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サマーゴースト

――語り出せばいくらでも魅力を語れるくらいに好きなんですが、改めて『サマーゴースト』という映画を観て思ったことは、「ああ、僕はやっぱりこういう物語をつくりたいんだな」ってことでした。


人生は物語。
どうも横山黎です。

作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。

今回は「久々に映画『サマーゴースト』を観た」というテーマで話していこうと思います。


📚『サマーゴースト』を再試聴

昨日、アニメ映画『サマーゴースト』を観ました。イラストレーター、漫画家、小説家、映画監督……と幅広く活動されているloundrawさんが初めて監督を務めた映画です。

loundrawさんのことを知らない人に分かりやすく紹介すると、『君の膵臓を食べたい』や『余命10年』といった小説の表紙を描いている人です。あとは、名探偵コナンの映画のイメージボード(絵コンテみたいなもの)を担当されたこともありました。

そんなloundrawさんの初監督映画『サマーゴースト』が公開されたのは、2年半前。2021年の秋でした。

当時からloundrawさんの活動には注目していて、ついに初監督作品が公開されるということで気になっていました。もちろん映画館に行って観てきたんですが、予想通り僕好みの作品で、ぐっと心が掴まれたことを思い出します。

サマーゴーストのあらすじをさらっと共有しますね。

花火をすると現れるというサマーゴースト。その存在が気になって、かつて飛行場だった場所へやってきた3人の高校生たちの物語です。実際、花火をしていると本当に女性の幽霊が現れました。ただ、サマーゴーストいわく、彼女の存在は誰にでも見えるわけではなく、死が身近にある人にだけ見えるらしくて……。

生死が交錯する夏の夜に弾ける青春を描いた物語です。最後には冒頭の伏線が回収されてどんでん返しの展開が待っています。



📚謎と青春と伏線

さて、『サマーゴースト』を再試聴して思ったことをつらつらと語っていきますね。

アニメとか映像に関しては詳しくないけれど、背景の色彩がとにかく絶妙で、ノスタルジックな印象を受けます。それでいて、言い方が難しいんですけど、キャラクターの造型が無機質で、素朴なんですね。良い意味でリアルがないんです。レビューで、「自主製作映画っぽい」という指摘があったけれど、まさにそれで、いわゆる自主製作映画にある手作り感、アナログを感じるタッチなんです。

背景とキャラクターとで相反するような描かれ方をしているんですが、共通しているのはノスタルジックってこと。「青春」とか「なつかしさ」を描くにはもってこいの映像なんですよね。

物語に目を向けてもこれはこれで絶妙で、40分という短い上映時間であるにもかかわらずキャラクターたちの感情の揺れ動きも成長も描かれている。謎も、伏線もあるんだけれど、それらを描くことが目的とならずに、手段となっている。謎や伏線以上に、感情の揺れ動きや成長が丁寧に描かれているんです。

あと、取り合わせがすごく良い。

語り尽くされてきたから当たり前のようではあるけれど、「夏」と「幽霊」の相性は抜群だし、「夏」と「青春」という相性もいい。夏の風物詩であるから「夏」と「花火」の相性がいいことは言うまでもありませんね。「花火」には鎮魂の意味もあるから「幽霊」につながるし、思春期の人たちは何気なく未来を憂えて生死について考えることがあるから「青春」と「幽霊」のつながりもある。

また、物語のなかで幽体離脱して街を飛び回るシーンがあるんですけど、幽体離脱するのは、サマーゴーストと出会ったかつて飛行場だった場所。「幽霊」「幽体離脱」「飛ぶ」「飛行場」にもつながりを感じられるんですよね。

こんな風に、語り出せばいくらでも魅力を語れるくらいに好きなんですが、改めて『サマーゴースト』という映画を観て思ったことは、「ああ、僕はやっぱりこういう物語をつくりたいんだな」ってことでした。


📚こういう物語をつくりたい

僕は今、謎解き体験コンテンツ『花火の幽霊~木の家ゲストハウスからの脱出~』の物語をつくっています。僕の職場は木の家ゲストハウスという宿泊施設なんですが、そこを舞台にした謎解き体験イベントを開催しようと考えておりまして、目下、その物語を制作中なんです。

謎解きサークルを運営したり、街とコラボした謎解きイベントの謎を作成したりと、精力的に活動している友達のしゅんちゃんとの合同企画で、僕が物語をつくって、彼が謎をつくることになったのです。

しゅんちゃん

タイトルは『花火の幽霊』と決めました。木の家ゲストハウスでは大学生が合宿の場所として利用してくれることがあるし、BBQや花火もできるので、取り合わせが良いと思ったんです。

タイトルを決めて、ああでもないこうでもないを繰り返しているうちに、展開が5つくらいできちゃったんですね。早く書き上げなきゃいけないのにどうしようと途方に暮れているなか、そういえば僕の書きたいこと、つくりたいことって、『サマーゴースト』に通じているんじゃね?と思ったんです。

これは本当に誤解されちゃう気がするんですけど、『花火の幽霊』というタイトルは別に『サマーゴースト』を意識したわけでは全くなくて、考えに考え抜いた結果、「これだ!」と絞り出したものなんです(タイトル案は30個くらい考えた)。ただ、最近気付いたんですが、タイトルも、考えているストーリーの方向性も、サマーゴーストっぽいんですよね。

その良し悪しはさておき、自分の心に従った結果行きついたのが、『サマーゴースト』だったってことは、それだけ僕の描きたいこと、書きたい物語が『サマーゴースト』に似通っているってこと。つまり、『花火の幽霊』を完成させるためのヒントが『サマーゴースト』にあるということです。

だから、僕は昨日、『サマーゴースト』を再試聴したんです。物語の鍵を探すように、映像に食い入りました。

結論からいえば、やっぱり僕はこういう作品が好きだし、こういう物語をつくりたいと再認識することができました。そして、映画を観終わった後で紙面に筆を走らせていくと、今までにないアイデアが生まれました。『サマーゴースト』からもらった鍵で、新しい未来が開かれたんです。

何もないところから新しいアイデアは生まれません。心が行きたがっている方向に鍵が転がっていて、それを拾い集めた先で新しいアイデアの扉を開くことができる。そんなことにも気付かされた映画でした。

『花火の幽霊』はもう少しで完成します。大丈夫。前進はしている。きっとステキな物語をつくれる。そう信じて、これからもせっせと創作と向かいっていきますわ。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20240525 横山黎










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