残り約1メートル③
「まあ、進展あったらまた話聞きたいわ。」
「おー。」
店員が料理を運んできたのをきっかけに、この話題は終了しました。
3人とも頼んだ料理をもぐもぐと頬張りました。カズユキはそろそろ仕事に戻らなくてはならないようで、少し急いで食べました。
「じゃあ、また。」
「おー。」
「お仕事お疲れー。」
嵐のように過ぎ去っていったカズユキの背中を見ながら、2人ともため息をつきました。
「なんであいつが来ると嵐過ぎ去ったみたいになるんだろ。」
「ねー。ドタバタよね。」
そう言いながらも2人とも笑っていました。
「それにしても。」
「ん?」
「よく耐えたね、ユキト。」
「…今はユキでいいわ。」
ミユキは一気に水を飲み干して、ふーっと長く息を吐きました。
「惚れた男が結婚考えてるって、結構来たでしょ。」
「まあね…。」
「いい顔してたよ。」
「アンタは本当に女優ね…。」
ユキトも思いっきり水を飲み干しました。冷たい水は身体の中にすうっと入っていき、頭を冷やしてくれました。
「まあ、惚れたアタシが悪いわ。」
「同情はするよ…。」
「そう思うならアタシたちを演技の材料にするのやめなさいよ。」
「それは無理。」
きっぱりと断るミユキに呆れながらも、彼女の女優魂に感心するのでした。大学のサークルで見て以来、ミユキのファンなので正直自分が材料になることが嬉しかったのです。
「じゃ、アタシもそろそろ行くわ。」
「ん、また3日にね。」
「泊まりに来るならちゃんと準備しときなさいよ。」
「はーい。」
1人残ったミユキはスケジュールアプリを起動して、日付を確認しました。
「今日はオーディション無し…。」
つづく
以上、らずちょこでした。
※この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださった皆様に感謝を。
ではまた次回。
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