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映画『マトリックス レザレクションズ』感想

予告編
 ↓


「みんなのフォトギャラリー」で見つけた本作の公式画像を使っていますが……
≪大ヒット上映中≫
って画像に書いてあるけど、まあ公開当時に書いた感想文なので、もちろん現在は上映していません笑。(リバイバルとかはあるかもしれないけどね)


メタ


 まさか続編が出るとは思わなかった。僕は『マトリックス』直撃の世代ではないし、スピンオフの『アニマトリックス』も観ていない。1999年から始まる『マトリックス』三部作(以下:トリロジー)しか観ていない。……何より僕の解釈が正しい自信が(ここ数年の中でも断トツに)無いので、本項で述べることは普段の感想文以上にふわふわしてしまいそう。 一つだけ言えるのは、本作はなかなかの “一見さん殺し” なので、トリロジーは観ておいた方が良いかもです。ネタバレに関しては……まぁ文字だけで理解できるタイプの作品ではないから、ネタバレしても問題無いか笑。



 「過去作を観ておいた方が良い」だなんて簡単に言えてしまうのは、現代では配信サー ビス等で容易に過去作を観直すことができるから。過去の名作やビッグタイトルの続編が増えてきたのはそういう背景もあって、興収が見込めるからなのかな?

それはさておき、逆に今、過去の作品を観られてしまうからこそ、『マトリックス』は新たな解釈を引っ提げて復活したのかもしれません。



 繰り返しになるけど、僕は『マトリックス』の世代じゃない。最初の出会いは金曜ロードショーか何かだった気がする。その時点では既に目新しさを失っていたかもしれない本作を初めて観たその時は、正直言うとよくわからなかった。けど、その哲学チックな世界観とキメキメのビジュアルや演出が中二心を揺さぶったのは言うまでもない。きっと公開当時はかなりのインパクトだったのかな?

しかし、その ”強過ぎる印象” と、”過去の作品を今でも簡単に観られる時代” が相俟って、今や『マトリックス』は作り手の想いとは異なる形で人々に認識されていたらしい。



 実を言うと僕自身も、先述のキメキメのアクションや哲学チックなセリフの乱反射が好きで観ていただけだった。しかしどうにも本作の ”それ” は、過去作とは様子が違う。期待していたのとは違ったんです。けれど、だからこそド肝を抜かれた。

そもそもの世界観だからこそ許されたメタ的な演出の数々が、「もしやこれは作り手の想いなんじゃないか」と思わせてくれて、そんな視点で鑑賞すると面白さが格段に跳ね上がる。

アクションが好きだった
キメキメの感じが好きだった
哲学チックな言い回しが好きだった

——そんな気持ちもわからんではないから、本作を嫌う人の気持ちも充分にわかるけど、個人的にはメチャクチャ楽しかったです。



 マトリックスの世界を表す緑がかった色彩が極端に減っていた本作。たったそれだけで、過去のマトリックスとは様子が違うことがわかると同時に、時折挟まれるトリロジーの映像との差が明確になる。

その他、背景にさり気なく置いてある、殴られ顔のスミスの像や、冒頭に始まる既視感だらけの、でもどこか様子が違うアクションシーンなどなど。その後に始まるメタ的内容のやり取りをスムーズに受け入れるための下準備みたいなものがちゃんと施されている。

もっと言えば、トリニティの新たな名前などの細かな設定も、観客の視点を誘導する仕掛けになっている。
(最近観た『ラストナイト・イン・ソーホー』(感想文リンク)でもそうだったけど、有名な作品が故に批判のメタファーにされがちですよね)
もともと「何が起こっているんだ?」感が魅力の一つだった本シリーズの性質も相俟って、含蓄ある風なセリフはとても相性が好く、その上メタを意識させられる本作は、セリフ一つ一つに求められる深読み量が凄まじい。

逐一例を挙げると切りが無いんだけど、やっぱり一番はネオ、トリニティ、アナリスト三人の会話が見所のクライマックス。監督のセクシャリティー事情だからこそ意味深くなる「空に虹を~」という言葉なども良かったけど、中でもトリニティが口にした言葉がとても良い。二度目のチャンスが与えられたことへの感謝は、まるで作り手の代弁をしていたかのよう

そして、今までずっと否定してきたはずのマトリックスの世界も含め、今、人がそれぞれ信じているものを漏れなく肯定するかのような締め括りも素敵。それこそ多様性にも繋がる着地と言えるかもしれません。

アナリストが世迷言を吐く度にトリニティがボコっていたのも面白くて良い。

(ちょっと脱線話。本作を観るにあたってトリロジーを観直した時に感じたのですが、映画『フリーガイ』感想文で述べた、デカルトの哲学にも似た考えが頭を過ぎった時、実は既視感、それこそデジャヴのように感じたのは、トリロジーで一度触れていたからだったのかもしれません。)



 賛否両論の意見すら含め、真っ向から過去作と向き合い、そして ”マトリックス” だからこそ許された、他に類を見ないメタ的な演出で仕上げられている本作。こんな映画はマジで他に思い当たらない。本作こそウォシャウスキー氏の想いが詰まった『マトリックス』だったのかもしれません。なので、人によってはハマらないかもしれないけれど、もしもトリロジーが好きなのであれば、良くも悪くも観ておいた方が良いんじゃないかと。


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