残り約1メートル13
「っ疲れたー!!」
「はいはい、コーヒー飲む?」
「ありがとう!」
ユキトの部屋にミユキが来ていました。オーディションを1つ終えてきたのです。
「あんたも大変ね、明日も受けるんだっけ?」
「そー!!舞台の脇役!」
「あらいいキャストじゃない。」
「まさに難関って感じでいいよね!」
2人でコーヒーを啜っていると、ミユキのスマホが震えました。
「あ、ごめん、電話。」
「ん。」
ミユキは部屋の外に出て、玄関の近くで通話ボタンを押しました。ユキトからは途切れ途切れにしか声が聞こえません。
「…しく…します。」
「お…ますね。」
「はい…。はい…。」
まぁ何でもいいやと思い、スマホをいじっているとボーッとしたミユキが戻ってきました。
「ミユキ?どうしたの?」
「あぁ…。うん…。」
ミユキの顔は不安でいっぱいと書かれているようでした。
「受かった。」
「え?」
「この前言ってたオーディション、受かった。」
「…ええええ?!」
「私、新浪恭介と共演する。」
「すごいじゃない!!!おめでとう!!」
「う、うん。」
ミユキの素っ気なさにおかしいなとは思いましたが、あまりにも衝撃的過ぎてまだ現実を受け入れられてないだけだと勝手に解釈しました。
「早速お祝いしましょ!ケーキがいい?」
「あ、いや、ごめん。身体絞らないと。」
「あーそれもそうよね!いやー俳優って感じだわ!」
ミユキとユキトの間にこんなにも温度差が生まれるものでしょうか。
「…どうしよう。受かっちゃった。」
「本当に受かるなんて…。」
「私、本当に有名俳優になれるの?」
「いや、チョイ役だし。早いか…。」
あまりにも衝撃的過ぎるのは正しかったようです。
「夢が現実になるって、こんなに怖いことだったんだ…。」
ユキトが目の前にいるのにも関わらず、そう1人でぶつぶつ呟いていました。
「ほら、とりあえず明日のオーディションに備えて食べなさい?」
「あ、うん、ありがとう!」
ようやく落ち着いたようですが、不安の種はまだまだ残ったままでした。
つづく
以上、らずちょこでした。
※この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださった皆様に感謝を。
ではまた次回。
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