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カウボーイ・ビバップを淹れる:SFの意義とハードボイルド
序文
「おいスパイク、あがったぞ」
と、厨房から低く唸る声。
油のはじける音が船内に響き渡る。ほどよく焦げたピーマンのくすんだ薫りが、がらくた同然のボロ船のダクトを充満させている。しかし、絶対的な何かが足りていない。
「肉の入ってないチンジャオロースがあるかよ」
不貞腐れたように独り言つ、天然パーマの、背の高い細身の若い男が、ソファをブーツの硬いソールで軽く蹴り、宙
見送る岸辺、人間の家:芦奈野ひとし・ARIA小論
1.人の家
水の星アクア、海に沈みゆく町ヨコハマ。平成初期の漫画界、アニメ界に、穏やかな、しかし確かな波紋を残した、水にまつわる二つの作品がある。
「ARIA」、そして「ヨコハマ買い出し紀行」である。
天野こずえ氏による、未来形ヒーリング・コミックと評された前者では、近未来の火星がテラ・フォーミングを施され、また地球にかつてあった町を模して新しい町をつくり、あるいは移築を行ない、火星に
「アバター・ウェイ・オブ・ウォーター」の遠い浅瀬
Oel ngati kamänge, Avatar: The Way of Water.
僕はひさしぶりに、こんなに退屈な映画を観た。
映画は3時間弱。Disney+での鑑賞だったが、全くの苦痛だった。別の作業を合間に挟みながら、どうにか断続的に観終えた。しかしながら、素晴らしい命のきらめきもあった。なぜ僕はこの映画を観たのか、途中退席をせずに観通したのか。話したいことは多い。
「アバタ