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雑文ラジオポトフ

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今田の雑文です。
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#犬

犬たちにやることがなくなっていく

犬たちにやることがなくなっていく

シリーズ・現代川柳と短文 089
(写真でラジオポトフ川柳177) 

 我が家の犬はしゃべることができたが、それが珍しいことだとは思っていなかった。おそらくわたし自身が犬に興味を持っていなかったのだろう。犬がしゃべる内容は、たとえばネットで読んだ記事の受け売りだったり、若いうちにあれをやっておけ、とかいう説教じみたものだったりした。あと、テレビのリモコンを取ってくれとか。

▼これまでの「現代川

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駐車場 犬になりたい人びとは

駐車場 犬になりたい人びとは

シリーズ・現代川柳と短文 090
(写真でラジオポトフ川柳178) 

 ヘリコプターから駐車場を見下ろしている。車を停める場所だ。でも犬がいた。そこにひとりの人物がやってきた。グレーのキャップをかぶって、きょろきょろとあたりを見回している。車を探しているのだろう。しかしそこには犬しかいないのだ。その駐車場はたぶん自分がこどものころの祖父母の家の駐車場で、人物はまだ生きていたころの祖父だ。しかしそ

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呪われしほうじ茶飲んでほっとする

呪われしほうじ茶飲んでほっとする

シリーズ・現代川柳と短文 017
(写真でラジオポトフ川柳105)

 緑茶も紅茶も烏龍茶も原料はどれも同じ茶葉。それを知ったときはまず「嘘だ」と思った。かき氷の話のシロップはどの種類も同じ味。それを知ったときもまず「嘘だ」と思った。犬はどの種類も生物学的には同じ一種類だし、そばとうどんと刀削麺は原料も製法もまったく同じで見る人の健康状態によってちがう種類に見えている。それらの話を知ったり作ったり

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ケルベロス相談できる人がいて

ケルベロス相談できる人がいて

 現代川柳と400字雑文 その77

 3つの頭を持つ「地獄の番犬」ケルベロス。キャッチフレーズはおどろおどろしいが、3つの頭が交代に眠って残りの2つが見張りをするらしく、想像するとかわいらしいとすら思えてくる。よし、ここはいっそ「寝るの大好き!」ケルベロスにしてはどうか。あるいは「3頭なかよし!」ケルベロス、とか。もはや相手を威嚇したり、恐怖心を利用してコントロールするような時代でもない。それに

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犬に月見せて月には犬見せて

犬に月見せて月には犬見せて

 現代川柳と400字雑文 その30

 先日(2022年11月8日)の月食は楽しんでいただけたでしょうか。欠ける月そのものより、誰もが外へ出て月に向けスマホをかざしていたあの光景が印象に残った方も多かったようだ。わたしも驚いた。しかし、わたしは見た。スマホをかざす人々の中に、犬をかざしている人も何人かいた。どういう状況だ? わたしは犬を飼ったことがないのでイメージできないが、月食を写真におさめたい

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かたちだけでも飼っているから犬だ

かたちだけでも飼っているから犬だ

 現代川柳と400字雑文 その41

 むかしよく歩いて通った道に豪邸があった。高い塀に囲まれた大豪邸。塀にはところどころにデザインされた四角い穴が空いていて、いつも前を通るとその穴のひとつから白い大型犬が顔を出すシステムになっていた。システム。そう呼びたいほどの規則正しさで、来る日も来る日も同じ穴から犬は顔を出した。音なのか匂いなのか、塀を隔てた向こう側に人間の気配を察知して顔を出すのだろう。四

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つめた距離とかさつめたい距離とかさ

つめた距離とかさつめたい距離とかさ

 現代川柳と400字雑文 その32

 犬の散歩中、飼い主と犬のあいだにはリードという視覚化された「距離」がある。その距離内にあるうちは飼い主が犬を制圧してくれるはずだ、と、犬が怖いわたしは思っている。だから道で犬とすれ違うのも問題なく行える。たまに「だいじょうぶ、ぜったい噛まないよ」という飼い主がいるが、それは犬本人(犬)が口にして初めて安心材料となるセリフであって、あなたがだいじょうぶだと思っ

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