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【簡単あらすじ】Dの殺人事件、まことに恐ろしきは(微ネタバレ)【歌野晶午/角川文庫】

1.人間椅子⇒萩原朔太郎激賞作品
2.押絵と旅する男⇒幻想小説の金字塔
3.D坂の殺人事件⇒明智小五郎初登場
4.お勢登場⇒悪女小説の白眉
5.赤い部屋⇒怪奇探偵小説
6.陰獣⇒本格探偵小説の頂点
7.人でなしの恋⇒静かなる傑作ホラー短編

上記のように、江戸川乱歩さんの名作七編を、歌野晶午さんが現代テクノロジーや社会問題を混ぜ込んでアップデートしたミステリ短編集です。



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『はじめに』
酷かった花粉の飛散もようやく収まり、窓を開けると爽やかな風を感じるポカポカ陽気という、絶好の読書シチュエーションを得られる時期が到来しました。
ですので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりした本の感想を書こうと思います。
このレビューを読んだことで、作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。

以前、江戸川乱歩さんのレビューを二回している上、

それを題材に歌野晶午さんが現代テイスト作品として仕上げた短編集ということで大変興味が湧き、迷うことなく購入した一冊です。



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1.椅子?人間!

人気作家の原口のもとに、かつての交際相手兼作品のアドバイザーである渡辺からメールが届く。
渡辺は、原口に復縁を求めているのではなく、自分を捨てた原口への復讐を考えていると告げる。
そのための道具は、原口の部屋のソファー

2.スマホと旅する男

軍艦島観光を予定していた私は、台風が迫っているという理由でキャンセルになってしまう。
諦めきれずぼんやりしていると、スマホで恋人と通話しながら観光している男から一緒に行かないかと誘われる。 

3.Dの殺人事件、まことに恐ろしきは

興信所の調査員である私は、少年・聖也と成り行きで仲良くなり交流を深めていた。
ある時、聖也とダイニングバーで食事をしていると、そこから見える個人商店で人が死んでいた。
その後、現場周辺の防犯カメラを調べたが不審者は見つからず…

4.「お勢登場」を読んだ男

東京・新宿で喫茶店を経営していた太郎。
その関係で、TVディレクターの裕子と結婚することになる。
しかしその後、喫茶店経営につまずき閉店。
裕子は浮気が疑われるような素振り、さらには認知症の裕子の父親の介護をすることになった太郎は、心身ともに疲れ果て舅の殺害計画を立てる

5.赤い部屋はいかにリフォームされたか?

スナッフフィルムの上映会など、日常からかけ離れた異常な興奮を求めた7人の男たちが「赤い部屋」に集まっていた
いつもと違った雰囲気なのは、新入会員のTの身の上話を聞いたからなのか。
さらにTの手には回転式の拳銃が握られており、「そうら、撃つよ。これでめでたく百人殺し達成だい」と言いながら、引き金を引いた…

6.陰獣幻戯

「自分は性的に異常なのではないか」と時々思うことがある
そう語る彼は、有能な教師として高校の副校長の地位に就いている。
今彼が気になっている女性は、北欧の家庭用品セレクトショップ店長の芝原。
芝原との交流を深めていた彼は、芝原から大江春泥と名のる者から不気味なDMを送られたと相談を受ける。

7.人でなしの恋からはじまる物語

私は、スマートフォンのゲームにハマっていた。
しかし、そのゲームが一因となり、現実で夫である真庭一騎を殺してしまい、懲役三年の刑期を終えた後、必要に迫られ70歳の男性と結婚することになる。
男との結婚生活は苦痛でしかなかったが、服役中に刑務所内で唱えていた「しあわせを呼び込むおまじない」に謎が隠されていて…

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上記の七編で、文庫本の題名ともなっている「Dの殺人事件、まことに恐ろしきは」がとても心に刺さりました。

私も、仕事上、老若男女・様々な性質の方と交流があり、日常から言動に気をつけていますので他人事とは思えない部分がありました。

ただ、主人公は「興信所の従業員」という設定だったので、そういう人間であれば、もう少し慎重な行動を取ることも出来たのでは?と思うところがあったり、心情的にも彼に同情する部分はあまり無かったです。

各編、江戸川乱歩の名作を現代風にアレンジし、現代の最新技術を用いたトリックは意外性もあり楽しめました。

全体的にテーマは爽やかなものではありませんが、作者さんの力量もあり、読了後に落ち込んだ気持ちを引きずらないような作品になっているおススメ作品です。

原作を読了していなくても充分に楽しめますが、原作と併読するとなお楽しめること請け合いです。


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