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童話ー雨降り坊やー

いつも空を見上げては、今日こそは今日こそはと何かをブツブツと呟いています。
何を呟いているのかさっぱり分からない、小さな男の子がいました。
「雨が降らないかなぁ。雨が降らないかなぁ」と楽しみにしていました。

ある日、晴れ渡る空から一滴の雨がぽつりと降ってきました。
太陽も出ているピカピカな天気で、どこをどう見ても雨が降る感じではありません。
男の子が不思議そうにしていると「あ!お天気雨だ!」と皆が口々に叫びました。お天気でも、雨が付いては嬉しくない様です。
「あー大変!お布団が!」
「まあ大変!お洗濯物が!」
皆急いで庭やベランダに干している物を部屋に入れています。
でも男の子は雨が降って大喜び。
「雨だ!雨だ!」
男の子はキラキラと太陽の光で光る雨を見て喜び、空に向かって高くジャンプしました。
周りの人たちは何故喜んでいるのかさっぱりです。
でも男の子は楽しくて、向日葵の様な元気な笑顔になりました。

雨は空から降ってきます。
男の子は空と繋がる唯一の手段が雨だと思いました。
空と男の子の間にある小さな粒の冷たい雨が自分と唯一繋がるものだと感じていました。

すると、とても古い記憶が男の子に蘇りました。
実は男の子は水をエレメントとする天使だったのでした。
懐かしい記憶と一緒にこの広い空を感じた男の子は、両手を広げてまるで飛び立つ様に何度も高くジャンプしました。

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