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#74 働き方に正解はないけれど

僕の本業は、図書館司書である。
今年度から図書館責任者になり、その名の通り責任が大きくなり大変になったものの、総じて楽しく働くことができている。

けれど、今の職業に葛藤がないわけではない。
非正規雇用だし、収入はとても少ないのが現状だからだ。

もちろん今後、転職をする可能性がないとはいえない。
けれど、このまま図書館で、今の会社で上を目指して、図書館の世界を支えることに腹を括りつつある。

僕がこの道を行こうと決めたのには二つ理由がある。
幾度も記事で書いた適応障害の経験が一つ。
もう一つは、友達だった。

働き方の正解ってなんだろう

もう何度もこの記事を引用してしまっているが、それほど僕にとって新卒の会社で適応障害になった経験は、強く強く残っている。

さらにその後も2022年に転職をしたのだが、そこでもメンタルダウンになってしまい、退職をしてしまった。
短期離職が履歴書の傷なのであれば、もう僕は傷だらけの人間である。

ゆえに転職してもうまくいかないだろうという諦めもある。
自分が社会不適合者であると信じてやまないところもある。
もちろん思い込みを持っているという自覚はある。
けれど、これらの経験が今の道を行こうとした理由の一つである。

そして、もう一つの理由が二人の友達だった。

ケース1:M君の場合

M君は高校時代、クラスのムードメーカー的な存在。
僕のようなスクールカースト底辺の存在にも優しく、明るく振る舞ってくれる懐の深い存在だった。

彼とは学部は違うが大学も一緒で、度々顔を合わせる仲だった。
大学卒業をしてから数年、LINEを通して久々に呑みに行く約束をした。

大学卒業後の彼のことで知っていることは一つ。
かねてから大好きだった自動車メーカーに就職できたということだ。

その面でも僕は彼を尊敬している。
自分の希望通りに就職できるというのは、並大抵の努力ではできない。
きっと彼にはそれだけ光るものがあったのだろう。

実際彼のSNSを見ても、充実している感じはあった。
けれど、実態は真逆だった。

呑みの席。
最初は高校時代と同様明るい彼だったけれど、お酒が入るごとに徐々にその様子が変わっていった。

そして、酔っぱらった彼は衝撃の経験を口にした。

数か月前まで、うつ病を患っていたこと。
それだけではなく、会社で自殺未遂まで起こしてしまったのだという。

「学生時代から希望していた会社に就職」

この言葉だけ見れば、人生の成功者のように感じる。
けれど、大切なのは就職した後なのだ

もちろん僕なんかよりたくさんお金をいただいている。
けれど、彼が目を潤ませながら病んだ経験を語っていたとき、僕は思った。

働くって、なんなんだろうと。

ケース2:N君の場合

N君は僕と同じスクールカースト底辺だったが、卒業が近くになるにつれスクールカーストがなくなり、徐々にクラスの人気者になっていったという謎の出世を果たした友達だった。

落ち込んだところなど見たことがない。
常にずーっと大声で、ずーっとギャグを言って、ずーっと笑っている。

そんな彼と、M君と会った1か月後に呑む機会を得た。
M君と同様、最初は高校時代と全く変わらない。
ずーっと大声だし、ずーっと笑っている。

けれど、仕事の話になると、大声や笑いの意味が変わっていった。
彼はいつものテンションで会社での様子を話してくれたのだが——
それはただのパワハラ経験でしかなかった。
上司からワイシャツをびりびりに引き裂かれたり、お酒を強要されたりしているのだという。
そして、彼は冗談交じりに笑いながらこう言った。

「死にたい」と。

偶然だとは思う。
けれど、久々に会った高校時代の旧友二人がどっちとも心を蝕まれているというのは、いったいなんなんだろう。

もちろん、N君だって僕なんかより遥かにお金を稼ぐことはできている。
けれど、やっぱりこのときも思った。
働くって、なんなんだろうと。
友達を壊してしまう社会って、なんなんだろうと。

お金よりやりがいで働くことに決めた

もちろん世の中にはやりがいを見出しつつ、お金を稼げている人もたくさんいるだろう。
安定したメンタルの中で、仕事をしている人が大半だとは思う。

けれど、上記の友達もそうだし、僕の父だってうつ病だった。
僕の周りには仕事に心を壊されてしまった人が少なからずいたのである。
類は友を呼ぶなのだろうか、僕もその一人なわけだった。

この二つの理由から僕は強く思ったのだ。
図書館司書という今の仕事は、確かにお金は稼げない。
けれど、とても健康的で、しかもやりがいを持っている時点で、僕はとても幸せに働けているのではないだろうかと。

それからもう一つ。
今まで僕はいくつかの図書館を経験してきた。
過去在籍していた図書館の人たちから、よくこう言われるのだ。

また戻ってきて。
また一緒に働ければいいね。

もちろんお世辞だし、冗談だとは思う。
それでもそのような温かい言葉をかけられるのは、少なからず僕はその図書館で貢献することができたからなのかもしれない……。
そう思うのである。

働き方に正解はないとは思う。
ただ、僕にとっての図書館司書という仕事は、

日々楽しく、
日々やりがいを持って、
日々その世界に貢献できる仕事
だと思っている。

これは、僕にとっての、働き方の正解だ。

そして、今の働き方ができるから、僕はnoteを始められたのだ。
いつか第二の仕事として、書く仕事がしたいから。

紆余曲折はあったけれど、今の道を行くしかない。
図書館に貢献する自分。
文章を紡ぐ自分。

その自分を、毎日磨きながら生きている。

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