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すべてはコミュニケーション

「接客とかSNSだけじゃなくて、ECのデザインも、なんならプロダクト自体もお客さんとのコミュニケーションじゃん?」

イベントの前に接客について話していたとき、ALLYOURSの木村さんがふと漏らしたこの言葉がとても印象的だった。小売は、プロセスのすべてが顧客とのコミュニケーション。当日のトークイベントでも、その考え方が随所に表れていた。

ALLYOURSはクラウドファンディングやSNSなど「伝え方」で注目されることが多いブランドだが、実は地道に「コミュニケーション」を重ねてきたことがブランドの魅力につながっているように思う。

(この木村さんの写真、何回見ても最高だな…)

トークイベントの中でも話したのだけど、木村さんだけに限らずHEPサンダルの川東さんも、TOUNの坂本さんも、コミュニケーションとそこからうまれるつながりをとても大切にされている。SNSはSNSだけで独立しているわけではなく、実際の人間関係やコミュニティの発露である。だからこそ、SNSの使い方がうまいブランドの表面的な部分だけを真似しても意味がない。

スクリーンの向こうにいる「人」について、自分たちがどれだけ知っているか。コミュニケーションの第一歩は。知り合いを増やすことからはじまるのだと思う。

もうひとつ面白かったのは、「ECのデザインも、なんならプロダクト自体もお客さんとのコミュニケーション」という考え方だ。

どんな体験をしてもらいたいのか、使うことでどんな気持ちになってほしいのか、それが明確であればあるほどプロダクトから販売の仕方、顧客とのやりとりにいたるまですべての最適解が自然と表れてくる。言葉でのやりとりだけが顧客とのコミュニケーションなのではない。目に見えない部分すらも顧客体験を作っている。

先月からちまちま読み進めている「The Experience Economy」にも同様の話がでてくる。

(私が教科書として崇めている「経験経済」を書いた二人の新著。未翻訳なので原著をちまちま読んでいます)

「Work is theatre」と題した章では、なぜ顧客と直接接するわけではない部署も「まるで舞台のように」振る舞うべきなのかが語られている。

Indeed, "offstage" work affects the connections formed with customers because internal performance influences external relationships.
(さらに言えば、「舞台裏」の仕事もまた顧客とのつながりに影響を与える。組織内部のパフォーマンスが外部との関係に影響を与えるからだ。)

顧客との接点がステージの上でのパフォーマンスだとすれば、音楽や照明はもちろん、衣装をすぐに着替えられるように用意したり効率的な動線を組むこともパフォーマンスに影響を与える。私たちは全員「舞台」に関わるスタッフであり、ステージに立つパフォーマー以外も顧客体験を作り上げる一員だと意識すること。その意識こそが顧客体験をより魅力的な、忘れられないものへと変化させていく。

組織が大きくなればなるほど業務は細分化され、顧客との距離は遠くなっていく。しかしどんな仕事も顧客とのコミュニケーションのためにあることを忘れてはならない。

顧客を数字で見るのではなく、コミュニケーションの相手として認識し、ともに影響を与えながら変化していくこと。この循環を回していくことが、「ブランドづくり」なのではないだろうか。

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カバー写真は、中川政七商店さんの店舗で木村さんが「このコミュニケーションはさすが中川政七商店だよねえ」と唸っていた設え。階段の途中に石を置くだけで「立ち入り禁止」を表現されています。
「スタッフ立ち入り禁止」と書く方が簡単に見えるけれど、店舗内の世界観を壊さないために言葉を使わず、紐で結えた石だけでメッセージを表現するのはたしかに中川政七商店さんらしいなと私も言われてから気づきました。こういう素通りしてしまうようなところまでこだわりきれるかどうかが、顧客とのコミュニケーションにどれだけ真剣に向き合っているかを表すように思います。

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