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「っ疲れたー!!」 「はいはい、コーヒー飲む?」 「ありがとう!」 ユキトの部屋にミユキが来ていました。オーディションを1つ終えてきたのです。 「あんたも大変ね、明日も受けるんだっけ?」 「そー!!舞台の脇役!」 「あらいいキャストじゃない。」 「まさに難関って感じでいいよね!」 2人でコーヒーを啜っていると、ミユキのスマホが震えました。 「あ、ごめん、電話。」 「ん。」 ミユキは部屋の外に出て、玄関の近くで通話ボタンを押しました。ユキトから
カタカタ。カタカタ。 人の声よりもキーボードの音がよく聞こえるこのオフィスでは、切磋琢磨する仲間たちが働いています。 チームにの成績は毎度毎度発表され、皆楽しみにも恐れもしていました。でもそんな環境だからこそ、営業成績が伸びるのでしょう。 「そろそろですよ。」 「うん、行こうか。」 カズユキはチームリーダーである先輩に声をかけました。これから取引先とのミーティングです。このご時世ではありますが、直接会いたいと先方が仰ったのでタクシーに乗って向かいます。
「あの子ったら…。ちゃんと他のも受ければいいのに。」 ユキトは部屋を出てミユキへの愚痴を呟きました。ユキトからしたらミユキがどうして受けるオーディションを制限してるのか分からなかったのです。 「はあ…、今日は修正が来ないようにしないと。」 作業場に向かいながら進まない気を無理やり身体とともに動かします。仕事は好きでしたが、今日は何だか何もしたくない気分です。 「大丈夫、大丈夫。」 電車を待ちながらスマホを操作して聞く音楽を変えます。 『こんな夜に思い出させない
ユキトの家でミユキはコーヒーを飲みながら、ぶつぶつと何かを呟いていました。オーディションの役作りのようです。 「じゃあアタシ行くからね?戸締りお願いね?」 とカバンを抱えたユキトの声も聞こえていないようです。 「…違う、違うのです。わたくしはそのように考える女ではございませぬ。」 「…ああ、ユーリィ。あなたにだけは理解していただきたかった。」 「愛しのユーリィ…。あなたに愛されないのならわたくしは…。」 いつもとは明らかに違う口調、明らかに違う目つき
「ちゃ、ちゃんとしたプロポーズはまた…。」 「うん!」 彼女を引きはがして、青ざめた顔を見られないようにそらしました。彼女は機嫌よく鼻歌を歌っています。 「先にシャワー浴びちゃっていい?」 「うん、行ってらっしゃい!」 自分でも驚くほど汗をかいていました。どうしても洗い流したくなり、料理をしている彼女をほっといて浴室に向かいました。 シャワーを浴びながら、どうしてあんなことを聞いてしまったのかと後悔していました。彼女がああいうのは分かっていたのに。
仕事を終えたカズユキは、彼女の待つ家路に着きました。疲れた身体を引きずりながら、何をしているのだろうかと考えます。 ガチャと玄関を開けると髪を結って台所に立っている彼女がいました。 「おかえり!」 カズユキを見ると彼女の顔が明るくなりました。恋人のために料理をしていたのです、その恋人が帰ってきた喜びはささやかでも満ち溢れたものだったのでしょう。 「ただいま。」 彼女とは裏腹に、疲れ切ったカズユキは浮かない表情でした。いや、仕事の疲れではなく、彼の中にある不
「はー…。」 ユキトが肩をゴキゴキ言わせながらストレッチをしました。さすがに修正量が多くて目と肩と腰に来たのです。 「ユキちゃんまだいるの?」 「うん、後3タスクはやってから帰る。」 「ええー?詰めすぎないようにね?」 「ありがとう。」 「じゃねー、明日は休みだから明後日かな?」 「うんー、またね。」 パタンと友人が出ていったドアを見つめながら、またため息をつきました。 「はー…。」 終わらない作業、独りぼっちの部屋、夜中というマイナス要素の3連コ
ミユキと別れた後、ユキトもカズユキと同じように仕事に戻りました。 「うわ、やっぱり修正来てる…。」 はーっと深いため息をつきながら、マウスを操作します。 ツールを立ち上げ、修正箇所のデザインを確認します。 「えー…。前と言ってること微妙に違うじゃん…。」 「え、ロゴもだっけ?あー、後藤さんいなくなったからか…。」 「はー、そろそろ他のデザイナー雇ってくれ…。」 パソコンと会話しながら、こつこつと修正をいれていきます。 独り言が寂しくなってきたところ
「実は社員登用の話が出てさ、ミユキちゃん今度こそ引き受けない?」 ミユキの嫌な予感は当たりました。もうこのバイトを長く続けているので、何度かそういう話をされたことがあるのです。 「店長、私いつも言ってますよね?」 「夢があるのは分かってるよ、でも別の道も考えていいんじゃない?」 「…。」 「夢が何か聞かないけど、もう若くないんだし。」 「…。」 「夢は夢で現実は現実だよ?」 店長の言葉は、まるで誰かが言ったことをそのまま口にのせてるようでした。ああ、これ
それからすぐにミユキも席を立ち、会計を済ませました。深いため息をつきながら、あまり進まない足を何とか動かします。 アルバイト先の居酒屋のことは嫌いじゃないのですが、早く辞められるぐらい俳優業で稼ぎたいと本当に、本当に願っているのです。 「はぁ…。」 いつの間にかベテランになってしまった自分の身を嘆きながら、誰よりも早く準備に取り掛かります。 「あ、先輩。お疲れ様ですー。」 今出勤してきた後輩は、大学の講義を終えてから来たのでしょうか。大きめのカバンを肩にかけ
「まあ、進展あったらまた話聞きたいわ。」 「おー。」 店員が料理を運んできたのをきっかけに、この話題は終了しました。 3人とも頼んだ料理をもぐもぐと頬張りました。カズユキはそろそろ仕事に戻らなくてはならないようで、少し急いで食べました。 「じゃあ、また。」 「おー。」 「お仕事お疲れー。」 嵐のように過ぎ去っていったカズユキの背中を見ながら、2人ともため息をつきました。 「なんであいつが来ると嵐過ぎ去ったみたいになるんだろ。」 「ねー。ドタバタよね
カズユキが適当に食べたいものを注文した後、3人は他愛ない会話に花を咲かせました。 天気のこと、最近ペットを飼いたいと思ってること、欲しい服のこと。そんな何でもない話をしていたら、カズユキがぼそりと言いました。 「そろそろ記念日だわ。」 ユキトの顔が少し曇ったのをミユキは見てしまいました。どう話をそらそうか考えていたら、それを察したのかユキトが切り出しました。 「何年目になんの?」 「大学からだから5年目だな。」 「長いなー。」 「5年目となるとプレゼント
「あと少し」で夢が叶う。 「あと少し」勇気を出せば。 「あと少し」で幸せが掴める。 でも、その「あと少し」が怖い。 夢が叶った後はどうなるの? 勇気を出した後ダメだったらどうなるの? 幸せが掴めた後はどうなるの? これは、そんな3人のお話です。 「…で、次も泊めてほしいと。」 「お願いユキ!晩御飯は作らせてもらうから!」 「あんたねぇ…。」 パンッと手を合わせて頭を下げるミユキを見ながらユキトはため息をつきました。 「いい加減、彼氏で
彼はなんとも悲しいことに誰からも愛されることなく育ちました。 親は彼を産んだ後、子育てをめんどくさがり施設に預けました。その施設は子どもたちの扱いが最悪で、何人かの子どもたちは命を落としてしまうようなところでした。 彼はそれでも何とか幸せになろうと施設を飛び出し、自分の身は自分で守っていきました。 そんな彼の一生懸命な姿にひかれて、好きだと言ってくれる人が現れました。 嬉しくて涙を流しながら自分も好きだと言おうとすると、相手が不思議そうな顔をしています。 「
彼女はよく眠る人でした。朝も昼も夜も、暇さえあれば横になり目蓋を閉じるのです。 誰かが遊びに誘っても眠ってしまったり、ご飯も忘れて夢を見るような女の子でした。 恋人も友人も呆れてしまい、彼女から離れていきました。そのせいで暇な時間が増えていき、また眠るようになりました。 彼女は僕に言いました。 「だって、夢なら傷つかないもの。」 そういってまた眠り出しました。 僕が目の前にいるにも関わらず、すぅすぅと寝息を立て始めたではありませんか。 「かわいそ
別に一人でいいと思ってるんだ。 いや、一人がいいと言うべきか。 誰かと暮らすのは性に合わないし、急に色んなことをやりたくなるから、予定なんて合わせたくないし。 こんなやつに付き合ってくれるような人には幸せになって欲しいし。 だから、恋人も家族もいらない。 はずだけど、やっぱり人間欲深いものでして。 こんなやつに付き合ってくれるような人で、誰にも渡したくないって人を探してしまっている。 運命の人、なんてがらじゃないから「例外」と呼んでいる。 早く僕