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つめた距離とかさつめたい距離とかさ

 現代川柳と400字雑文 その32

 犬の散歩中、飼い主と犬のあいだにはリードという視覚化された「距離」がある。その距離内にあるうちは飼い主が犬を制圧してくれるはずだ、と、犬が怖いわたしは思っている。だから道で犬とすれ違うのも問題なく行える。たまに「だいじょうぶ、ぜったい噛まないよ」という飼い主がいるが、それは犬本人(犬)が口にして初めて安心材料となるセリフであって、あなたがだいじょうぶだと思っているからなんなんだ、と思わざるえない。だいたい、ぜったい噛まない犬ってなんなんだ、むしろ噛んでこその犬ではないのか。つまり、犬には噛ませてやってほしい。でもわたしのことはぜったい噛まないでほしいのだ。このあたり、もしかすると飼い主側にはなにを言っているのか伝わりづらい感情かもしれない。きょうもわたしは、複雑な恐怖心を抱きながら、静かに犬とすれ違うだろう。ところで、めちゃめちゃ長いリード、あれって「距離」ですか?


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