27. 新宿カールモールへ導かれて。

会社を辞めてからの日々は、空っぽになるかと思いきや案外忙しかった。

その要因の大半は、新宿カールモールというライブバーである。

新宿カールモールは、新宿一丁目にある。1970年創業、つまり来年には50周年を迎える老舗だ。
創業者は80歳になる小倉さんというマスター。現在はマダムと呼ばれる女性が経営を引き継いでいる。

私をカールモールに連れてきたのは、現在もカールモールで働く関根くん。金魚というユニットをやっている。
私が弾き語りで渋谷のラストワルツに出演していたとき、対バンで出会った。ふわふわした男の子で、楽屋でひたすら懐メロを自分流にアレンジして歌い続けており、ライブをやれば同じようにふんわりしたお客さんがたくさんくる。そのお客さんも含めて、終演後に少し飲んだのを覚えている。
(そのときに会った人とはほとんどその後カールモールで再会することになる)

帰り際に、関根くんに「蓮理さんに会わせたい人がいるのでよかったら今度カールモールに来てください」と言われた。ライブのブッキングをやっていると言っていたので、ライブ出演に誘ってくれてるんだなと思ってTwitterをフォローし合って別れた。

余談だが、その日の対バンだったもう一人の男が関根くんと対照的に妙にギラギラしていて、二人になったときに「今度家に行っていい?」などと言い出したので非常に気持ち悪く、それもあってその日のことはよく覚えている。

そして後日、カールモールに行った。関根くんの言う「紹介したい人」というのは、マダムのことだった。

カールモールは昭和レトロのゴージャス感と懐かしさを併せ持つバーである。絨毯は真っ赤で壁紙は国会議事堂と同じ金唐紙。入り口には重厚な木扉があり、容易に足を踏み入れられる雰囲気ではない。ここでライブをやっていることが最初とても不思議だった。

ちょうど、私が会社に対して悩み始めた頃のことだ。

マダムも元々会社員を経験している人だった。私が会社で話せないこと、溜め込んでいることを何気なく話しても、すっと吸収していってくれる安心感があった。

気付くと私は、カールモールによく出演するようになっていた。


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