残り約1メートル⑦
「はー…。」
ユキトが肩をゴキゴキ言わせながらストレッチをしました。さすがに修正量が多くて目と肩と腰に来たのです。
「ユキちゃんまだいるの?」
「うん、後3タスクはやってから帰る。」
「ええー?詰めすぎないようにね?」
「ありがとう。」
「じゃねー、明日は休みだから明後日かな?」
「うんー、またね。」
パタンと友人が出ていったドアを見つめながら、またため息をつきました。
「はー…。」
終わらない作業、独りぼっちの部屋、夜中というマイナス要素の3連コンボは、ユキトに嫌な思考をさせました。
「何やってんだろ、アタシ。」
「この修正は防げたはずじゃない。」
「はー、もうやだやだ。」
「…結婚、か。」
「あ、バカ、今考えるな。」
カズユキの結婚話を思い出してまた気分が落ち込みます。仕事中なのに集中できない、集中できないからその事を考えちゃう、という悪循環に陥りました。
気晴らしに動画サイトを開いて、作業用BGMを検索します。夜中におすすめの曲を集めたものがあったので再生します。
『こんな夜に思い出させないで』
『記憶だけじゃ足りないの』
『抱きしめて』
何の皮肉か1番最初の曲が悲恋ソングでした。ユキトはうなだれましたが、メロディが好みだったのと、何だか今は暗い曲が聞きたかったのでそのまま流しておきました。
『ねぇせめて気づいて』
『名前を聞いただけで』
『あなたのことしか考えられなくなるの』
『どうか終わらせて』
『好きと言えないなら』
『大嫌いと私を拒んでほしいの』
やっぱり聞くんじゃなかったかと後悔しながらも、スマホの音楽アプリで今の曲をダウンロードしました。
つづく
以上、らずちょこでした。
※この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださった皆様に感謝を。
ではまた次回。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?