここには白くて大きくてふわふわな犬と、杖をついたおじいさんが1人住んでいた。それと、お手伝いさんが何人かいて、料理人が3人ほどいて、さらに庭師が2人いた。普通の家のサイズに
2023年5月12日 22:18
夢の先生は言いました。あなたはいつまで起きていて、いつになったら寝るのですか。眠くなったら寝て、目が覚めたらまた寝るのです。ただ、繰り返すだけなのです。とても大忙しです。そうですか。そうなんです。それでは、あなたは忙しい中眠っているのですね。そうなんです。実は、これでも忙しく眠っているんです。それは、大変なことですよ。心安らかにお眠りなさい。あははは。爆笑そ
2023年5月11日 20:33
夕暮れ時に道を歩いていると、黒い毛玉が道路の真ん中にあった。避けて通ろうとすると、横に伸びて道を塞いだ。跨ごうとするとベビの様に足首に巻きついてきた。どうやら置いていかないでほしいらしい。僕はこの黒い毛玉がランドセルに入るか試してみたが、割と厚さがある様で教科書や筆箱の隙間には入らなかった。手に持つと綿の様に軽く、風になびく毛は綿毛の様に飛んで行きそうだった。試しに撫でてみるが、猫の様に
2023年5月9日 20:56
そこは見渡す限り、全て海の様な水だけが広がってありました。一枚の大きな蓮の葉に一人、小さな子どもが立ってその手には長い蓮の茎を持っています。器用に船を漕ぐようにして浮かんでいる蓮の葉を避けて進んで行きました。まるで舟人のように、上手に漕いで行きました。透き通った綺麗な水でしたが、浅いのか深いのかは分かりません。夕焼け色の混ざる夜空の星を映しますが、夜空の輝きだけは飲み込んだように、少し怖しくも