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ゆっくり読みたい自分用マガジン

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2023年7月の記事一覧

【創作】すまいる~前編~

【創作】すまいる~前編~


①居場所配られた新しい担当表を見て俺は目を疑った。
どこを探しても俺の名前は見当たらない。
これまで担当だった伊藤病院から外されただけではなく、他の顧客先にも俺の名前はなかった。

「いいか!担当を新しくしてどんどんと営業を仕掛けていくから、来週までにしっかりと引き継いでおけよ!」

会議室に杉本部長の張りのある声が響いた。
周りの営業から次々と威勢の良い返事が聞こえるが、俺はどうにも納得がいか

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「一泊二日」 第一話

「一泊二日」 第一話

  ◇

 頭にきた。もうあんな男とは別れてやる。
 電話を切ってから、一時間近く経つのに、この腹立たしさが収まる気配はない。気がつけば、ベッドに座ったまま、膝の上で、ずっとこぶしを握りしめていた。開いてみると、手のひらにはじっとりと汗がにじんでいる。私はティッシュペーパーを一枚引き抜き、手を拭く。それをグシャグシャに丸め、ゴミ箱めがけて投げ入れようとしたが、角に当たってポロリと落ちてしまった。何

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連続X小説「光と影」①~⑳

連続X小説「光と影」①~⑳

 これは2人のライターの物語であり、私の編集者としての資質の無さを証明する記録である。

 その2人と出会ったのは90年代の終わり頃で、中野だったか新宿三丁目だったかの居酒屋だった。若手編集者同士の交流が目的のどこか合コンノリの飲み会で、K氏は酒癖がとても悪かった。

 飲み会には私が働いていた会社の男女各3名と、I社からK氏とN氏と女性1名。T社からは男性1名が参加していた。遠慮があったのは初め

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童話丨街クジラのマチクン

童話丨街クジラのマチクン

街クジラのマチクンのお話をするよ。
お母さんは毎日寝る前に布団の上で絵本を読んでくれるの。

・・・

「街クジラのマチクン」

海にいるクジラの仲間の中に、とてもとても小さいクジラがいました。みんなより泳ぐのが遅かったり、餌を見つけるのも大変で、いつも仲間達に支えられ助けられて生きていました。ある日その小さいクジラは考えました。

「ボクも何かの役に立ちたい。一体何ができるんだろう。」

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『オールド・クロック・カフェ』6杯め「はじまりの時計」(1)

『オールド・クロック・カフェ』6杯め「はじまりの時計」(1)

 その店は、東大路から八坂の塔へと続く坂道の途中を右に折れた細い路地にある。古い民家を必要最低限だけ改装したような店で、入り口の格子戸はいつも開いていた。両脇の板塀の足元は竹矢来で覆われていて、格子戸の向こうには猫の額ほどの前庭があり、隣家との垣で山茶花が蕾をつけている。格子戸の前に木製の椅子が置かれ、メニューをいくつか書いた緑の黒板が立て掛けられていなければ、そこをカフェと気づく人はいないだろう

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【Posters】

【Posters】

 僕の住む場所、それはとても静かな場所で、車で少し走ると小さなダムがある。そのダムは山の中にあって、まあ大抵のダムは山のどこかにあるのだけれど、とにかくそのダムは山の中にある。僕は時々、簡単なお弁当に、水筒に入れたコーヒーなんかを持ってそこに出かける。
 近所にあるパン屋のしっかりとした生地のサワー・ドゥを薄く切り、しっかりと両面を焼いて、粗熱をとってから山の向こうの牧場の隣で作って売っているチー

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