残り約1メートル⑥
ミユキと別れた後、ユキトもカズユキと同じように仕事に戻りました。
「うわ、やっぱり修正来てる…。」
はーっと深いため息をつきながら、マウスを操作します。
ツールを立ち上げ、修正箇所のデザインを確認します。
「えー…。前と言ってること微妙に違うじゃん…。」
「え、ロゴもだっけ?あー、後藤さんいなくなったからか…。」
「はー、そろそろ他のデザイナー雇ってくれ…。」
パソコンと会話しながら、こつこつと修正をいれていきます。
独り言が寂しくなってきたところに、ガチャッと扉を開けて友人が入ってきました。
「あれ、ユキちゃん。お友達とのランチじゃなかったの?」
「なんやかんやですぐに終わったの。」
「ふーん、あ、シュークリームいる?」
「いる!」
ここは2人で借りている作業場で、冷蔵庫もレンジもあります。仕事が忙しいときはここに泊まることもありました。
「もう期間限定の商品なくなってたの。早いよねぇ。」
「もう?あっという間だねぇ。」
「コーヒーは?」
「あ、淹れてあるから飲んでいいよ。」
「え、ありがとう。助かる女神。」
「崇めたまえー。」
ユキトがこの友人と職場をシェアすることを決めたのは、この人の纏う空気が心地よかったからです。
「こいつを嫌いな人はいないだろう。」
と思えるほのぼのさが、大好きでした。
「また修正でも来たの?」
「あ、聞こえてた?」
「いや、眉間のシワすごかったから。」
「やだ、変なとこ見ないでよ。」
「お互い苦労するねぇ。」
「あら、そっちも?」
「うーん、結論だけいうとタスクが増えそうでねぇ。」
「やだやだ、給料も時間も減るのに仕事ばっか増えてっちゃって。」
「ほんとにねー。お互いしばらく休めてないんじゃない?」
「ねー。温泉にでもいきたいけど。」
こうやって話している最中にも2人とも作業は進んでいます。
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