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残り約1メートル②

 カズユキが適当に食べたいものを注文した後、3人は他愛ない会話に花を咲かせました。

 天気のこと、最近ペットを飼いたいと思ってること、欲しい服のこと。そんな何でもない話をしていたら、カズユキがぼそりと言いました。

 「そろそろ記念日だわ。」
 ユキトの顔が少し曇ったのをミユキは見てしまいました。どう話をそらそうか考えていたら、それを察したのかユキトが切り出しました。

 「何年目になんの?」
 「大学からだから5年目だな。」
 「長いなー。」
 「5年目となるとプレゼントも豪華にしないとね!」

 ミユキはなんとか、その単語を出さないように話題に気をつけていました。プレゼントの相談に持ち込もうとそう切り出したのですが、カズユキがうなだれながら言いました。

 「もう指輪渡すべきなのかねぇー。」
 「急にどうした?」

 ミユキもユキトも少し慌てました。カズユキがそんなことを言いだしたのは初めてのことだったのです。

 「いやね、彼女もそろそろ望んでるのかなって。」
 愚痴を吐いているような言い方でしたが、表情は穏やかでした。愛する人を思い浮かべると、こうも優しい顔になるのでしょうか。

 「…まあそこはちゃんと話した方がいいだろ。」
 「だよなー…。」
 ユキトの顔が曇っているのに気づかないまま、1人で納得していました。

 ミユキはハラハラしながらも
 「恋する人間の顔はこういうものなのか。」
 と演技の勉強として観察していました。

 この緊迫した空気でさえ、彼女の糧でした。


 つづく
 以上、らずちょこでした。
 ※この物語はフィクションです。
 ここまで読んでくださった皆様に感謝を。
 ではまた次回。

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