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映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』感想

予告編
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 明日、6月9日にWOWOWにて放送予定の本作。

 21日と29日にも4Kで放送予定なんだとか(21日は日本語吹替版)。


 公開当時、っていうか公開初日の最速上映鑑賞後、興奮冷めやらぬままに書いた感想文です。時間が経ってから読み返すと、当時の興奮ぶりを思い出します。我ながら若干引いてます笑。そして無駄に長文。

 まだ『MORE FUN STUFF VERSION(もっと楽しいバージョン)』を観る前の感想文ですが、もしよければどうぞー。


救済


前置きみたいな話

 2022年一発目。なんという素晴らしい幕開け。そして新年早々、断言します。今年ナンバー1です笑。“人生で一番好きな映画” や “最も感動した映画”、その他にも “笑った”、“泣いた” 等々……、何かしらについて「一番」と呼ぶに足る作品は他にもある。けれど、殊「面白かった」という点で言えば、人生で一番面白かったと呼ぶに足るかもしれません。そして、映画を観ていて本作以上に「面白かった」と思えることが今後一生来ないかもしれない。いやもちろん、観終わった直後の興奮冷めやらぬ精神状態だからこその意見かもしれないけど、それぐらい素晴らしかった。今まで軽々しく使っていた言葉ですけど、今回は胸を張って言葉にしてみましょうか……文字通り、“最高” でした!

 とりあえず言えることは、予告編やTVスポットなど公式から出ていた情報通り、過去のスパイダーマン映画——サム・ライミ版の初期三部作とマーク・ウェブ版の『アメイジング』二作品——のヴィランが登場するので、もし観ていないのであれば観た方が良い。そして、ジョン・ワッツ版のホーム二作品も。……いや待てよ? それでいうと『シビル・ウォー』やら『アベンジャーズ』やらMCU作品も観なきゃいけないのか……? まぁそれはともかくとしても、過去のスパイダーマン映画、今挙げた作品群は観ておいた方が良いと思います。むしろ「みんなもちろん観ているよね!」ぐらいの仕上がり。っていうか本作未見の方は、絶対に本項を読まないで欲しい。ネタバレ注意です。何よりもこれが一番大事。人によっては「ネタバレとか全然気にしないよ」という方もいらっしゃるかとは思いますが、それでも読んで欲しくない。「これだけは読まなければ良かった」だなんて手遅れになってからでは遅いですしね。勝手な要望ですみません。何卒よろしくお願いいたします。

 ちなみに前置きが長いのは、知らずに本項を読み始めた方の視界にネタバレに繋がるワードがうっかり入ってしまわないように配慮したためです……という建前で許して下さい。白状すると、鑑賞直後で想いが溢れて止まらなくて、つらつらと思いついたままに言葉を垂れ流しているから不必要に長くなっているだけなのです。読み手の気持ちを一切考えていない、感想文とすら呼べない、もはや日記みたいな感じよね。



そろそろ本題へ


 『アベンジャーズ/エンドゲーム』(感想文リンク)の時もそうでしたけど、初日のIMAX上映回は一瞬で席が埋まってしまいました。よく取れたもんです。そして、そんな争奪戦を乗り越えて初日の上映一発目にやって来たお客さんは、きっと言うまでもなくスパイダーマンが大好きな人に違いない

上映中、様々な場面で、日本の映画館とは思えないくらいの歓声や拍手が起こっていました。斯く言う私も……というか全員だったんじゃないかな笑。もちろん、そのリアクションは「マジかよ!」みたいな驚きでもあるんですけど、それ以上に「ついに来た!」のような歓喜の成分がとても濃い驚き。前作『ファー・フロム・ホーム』のラストにJ・ジョナ・ジェイムソン(J・K・シモンズ)が登場して以来、スクリーンの外で起きていたことの全てが本作の伏線になっていたからこその興奮が詰まっています。


 『エンドゲーム』はMCU一作目の『アイアンマン』から始まって約10年という重みがありましたけど、本作は、サム・ライミ版一作目の『スパイダーマン』から考えればおよそ20年近くという重み。こうなると、過去のスパイダーマン映画を劇場で観ていた人達が羨ましい。僕が初めて観たのはたしか高校生くらいの頃。また、過去作のヴィランが出るということで、この機会に初めて一作目から観た方も多かったと思うのですが、この空いた歳月が長ければ長い程、本作は感動できる。興奮する。胸に刺さる。んぁあっ! 言葉じゃ足りない! これまでの『スパイダーマン』を「当然、みんな観てるよね?」と言わんばかりの内容でした。


 余談ですが、一番の伏線はソニーとマーベルによる契約絡みのニュースだったのかも。前作のラストであれだけ匂わせておいて「え? トムホのスパイダーマンはもう観られねえの?!」という不安や絶望がファンを襲った。そこから〈トムホの電話での直談判〉だとか、様々なニュースを経ての公開。それだけで胸がいっぱいだったのに、本作はファンの心を喜びや感動で埋め尽くすような物語でした。



 いきなりマッド・マードック(チャーリー・コックス)が出てきた時は、歓声というよりは笑いみたいな声が多かった。「こっちも出てくんのかよ!」ってね。まぁそんなサプライズを逐一挙げていたら切りが無いのですが、一番のサプライズは、他バースのスパイダーマンの登場シーン。まぁサプライズと言ってもお客さん皆が予期していたに違いない共演なんでしょうけど、登場の流れが素晴らしい。

 誰かのピンチに突如現れるとか、めちゃくちゃ燃える展開で満を持しての登場とかではない。ネッドがポータルを開くというサプライズと、道具を使っていたとはいえネッドにその素質があると匂わす展開によって一瞬だけ気を逸らされ、そのタイミングで登場する。まんまとやられた感じ。というわけで、三人共が “ピーター” なので、他のバースから来た二人のスパイダーマンのことは形式上 “トビー”(トビー・マグワイア)、“アンドリュー”(アンドリュー・ガーフィールド)と表記します。悪しからず。


 そこから最終決戦にいたるまでの物語は、ある種ファンのためのシーンだったと言っても過言ではないんじゃないかな。
 そして、わかっている、わかってはいるんです。感動シーン、胸アツ場面は、皆が同じことを口にするはず。わざわざ言わなくても良いことなのは重々承知なんだ。でも鑑賞直後で、ちょっとマジで止められそうにないのです。感想を一度ちゃんと言語化して、頭の中で整理して、友人との今後の映画談義に備えたいのです。本編で描かれたことをなぞるだけの文章が続くこともあるかとは思います。どうかお許しください。


 親友の存在を訊ねられたトビーが「いた」「自分が殺した」とハリーのことを語った時のネッドの「…えっ……」という顔も、「ピーター」と呼んだ時に三人共が返事するのも、トビーとアンドリューの彼女事情の会話も、映し出される何もかもが面白いし感動するしで、笑いと感動が見事に共存していました。その後の三人だけのやり取りも堪りません。ウェブシューターを用いらないトビーをいじったり、アンドリューのことを「アメイジングだ」と評したり、それぞれが戦ったヴィランの話をしたり……。自由の女神像の改修工事用の足場で、時間は夜だから周りに誰もいない。しかも建築作業時に使われるメッシュシートに覆われているから、誰にも見られていない。周囲と隔絶されていることがわかる、三人だけの会話シーン。まさに夢のような奇跡の時間を観客にプレゼントしてくれた。
 そして、いざ戦いが始まれば、スウィン グからの着地で大見得を切るようなポーズを決めるスパイダーマンのトリニティ・シーンもある。アメコミヒーロー映画だもん! これぐらい思い切って出来ちゃうのは、もはやアメコミ映画の特権だと思います!

 だらだらと長くなりましたけど、本作で描かれているのは、そんなファンサービスだけではない。「まだ子供」と甘い考えを指摘されても、「ヒーローではなくただの犯罪者」と非難されても、全ての者を救おうとし続ける本作。それはヴィランどころか、スパイダーマンを含めて過去の全てを救済してくれたんです



 過去作ももちろん素晴らしかった。当然大好きです。決して否定するわけではない。しかし、事態のほとんどがヴィランの死によって解決されていた印象もあったんです。どんな理由があろうと善良な人々の命を脅かす真似は許されないけれど、実験に巻き込まれたり、事故にあったり、或いは自身の体を治そうとしたり、精神的な苦しみから逃れるためだったり、ヴィランの心に寄り添う余地が無いわけではない。不幸な偶然から生まれたその〈ギフト〉が「この力のせいで」という〈呪い〉になってしまったヴィランたちを救済する、そのための戦いでもあった。一度終わってしまったものを取り返すなんて、本来はできない。もしもそんなことをしてしまったら、それ自体が軽いものになってしまう。これは『スパイダーマン』という看板あってこそ可能な物語。サム・ライミ版があって、マーク・ウェブ版があって……。そういった歴史があるからこそ生まれた映画。そういう意味で言えば、最近観た『マトリックス レザレクションズ』(感想文リンク)にも似た、ある種の “メタが許される” 特別な力があると言えると思います。



 そしてこの救済の及ぶところは、ヴィランだけに留まらないのが一番の肝。足場が崩れ落下するMJ(ゼンデイヤ)を救うためにピーター(トム・ホランド)が飛び出す……だがノーマン/グリーン・ゴブリン(ウィレム・デフォー)の妨害によって、彼が伸ばした手は虚しくも彼女には届かない。しかしその窮地を救ったのが他の誰でもないアンドリュー。これと全く同じ流れでグウェンを失った彼は、助けたMJを抱えながら涙を流す。「今度は救えた」という想いか、「あの時も……」という想いか。それらが混在したような涙。また、救いの手を跳ね除け牙を向け続けるノーマンに対し、メイおばさん(マリサ・トメイ)を殺された怒りから彼を殺そうとするピーター。知ってか知らずか、彼の死因になったグライダーを使って……。しかし、それをトビーが止める。

MJを救った、ノーマンを救った、それだけじゃない。もう救われることはないだろうと思われていたトビーとアンドリューの後悔や無念までをも救ってみせてくれた。まさしく魂の救済。


 その他、サム・ライミ版の『スパイダーマン』シリーズ内でベン(クリフ・ロバートソン)を殺したフリント(トーマス・ヘイデン・チャーチ)を救うトビーの姿も、戦いの後に会話するトビーとオットー(アルフレッド・モリーナ)、アンドリューとマックス(ジェイミー・フォックス)の姿も……、もう挙げたら切りが無い。一つだけでは収まらない、様々なカタルシスが詰まった一本。そして何よりも、ファンの心までをも浄化してみせた大傑作。上映時間が149分? そんなもん信じられないくらい、あっという間の149分でした。



 ご存知の通り、MCUにベンおじさんは出ていません。MCUの性質上なのかわかりませんけど、これまではトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)がその代わりのような存在でした。しかし、サノス(ジョシュ・ブローリン)らとの戦いでトニーを失い、そして本作でメイおばさんまでも失ったピーター。そこにトビーとアンドリューが現れるというのも見どころ。同じ痛みを知り、同じ力を持つ存在で、どこか兄のようで親友のようである他バースのスパイダーマン二人が、ある種ベンおじさん的な存在にも見えてくるという、『スパイダーバース』(感想文リンク)にも似た不思議な感覚がありました。親友や恋人以外にも頼れる人が現れた。



……だからこそ、締め括りはしんどかった。ピーターが一番失っている。MJに何も言えなかったのは額の傷を見たからか? トビーとアンドリューが「素性は隠すもの」と言っていたからか? 最期の最後になってようやくハッキリとしたサブタイトルの意味に観客が息を呑む中、それでも “スパイダーマン” として立ち上がるピーター。そして終幕。拍手喝采。彼女を想って真実を隠したスパイダーマンが描かれたサム・ライミ版の一作目のラストと、戦いの果てに大切なものを失っても尚ヒーローとして立ち上がったスパイダーマンを描いたマーク・ウェブ版二作目のラストの両方を彷彿とさせられる瞬間でした




 ひとまず、これにて終わり。でも、「もしかしたら……」だなんて期待をしてしまう。とりあえずスパイダーマンのことは忘れられていないっぽいし、可能性はある。後になって聴かせるという約束のあの言葉をピーターが言わなかった時は「言っちゃえよ!」と思ったけど、ここで言わなかったからこそ、今後に持ち越せるわけですしね。唯一救われていないようにも見えるピーターを救う瞬間が、いつの日か来ることを祈らずにはいられません。


 マジでめちゃくちゃ面白かった、けどめちゃくちゃしんどいラストでもあった。なんだコレ、感情の忙しなさが凄まじい。全然話を理解できないエディ(トム・ハーディ)のユーモアや、MCU版のヴェノムなんかを期待させるラストカットが描かれたミドル・クレジット・シーンも良かったけど、それだけじゃ補えないくらいしんどい。

……けど、また何度も観に行きたくもなる笑。もうIMAX一択。全編IMAXですしね。さて、もう一度観に行く前に柳生さんの動画もチェックしとかなきゃ。


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