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これからの、小売の話をしよう。

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ショップは、ただモノを"売る"だけの場所ではなくて。そしてお客様は"買ってくれる"だけの相手でもなくて。明日がくるのが楽しみになるような、そんなショップがそこら中にある世界につい… もっと読む
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#コラム

すべてはコミュニケーション

すべてはコミュニケーション

「接客とかSNSだけじゃなくて、ECのデザインも、なんならプロダクト自体もお客さんとのコミュニケーションじゃん?」

イベントの前に接客について話していたとき、ALLYOURSの木村さんがふと漏らしたこの言葉がとても印象的だった。小売は、プロセスのすべてが顧客とのコミュニケーション。当日のトークイベントでも、その考え方が随所に表れていた。

ALLYOURSはクラウドファンディングやSNSなど「伝

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老舗しか持ち得ない価値

老舗しか持ち得ない価値

古いもの、歴史を重ねてきたものが好きだ。最新のトレンドアイテムにも惹かれるけれど、古さは一周まわると新しさになる。時代が変わっても次の世代に新鮮さを与えつづけるもの、普遍的な価値のあるものが好きだ。

先日、大日本市さんにお声がけいただいて参加した「登竜門」という企画の総括でこんな話をした。

「老舗感」って、新しいブランドには絶対に作り出せないんですよね。100年なら100年、歩んできた歴史の重

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「もっと、もっと」ではなく「ちょうどよさ」の時代へ

「もっと、もっと」ではなく「ちょうどよさ」の時代へ

「僕は『エレガンス』という言葉を "人に迷惑がかからない範囲の『ちょうどよさ』"と解釈している」。

この定義を聞いたとき、これまでエルメスに感じてきた心地よさの一端が理解できたような気がした。エルメスのアイテムは、主張しすぎることなく持ち主に寄り添う。声高にブランドを叫ぶことなく、モノの上質さによって見る側の心を爽やかにさせる。

中原淳一は、装いの意味は他人への配慮が大前提だと言った。

「身

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文化の継承手段としての小売を考える

文化の継承手段としての小売を考える

「リテール・フューチャリストです」と名乗ると、十中八九「具体的にどんなお仕事をされているんですか?」と聞き返される。私も自分で名乗り始めるまでは「フューチャリスト」という肩書き自体を知らなかったし、コンサルタントやライターと比べるとまだわかりやすい共通のイメージが確立していない職業だと思う。私自身も、名乗り始めたはいいものの仕事内容の説明にはいつも四苦八苦してきた。

私が専門として掲げている「消

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「ていねいな暮らし」は、庶民による庶民のためのラグジュアリー

「ていねいな暮らし」は、庶民による庶民のためのラグジュアリー

「日本的なラグジュアリーとは何だろうか」。

この5年ほど考え続けてきたテーマである。

もちろん値段の高さだけで見れば、日本ならではの高級品はいくらでもある。茶道具も着物も日本家屋も、日本文化の延長線上にある「ラグジュアリー」だ。歴史を遡ってみれば日本の陶器は江戸時代から高級品としてヨーロッパへ輸出されていたし、現代においても日本の作家さんのうつわを買いにはるばる日本までやってくる海外の顧客も多

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「知性ある消費」を目指して。noteと新しい取り組みをはじめます。

「知性ある消費」を目指して。noteと新しい取り組みをはじめます。

本日より、noteの新カテゴリページ「ショッピング」がオープンしました。

この状況下で厳しい状況にあるお店やブランドを支援したいと前倒しのローンチも考えていましたが、「せっかくならきちんと準備していいものを届けよう」ということで、議論を重ねながらやっとお披露目の運びとなりました。

ショッピングカテゴリが生まれた背景については公式noteにも綴られていますが、個人的に思い入れの強いプロジェクトで

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「小売業の繁栄は平和の象徴」

「小売業の繁栄は平和の象徴」

先月の「読んだ本一覧」にも書いたのだけど、最近意識して小売関連の名著を読むようになった。
その中でも感銘を受けたのが、イオン元会長・岡田卓也氏の著書だった。

イオンがもともと「岡田屋」という地方の呉服店からはじまったことを知る人は少ない。
岡田氏は七代目として家業を継ぎ、買収や提携を繰り返して日本トップレベルの小売グループを築いた。

もともと老舗のDNAを持っていることもあって、その家訓からは

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ローソンのPBデザインリニューアルは「これでいい」から「これがいい」への第一歩

ローソンのPBデザインリニューアルは「これでいい」から「これがいい」への第一歩

先月から徐々にローソンのPBパッケージが新デザインに切り替えられ、その変化の大きさにSNSでも賛否両論が飛び交っている。

▼リニューアル後のパッケージ例。ベージュで統一され、ひと目見ただけでは中身がわかりづらい。

若い女性を中心としたデザインに敏感な層からは「かわいい」「そのままでも暮らしに馴染む」と高評価を受ける一方、「視認性が低い」「シズル感が足りない」といった否定的な意見も多い。

ちな

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オンラインでも、店舗は「メディア」になっていく

私が「店舗はメディアになる」と考え始めたのは百貨店勤務時代のこと。
気づけばもう10年近く、店舗とメディアの関係について考え続けてきたことになる。

この2、3年は、「店舗」といえば実店舗を指すことが多かった。
アメリカやヨーロッパを中心に体験型店舗が増え、デジタルネイティブブランドたちもこぞって実店舗を持ち、実店舗のメディア化こそがこれから小売がやるべきことだと考えられてきた。

しかし世界中の

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それでも、ファッションの楽しみを絶やさないために

それでも、ファッションの楽しみを絶やさないために

昨日のnoteでファッション誌に求められる今後のコンテンツとして、おうち時間の楽しみ方がキーになるのではないか、という話を書いた。

3年以上前から書いている通り、私はファッションと外出には深い結びつきがあると考えている。
逆に言えば、出かけることが禁止されれば洋服が売れなくなるのは当然のこと。
すでに海外の小売系メディアはこうしたアパレル需要のダウントレンドにまつわる記事ばかりが並んでいるけれど

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いま、商業施設ができること。

外出自粛が広がる今、商業施設も客数が大幅に減り、苦境に立たされている。
時間短縮を行う施設や週末の休業を発表した企業も増え、小売業界全体の大打撃は避けられない状況だ。

そんな中でルミネはいち早く最低保証家賃の減額を発表し、テナントへの配慮を見せている。

いまだ国の補償の目処も立たない中で半額まで家賃を引き下げるのは体力に余裕のあるルミネだからこそできることではあるかもしれないが、長期戦の覚悟が

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ブランドに「急成長」は必要なのか

ブランドに「急成長」は必要なのか

アメリカのD2Cバブルが、いよいよ終わりに近づいている。
昨年から一部のメディアでD2Cの失速が囁かれてきたが、Casperの上場時の株価が想像以上に低かったことが最後の一撃となったようだ。

今後、アメリカで「D2C」というワードで資金調達するのは難しくなるだろう。

「海外記事の雑感」でも書いたけれど、これは単に今まで必要以上にかけられていた期待が正常な状態に戻っただけとも言える。

この先2

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外出自粛の時期に「店舗」ができること

外出自粛の時期に「店舗」ができること

※noteに関する言及箇所以外はすべてnoteプロデューサーとしてではなく、リテールフューチャリストとしての個人の見解です。

先週、政府から不要不急の外出を控えるよう声明が発表され、企業もリモートワークを推奨する動きが出てきました。

出張や旅行もキャンセルが相次ぎ、小売店、飲食店、ホテルなどリアルの場所を起点にサービスを行う企業は軒並み打撃を受け始めています。

特にこの2、3年はリアル店舗で

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「チーム感」というブランド価値

「チーム感」というブランド価値

SNSへの反応はその投稿単体への反応なわけではない。
顧客の体験価値への満足度やブランドへの信頼が表出した通信簿なのだ──。

ファンコミュニティやSNSの話をする際、最近は『SNS以外』での振る舞いの話も含めた全体設計の話をすることが増えました。

そんな私の考えをまとめたnoteを書いたのがちょうど一ヶ月前のこと。

このnoteの中で成功事例として出したのがアンダーアーマーさんの取り組みです

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